綾辻さんの『人形館の殺人』は〈館〉シリーズの4作目で、シリーズの中では異色作として知られています。画家の飛龍想一が、亡き父の遺産である京都の人形館に引っ越して奇妙な出来事に巻き込まれ旧友の島田潔に助けを求めるというストーリーです。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています。
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
飛龍想一は、療養を終え、育ての母である叔母・沙和子と共に、父・飛龍高洋が遺した京都の屋敷『緑影荘』へと移り住む。その屋敷は、通称『人形館』と呼ばれ、顔のないマネキン人形が各所に佇む異様な空間だった。そこで新たな生活を始めようとする想一に、次第に不穏な出来事が降りかかる。
近隣で通り魔事件が頻発し、想一自身にも脅迫状を受け取ることに。不安に駆られた想一は、大学時代の友人であり、名探偵として知られる島田潔に助けを求める。ところが、島田は多忙のためすぐに駆けつけることができず、電話や手紙でのやり取りのみとなってしまう。
そんな中、想一の周囲では不可解な事件が続発。アトリエに置かれたマネキン人形が血のように赤い絵の具で塗りたくられたり、身に覚えのない過去の罪を告白する手紙が届いたり…。想一は、自分が何者かに狙われているのではないかと疑心暗鬼に陥り、精神的に追い詰められていく。
そしてついに、想一の育ての母である沙和子が、屋敷で発生した火災によって命を落としてしまう。警察は事故として処理するのだが、想一は殺人だと確信し、犯人を突き止めようとする――。
特徴
- 異色作としての魅力: 館シリーズでありながら、クローズドサークルではない異質な雰囲気が特徴
- 心理描写: 主人公の心の闇や葛藤が丁寧に描かれている!
- 叙述トリック:読者の先入観を逆手に取った巧妙なトリック!
読む順番及びシリーズについて
館シリーズの4作目です。1作目~3作目を先に順番通りに読んだ方が〈館〉シリーズをより一層楽しめると思います。
感想
私は今までの館シリーズとは違った雰囲気で面白かったと思います。著者の他の作品のダークな心理幻想ホラーが〈館〉シリーズに登場したようなイメージで、これまでの館シリーズとは違い、読後感は独特でした。トリック自体はそこまで斬新ではないかなと思ってしまいますが、心理的な恐怖や人間ドラマが深く、読み応えがあったと思います。心理的な要素が強いミステリーに興味がある方にオススメ!という感じでしょうか。
高評価のポイント
- 異色作としての挑戦:シリーズのマンネリを打破する新しい試みだったと思います!
- 心理描写:主人公の葛藤や心の闇が深く描かれ、感情移入しやすい
- シリーズ構成:これまでのシリーズを読んできたからこそ騙される!
低評価のポイント
- トリックのわかりやすさ:ミステリー好きからすると真相はわかりやすいかもしれません
- クローズドサークルではない:これまでの館シリーズとは異なり、閉鎖空間ではないので物足りなさを感じるかも…
- 好みが分かれる:叙述トリックがお腹いっぱいな人は評価が低くなりそう
ネタバレ
主人公の飛龍想一は解離性同一性障害(多重人格)を抱えていて、物語の語り手である想一自身が実は事件の犯人です。しかし、それは彼の意識的な行動ではなく、別人格によるものでした。
- 第三の人格・島田潔
物語に登場する名探偵・島田潔は、実は想一が作り出した架空の人物でした。追い詰められた想一が、救いを求める心の表れとして生み出した存在です - 過去の罪
想一は幼少期に列車事故を引き起こし、母親を死なせてしまったという罪悪感を抱えていました。また、 その事実を知った少年を衝動的に殺害してしまった過去も持っていました。これらの罪が、彼の別人格を生み出す要因となっています - 沙和子の死
育ての母である沙和子の死は、想一の中の別人格によって引き起こされました。それは、想一自身を破滅させるための計画の一部でした - 辻井雪人の死
連続通り魔事件の犯人・辻井雪人も最後は想一の中の別人格によって殺害されます
結末
事件後、想一は精神病院に入院し、治療を受けることになります。友人の架場は、想一の過去を知りながらも、彼を見守ることを 決意。しかしながら、事件の真相は完全に解明されたわけではなさそうです…。
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