金田一耕助シリーズ『香水心中』のあらすじ、真相、感想などをご紹介します。原作は横溝正史氏の推理小説で、古谷一行さん主演のドラマは1987年に放送されました。
あらすじ
トキワ香水の社長・常磐松代の代理で、上原省三という男が金田一の事務所を訪れ、調査を依頼する。依頼内容は詳しく語られず、とりあえず、金田一は等々力警部を連れて伊豆へ向かう。土曜日の朝、何事もなく伊豆に到着した金田一だったが、上原に調査の中止を言い渡されてしまう。事情が変わったらしく、本来の依頼人である松代が判断したらしかった。
日曜の朝を迎え、旅館に泊まっていた金田一と警部はサイレンの音を耳にする。気になった警部はとある別荘へと向かい、そこで二人の死体を発見する。別荘の内部には大量の香水がまかれ、えずくほどの異臭がしていた。
死んでいたのは、常磐松樹と青野百合子という人物だった。松樹は別荘内で首を吊っており、百合子は首を絞められてベッドに倒れていた。松樹は常磐松代の孫で、後継者の候補だった。どうやら松樹は従弟の常磐松彦の名を語って、常磐家の別荘近くに別荘を借りていたらしく、そこで、既婚者の百合子と不倫していた。状況からして、心中に思えたのだが、別荘からやや離れた道端で、乗り捨てられた松樹の自動車が発見される。松樹が百合子を殺した後、自動車で逃げたが、思い直して自殺したとも考えられるが、車のドアが施錠されているなど、細かな違和感もあった。
登場人物・キャスト
主な登場人物とキャストをまとめます。
名前 | キャスト | 説明 |
---|---|---|
金田一耕助 | 古谷一行 | 私立探偵 |
常磐松代 | 高峰三枝子 | トキワ香水の社長 |
常磐松樹 | 山下規介 | 松代の孫。死体となって発見される |
常磐松彦 | 田中隆三 | 松代の孫。やさぐれた雰囲気 |
常磐松子 | 日下由美 | 松代の孫。変わった子 |
上原省三 | 河原崎建三 | 松代の遠縁。松代の信頼が厚い |
小林美代子 | 高樹澪 | 松代の遠縁 |
中川ふみ | 大方斐紗子 | 常磐家の家政婦 |
市介 | ストロング小林 | 常磐家の別荘番 |
青野百合子 | 明日香七穂 | 別荘で死んでいた女性 |
青野太一 | 江藤博利 | 百合子の夫 |
岡田 | 吉澤健 | 警部補 |
事件概要
常磐松樹と青野百合子の死体が発見され、心中だけではなく、殺人の疑いも浮上します。松樹が百合子を殺して逃げたようにみえた状況でしたが、検死の結果、先に死んだのは松樹だったことがわかります。松樹の死亡空いて時刻は土曜午前5時頃で、百合子は土曜午後10時頃でした。
百合子の夫・青野太一は土曜の朝、常磐家の別荘方面へ向かっていました。過去に保険殺人未遂の嫌疑がかかったこともあり、太一は最も疑わしい人物でしたが、ちょっかい出していた別の女に突き飛ばされて死んでしまいます。太一自身は関与を否定していましたが、結局、事件に関わっていたのかはわからなくなってしまいます。
金田一は死体がみつかった別荘周囲のぬかるみに、杖の跡が残っていることに気付きます。さらに、松葉杖の松代が自転車に乗れることを知ります。実は松代は土曜の十時頃に別荘を訪れ、百合子をみつけていました。百合子の素行調査を金田一に依頼しようとしていた松代は調査対象が死んだだけではなく、松樹が関わっていると思ったため、依頼を断っていました。
小林美代子の妊娠が発覚する中、美代子の自殺未遂が起き、さらに市介の死体がみつかります。市介には松樹殺害の容疑がかかっており、自殺と判断されます。
謎
事件の謎を整理してまとめると次のようになります。
- 香水がまかれていた理由
- 土曜十時頃、松代が別荘を訪れたとき、松樹の死体がなかった理由
ネタバレ
犯人は上原省三です。上原が最初に殺害したのは松樹で、青野百合子も殺害しています。市介を殺したのも上原で、上原は疑いがかかった市介に罪をなすりつけようとしていました。
金曜の夜、常磐家の別荘を後にした松樹は、松彦の名前で借りた別荘で百合子と会っていました。このとき松樹は別れを切り出しましたが、百合子に金を要求されたため、首を絞めて殺そうとします。犯行後、松樹は車で逃亡。車がエンコするというトラブルに見舞われながらも、最終電車に乗って、上原のアパートへと向かいます。
松樹は上原に偽装工作を命令します。あまりに理不尽な言動に上原は激昂し、松樹を絞め殺します。これが、土曜の朝5時頃で、実際の犯行現場は上原のアパートでした。
松樹を死なせてしまった上原は、車のトランクに死体を隠したまま、金田一と警部を迎えに行きます。その後、死体を別荘へと運び、心中にみせようとします。このとき、気絶していた百合子が目を覚まします。松樹は百合子を絞め殺したと思っていましたが、未遂に終わっていました。
突然のことに驚いた上原は百合子も殺害してしまいます。別荘に大量の香水がまかれていたのは、松樹の体に染みついたガソリンの臭いを消すためです。車で運ばれたというのを隠す必要がありました。松代が別荘に偵察にやってきたとき、松樹の死体がなかったのは、まだ上原の車のトランクにあったからです。
トリック
事件の犯人や動機、トリックを簡単にまとめます。
- 犯人:上原省三
突発的な殺人が発端となり、さらに二人の人物を殺すことになる。最後は自殺する。 - 動機:保身
最初と二つ目の犯行は突発的なもので、頭が混乱していたといえるが、とっさに保身に走ったともいえる。三件目は明確な殺意をもって犯行に及んでいる。 - トリック:自殺偽装
死体を首吊りにすることで、自殺もしくは心中にみせようとした。
感想
立ち聞きがみつかったときの家政婦さんが可愛かったです。メタ読みというやつですが、仕草などが犯人っぽくないと思ったりしました。
原作は横溝正史氏の小説「香水心中」です。心中事件が発生することや現場に香水がまかれていたことなどは共通していますが、原作とドラマは異なる部分もあります。
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