ニンテンドーDS用ソフト『アナザーコード 2つの記憶』は、主人公のアシュレイが自身のルーツと記憶 を探るミステリーアドベンチャーゲームです。DSの2画面やタッチスクリーン、マイク機能を活用した独特の謎解きが特徴で、当時は「さわれる推理小説」というキャッチコピーがつけられました。2024年には、Nintendo Switchでリメイク版『アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉』も発売されています。
あらすじ
13歳のアシュレイのもとに、幼い頃に死んだと聞かされていた父リチャードからの手紙が届く。手紙に導かれ、叔母のジェシカと共に「ブラッド・エドワード島」にある洋館へ向かうアシュレイ。しかし、島でジェシカとはぐれてしまう。ひとりで島をさまよっていると、57年前にこの島で亡くなったゴーストの少年・ディーと遭遇する。ディーは生前の記憶を失っていた。そんなディーは自分の姿が見えるアシュレイに記憶探しをお願いする。アシュレイはディーの記憶を取り戻す手伝いをしながら、同時に自身の両親にまつわる11年前の事件の真相、そしてエドワード家が抱える秘密を解き明かしていく。
登場人物
- アシュレイ・ミズキ・ロビンズ
主人公。もうすぐ14歳になる少女。日米ハーフで、母譲りの黒い瞳と白い髪が特徴。死んだと聞かされていた父からの手紙をきっかけに、ブラッド・エドワード島を訪れる - ディー(ダニエル・エドワード)
ブラッド・エドワード島を57年前からさまようゴーストの少年。自分がなぜ死んだのかわからず、生前の記憶を失っている。アシュレイにしか見えず、共に記憶を取り戻す旅に出る - ジェシカ・ロビンズ
アシュレイの叔母であり育ての親。リチャードの妹で、高校の化学教師。アシュレイの父が生きていたことを知っていながら、アシュレイには嘘を伝えていた - リチャード・ロビンズ
アシュレイの父親で科学者。記憶操作装置「アナザー」の開発に関わっていた - サヨコ・ロビンズ
アシュレイの母親で日本人科学者。リチャードと共に記憶の研究を行ってい た。11年前に亡くなったとされている - ビル・エドワード
ブラッド・エドワード島でリチャードの研究に協力していた男性 - ローレンス・エドワード
ブラッド・エドワード島にある屋敷の主。金鉱山で富を築く - ヘンリー・エドワード
ローレンスの孫で、画家。戦争で右手を失い、心に深い傷を負っている - トーマス・エドワード
ローレンスの孫で、ディーの父親。小説家として成功できず、戦争で人を信じる心を失ってしまう - 船長
アシュレイとジェシカをブラッド・エドワード島まで送った人物。頑固で、客の秘密は守る男
ネタバレ
ディーの本名はダニエル・エドワードで、ディーは57年前にブラッド・エドワード島で起こった悲劇の犠牲者です。
金鉱で巨額の富を築いたローレンス・エドワードは、息子レナードとは絶縁状態でした。しかし、レナードが病死したことで、その息子である孫のヘンリーとトーマス(ディーの父親)を引き取ることになります。ローレンスは孫たちに愛情を注ぎますが、やがて戦争が勃発。ヘンリーとトーマスは戦地に赴き、生きて帰還するも、ヘンリーは右腕を、トーマスは人を信じる心を失ってしまいます。
ローレンスが病床につくと、小説家として成功できずにいたトーマスは、息子のディーの心臓病の治療費を得るため、遺書を偽造して祖父の財産を相続しようとします。伯父のヘンリーはトーマスにローレンスの財産が戦争でほとんど残っていないことを伝えましたが…、トーマスはそれを信じず、ヘンリーが遺産を独り占めしようとしていると誤解して、ヘンリーに銃口を向けます。しかしトーマスは、ヘンリーに返り討ちにされ、逆に殺されてしまいます。この惨劇をトーマスの息子であるディーが目撃してしまいました。
