米澤穂信さんの『ボトルネック』はパラレルワールドを舞台にした青春ミステリーのようでありながらも、深いテーマを感じとれる作品です。この記事では、あらすじや感想、ネタバレなどをまとめています。
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
嵯峨野リョウが二年前に事故で亡くなった恋人・諏訪ノゾミを偲んで東尋坊を訪れる。ノゾミはそこで崖から転落し、死亡してしまった。そこでリョウは、突然、自分が存在しないパラレルワールドに迷い込む。
パラレルワールドでは謎の姉が生きており、リョウの代わりにその姉が家族や周囲の人々を幸せにしていた。自分がボトルネックだと悟ったリョウは元の世界に戻るが…。
小説の特徴
ミステリー、SF、青春小説、ダークファンタジー、鬱小説、リドルストーリーなんかがこの小説に含まれています。
- 斬新な設定:パラレルワールドを舞台に、自己の存在意義を問う設定
- 多層的なテーマ:選択と後悔、存在意義、自意識とアイデンティティの喪失・自己否定、パラレルワールド、運命、家族関係、思春期の苦悩などなど、人間の根源的なテーマがいろいろ
- 読みやすい文章:重たいテーマでありながらも米澤穂信さん特有の読みやすい文章!
- 印象的なキャラクター:感情移入できるかどうかは別として…主人公のリョウをはじめ、姉のサキ、恋人のノゾミなど、キャラにも魅力がある!
感想
読み進めるほどに心が締め付けられるような感覚に襲われる作品でした。己肯定感が低かったり、過去の選択に後悔していたりすると、主人公の性格に共感できそうです。主人公が自分の存在意義を見失っていく過程は、読んでいて、ちょっと息苦しくなるほどです…。それと同時に、人間の心の脆さや強さ、そして人生の選択について深く考えさせられたりもしました。読者によって解釈が分かれそうな物語の結末は、自分自身の人生観や価値観が問われるのかなと思います。読み終えた後も長く心に残りそうな作品でした。
高評価のポイント
- 物語に引き込まれる:パラレルワールドという設定などに引き込まれる
- 読後に深く考えさせられる:自分の人生や選択について考えさせられる
- 最後の数行で、考えさせられる:結末の解釈についていろいろと考察できそう
低評価のポイント
- 鬱な感じなストーリー:救いのない展開が苦手な人にはオススメできないかも…
- 少し難しい:物語のテーマが抽象的で理解するのが難しい…結局何を伝えたかったのかがわかりにくいと思ってしまうこともあるかもしれず、エンターテイメント性を求める人には不向きそう
- 後味わるい:ハッピーエンドは期待できません
ネタバレ
殺人や盗難などの犯罪と謎解きがメインのミステリーという感じではありません。ただ、主人公の恋人であるノゾミの死の真相が関わってきます。
ノゾミの死は事故ではなく、諏訪フミカによる計画的な犯行でした。フミカはノゾミが崖から落ちるように仕向けていました。動機は嫉妬と羨望です。フミカは、ノゾミが周囲から愛され、才能にも恵まれていることに強い嫉妬心を抱いていました。また、フミカ自身は病弱で、周囲から同情される存在であり、そのことが彼女の嫉妬心をさらに増幅させていました。
なお、リョウが迷い込んだパラレルワールドでは、サキがフミカの策略に気づき、ノゾミを保護することで、ノゾミの死を防いでいます。
パラレルワールドでは恋人のフミカが生きており、リョウの姉のサキも存在します。そして、リョウの存在によって生じたと思しき様々な不幸が回避されています。リョウは自分がボトルネックだったのだと悟り、自分がいない方が世界は上手く回るという事実に絶望してしまいます。
リョウは元の世界に戻りますが、状況は何も変わっていません。そんな中、リョウの携帯に電話がかかってきます。それは、パラレルワールドにいたサキからの電話でした。サキは電話口でツユ(嵯峨野リョウの本来生まれてくるはずだった姉の名前。リョウのいた世界では、流産のためツユは生まれていない)と名乗り、リョウに「想像して。昨日できなかったことも、今日はわからない。それすら違うというなら、キミはもう、わたしたちの……」と告げます。しかし、サキの言葉が終わる前に電話は切れてしまいます。
結末
リョウの携帯に母親からメールが届きます。そのメールには「リョウへ。恥をかかせるだけなら、二度と帰ってこなくて構いません」と書かれていました…。リョウは、そのメールを見て、うっすらと笑みを浮かべます。リョウがその後どうなったのかは明確に描かれていません。読者に委ねられた感じです。
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