「でぃすぺる」は今村昌弘(いまむら・まさひろ)氏の長編推理小説で、三人の小学生が七不思議の謎に挑むミステリーです。この記事ではあらすじと真相、感想などをまとめています。
項目 | 説明 |
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タイトル | でぃすぺる |
評価 | |
著者 | 今村昌弘 |
出版社 | 文藝春秋 |
シリーズ | – |
発行日 | 2023年9月 |
Audible版 | なし |
あらすじ
最後の夏休みが終わり、新学期が始まった。オカルト好きのユースケは人気者になるため、壁新聞でオカルト記事を書くことを決意し、掲示係に立候補する。ところが学級委員を務めていた優等生のサツキも掲示係になってしまう。サツキに反対されると思っていたユースケだったが、サツキが提案したのは<奥郷町の七不思議>の調査だった。
サツキの従姉・マリ姉は、一年前に何者かに殺されていた。未だにその事件の犯人は捕まっていない。サツキはマリ姉のパソコンに『奥郷町の七不思議』というファイルが保存されているのを見つけ、その謎が解ければ犯人にたどり着けると信じていた。サツキとユースケは、同じく掲示係のミナを加えて、七不思議の謎を追うことになる。
マリ姉がなぜ七不思議を残したのか?七不思議を知った者が本当に死ぬのか?その理由を追求する中で、彼らは様々な出来事に巻き込まれていく。調査の中で出会う人々もまた、謎めいた存在であった。マリ姉の知り合いを名乗る作間という男、そして、魔女の家に住む謎の老婆…。やがて、ユースケたちは謎の組織に辿り着く。徐々に解明されていく七不思議の謎だったが、なぜわかりにくい手掛かりを残したのか?マリ姉はなぜ逃げなかったのか?という疑問などが加わっていく。
登場人物
主な登場人物をまとめます。
名前 | 説明 |
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木島悠介 きじま・ゆうすけ |
ユースケ。主人公 オカルト好きの小学生 |
波多野沙月 はたの・さつき |
サツキ。主人公。真面目な性格 いことの死の真相を探ろうとする |
畑美奈 はた・みな |
ミナ。主人公。転校生 大人しい性格 |
ネタバレ
作間寛人(さくま・ひろと)が犯人で、その正体は化け物でした。作間は魔女と呼ばれていた豊木ツネの兄で、本名は豊木輝彦(とよき・てるひこ)です。神職を継いでいた輝彦は怪異の影響をうけて人間ではなくなり、怪異の操り人形となっていました。名前をもつと力が生まれるということが恐れられているため、怪異に名前はなく、邪神と呼ばれています。
オカルト好きのユースケが、しきりに怪異が犯人だと訴えていましたが、実はそれが正しかったということになります。
七不思議(正確には六不思議)は邪神の恐ろしさを伝えるためにマリ姉が残したいわば邪神の事件簿でした。フィクションと思われていた怪談話ですが、実際に起きたことです。そして、七不思議は邪神に抵抗する組織である<なずての会>への入会試験も兼ねていました。<なずての会>は怪異を集める悪い組織ではなく、怪異に抵抗し、怪異が起こした事件を隠蔽するため会でした。
物語の発端ともいえるマリ姉は死は他殺にみせかけた自殺でした。マリ姉のねらいは開催予定だった祭りを中止させ、邪神に力が集まるのを阻止することです。自殺ではなく他殺にみせたのは、怪談話の効果を高めるためでした。なお、マリ姉が自殺に使用した凶器は、協力者の坂東が回収しています。
結末
作間は最後、ユースケたちの罠にかかっておびき出され、聖なる砂みたいなものをかけられて追い詰められます。かろうじて逃げ出した作間でしたが、レンタカーで逃亡しようとしてトラックに追突され、真っ黒こげになります。
作間が消滅したことで、平和が訪れたように思えますが、昔話において邪神は真っ二つにされているため、御神体も真っ二つにされたのではないか?つまり、まだ御神体は残っているのではないかという話が登場します。
感想と考察
ミステリーを通じて成長する小学生の物語でした。現実を舞台にしたミステリー作品といえども、呪いや悪霊などが登場する場合があります。たいていは、そういったオカルトを利用した人間の仕業ですが…、本作は最終的に、意外な結末を迎えることになります。「そうきたか」とか、「そっちか」という感じの作品です。
人が犯人かと思いきや、お化けが犯人でした。オカルト的存在を主張するために、オカルト派のユースケは理屈をこねていたわけですが、「私、妖精をみたんです」とか、「宇宙人と交信するために、こうして集まっています」とか言っちゃう人達の仲間みたいなキャラにしかみえませんでした。が!彼は正しかったという。
オカルトの存在が推理されたというのはよくわかりません。単に、オカルトが実在する世界というのが真相だったのだと思います。そもそも推理ってなに?という感じではあります。
タイトルのでぃすぺるも、仕掛けの一つになっていたようです。ファイナルファンタジーというゲームにデスペルという魔法が登場します。表記が微妙に違いますが、どちらもdispelのカタカナ表記です。なんかどこかで聞いたことのある響きだなと思っていたら、FFだったわけです(ゲームをやらない方には、さっぱり意味のわからない感想になっていると思います)。
まとめ
「でぃすぺる」について、あらすじ、真相、感想などをご紹介しました。
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