ミステリーに登場したトリックの紹介です。江戸川乱歩氏がまとめたトリックの分類(類別トリック集成)をベースにトリックを抽象的な内容でまとめています。具体的な内容や著者や作品名は避けていますので、致命的なネタバレにはなっていないはずです。密室トリックについては、別のページにまとめています。
トリック一覧
『類別トリック集成』をもとにこの記事の筆者が分類に変更や説明等を加え、トリックの一覧としています。以下4つの分類は独自の内容です。表には「類別トリック集成」という項目を設け、江戸川乱歩氏による分類でどの項目が該当するかを併記しています。
- 基本トリック
- 偽装トリック
- 妨害トリック
- 叙述トリック
基本トリック
応用範囲が広く、頻繁に登場するトリックを基本トリックとしています。
トリック名 | 説明 | 類別トリック集成 |
---|---|---|
嘘 | 非常に簡単に使えるトリック 基本的で初歩的なトリックといえる |
項目なし |
変装 | なりすましなども含まれる 誰が誰に変装するかなどで細かく分類される |
一人二役 |
死んだふり ※ |
死んだようにみせて実は生きている ケガしたふりもここに含む |
犯人の自己抹殺 |
※ミステリー用語では「バールストン・ギャンビット」と呼ばれることもあります
偽装トリック
殺人を自殺や事故死にみせるトリック。具体的なトリックの代表例は密室トリックや足跡のトリックである。なお、密室トリックだけを用いて謎めいた雰囲気を作り出す場合もあり、必ずしも、偽装目的で使われるわけではない。
トリック名 | 説明 | 類別トリック集成 |
---|---|---|
自殺偽装 (トリック) |
密室や足跡のトリックがここに含まれる 自殺偽装で用いるのがセオリー |
密室トリック 足跡トリック |
アリバイ (トリック) |
被害者の腕時計を壊すなど具体的なトリックは多種多様 嘘や変装はよくアリバイトリックに使われる |
乗物利用 時計利用 音利用 天候、季節などの利用 |
『類別トリック集成』をもとに偽装トリックを分類すると上記のようになる。この他、病死偽装、事故死偽装などもある。
妨害トリック
捜査をかく乱するためなどの理由で用いられるトリック。死体や凶器などの証拠隠蔽はここに含まれる。
トリック名 | 説明 | 類別トリック集成 |
---|---|---|
隠蔽トリック | 凶器や死体などの証拠を隠すトリック 凶器や死体が発見されなけば犯罪は立証されないという考えに基づく |
兇器と毒薬トリック 死体の隠し方 生きた人間の隠れ方 物の隠し方 死体および物の替玉 |
叙述トリック
思い込みなどを利用するトリック。偏見が含まれる可能性がある。前記三つのトリック(基本、偽装、妨害)が探偵役と犯人の対決において使われるのに対し、叙述トリックは主に読者と作者の対決を意識した場合に用いられる。
トリック名 | 説明 | 類別トリック集成 |
---|---|---|
意外な犯人 | 探偵や刑事などが犯人 動物が犯人の場合もここに含まれる |
意外な犯人 |
類別トリック集成について
著名な推理作家の江戸川乱歩氏が『類別トリック集成』というタイトルでミステリーのトリックを分類しています。大きな項目は9つありますが、乱歩氏が述べている通り、集めたトリックをとりあえず分類したかたちになっています。
- 犯人(または被害者)の人間に関するトリック
- 犯人が現場に出入りした痕跡についてのトリック
- 犯行の時間に関するトリック
- 兇器と毒物に関するトリック
- 人および物の隠し方トリック
- その他各種トリック
- 暗号記法の種類
- 異様な動機
- トリッキイな犯罪発覚の手掛り
1から6まではトリックに関する分類であり、6は1から5以外のトリックがまとめられています。トリックとして分類し難い暗号や意外な動機、探偵役が推理に用いたロジックなどは、7、8、9にまとめられています。なお、『類別トリック集成』は江戸川乱歩全集『続・幻影城』に収録されています。江戸川乱歩氏の著作は権利が消滅していますが、類別トリックの詳細はネットで公開されていないようです。
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