父親を殺した伯父ヘンリーを恐れたディーは、必死に地下洞窟を逃げます。この時、ヘンリーは「ダニエル、走るな!」と叫びながら追いかけますが、その最中にディーの靴が脱げてしまいます。ディーは崖まで逃げますが、そこで心臓発作を起こし、転落してしまいます。転落するディーを助けようと、ヘンリーは手を伸ばしました。しかし、その手がディーに届くことはありませんでした。ディーの目に最後に焼き付いた光景、胸に残る模様の正体は、ディーを助けようと差し伸べられたヘンリーの掌でした。
弟を殺すことになってしまい、さらに甥の死も目の当たりにすることとなったヘンリーは自殺します。こうしてエドワード家は悲劇の末に無人島となります。
アシュレイの母サヨコは、記憶操作装置「アナザー」の開発者でした。ビルはリチャードの親友でしたが、アナザーの悪用を企み、アシュレイの母サヨコを銃殺していました。アシュレイはその現場を目撃しており、幼い頃の記憶に残る「銃を構える男」は、つまりビルでした。最終的に、アシュレイが出来事を思い出し、ディーの助けもあってビルは崖から転落します。リチャードはビルを助けようと手を伸ばしますが、間に合いませんでした。ビルはサヨコを愛しており、アシュレイの父親になりたかったのかもしれません。
真のエンディング
ディーの記憶が全て戻った状態でゲームをクリアすると、真のエンディングに到達します。
- ディーが記憶を取り戻した後、アシュレイに「記憶を取り戻してくれてありがとう」と笑顔で語りかけます
- ディーはアシュレイに「僕の手に触れて」と頼みます。タッチペンでディーの手に触れると、ディーの姿がゆっくりと消えていきます
- ディーが成仏した後、アシュレイは寂しそうに空を見上げ、「ディー、天国へいっちゃったんだね」と呟きます(この後は通常のエンディングへ)
小ネタ・トリビア
- 2周目以降の変化
- セーブデータに☆マークがつく
- 第5章のゾーイトロープの絵柄が、1周目の鳥から「忍者」に変化。ディーのコメントが若干追加される
- 青色のDASカード(DASカード901~908)の内容が変化。1周目ではリチャードの生活を記した「Richard’s Memo」だが、2周目以降はエドワード家に関連するレポート「Richard’s Report」となる(リチャードメモは1周目でしか読めない)
- 2周目以降、ディーの真相イベントを全てこなしクリアすると、エンディング後に1通の郵便が届く。これが「真のエンディング」と言われるもの。写真立ての仕掛けと同じように、画面の写り込みを利用するとメッセージを読むことができる(「TOYOUOF16YEARS(16歳のあなたに)」)
- DS本体のマイク機能
エンディング後、バースデーケーキの蝋燭の炎を消すのに、DS本体のマイ クに息を吹きかけるというギミックが使われている - 他作品との関連
- 続編は『アナザーコード: R 記憶の扉』
- 同スタッフが開発した『ウィッシュルーム 天使の記憶』や『ラストウィンドウ 真夜中の約束』と共通点が多く、特に『リコレクション』では『ウィッシュルーム』の主人公カイル・ハイドが作中の小説に登場する設定が追加されている
- 『大乱闘スマッシュブラザーズX』では収集要素のフィギュアとしてアシュレイが登場
感想
『アナザーコード 2つの記憶』はプレイヤー自身が謎を解き明かす「さわれる推理小説」というコンセプトで、ゲームの機能を最大限に活用した没入感の高いミステリーゲームです。ディーの過去が徐々に明らかになる過程は、まるで推理小説を読んでいるかのようですし、ヘンリーとトーマスの関係性や、ビルがアナザーに執着した理由など、作中に散りばめられたミスリードやキャラクターの内面描写もまた秀逸です。ディーが成仏する真のエンディングは、物悲しさの中に爽やかさも感じさせる、心に残るシーンとなりました。
ストーリー全体のボリュームは控えめながらも、練り込まれたテキストと演出、そして物語の雰囲気に合ったBGMなどが、ゲーム体験をより記憶に残るものにしています。Switchのリメイク版では、新たなグラフィックと追加要素で面白いミステリーゲームを現代に蘇らせたといえそうです。