『降霊術殺人事件』は探偵学園Qの単行本5巻に収録されているエピソードです。キュウはクラスメイトに頼まれて降霊会に参加することになります。
あらすじ
キュウは中学のクラスメイト一ノ瀬薫から、週末に行われる降霊会に参加してほしいと頼まれる。降霊会では、薫の母親・花代の霊を呼び出し、彼女が生前自宅に隠した遺書の在処を明らかにする事になっていたが、薫はインチキ降霊術師だと考えているようだった。
依頼を引き受けたキュウは週末にQクラスの5人と一ノ瀬家を訪れる。参加者は薫の兄2人、薫の親代わりの草加夫妻で、Qクラスの5人も参加する事になる。降霊術師・朝倉光星を囲むように全員が手を繋ぎあって輪を作り、明かりが消され降霊は始まった。しばらくして、朝倉がうめき声をあげる。明かりをつけると、朝倉は輪の真ん中で背中にナイフを突き立てられ死亡していた…。
登場人物
主な登場人物をご紹介します。キュウ、メグ、キンタ、カズマ、リュウ、団守彦、七海光太郎などは除いています。
- 一ノ瀬薫(いちのせ・かおる)
美伸中学校の生徒。キュウの同級生。14歳 - 一ノ瀬智彦(いちのせ・ともひこ)
薫の兄。長男。22歳 - 一ノ瀬彰彦(いちのせ・あきひこ)
薫の兄。次男。20歳 - 草加昌平(くさか・しょうへい)
薫の叔父。薫の父親代わり。40歳 - 草加幸代(くさか・さちよ)
薫の叔母。35歳 - 一ノ瀬花代(いちのせ・はなよ)
薫の母親。故人。半年前に飛行機事故で亡くなっている - 太田黒保(おおたぐろ・たもつ)
一ノ瀬家の執事。52歳 - 鍋島清香(なべしま・さやか)
花代の秘書。26歳 - 朝倉光星(あさくら・こうせい)
降霊術師。被害者 - 富士沢博(ふじさわ・ひろし)
朝倉の助手。28歳 - 織田島平次(おだじま・へいじ)
警視庁捜査一課の警部。45歳
ネタバレ
殺人犯は一ノ瀬智彦と彰彦で、母親の遺言書によって遺産を相続できなくなることを恐れていました。二人は朝倉が遺言書のありかを知っているようだったので、悪霊の仕業に見せかけて殺しています。
暗闇の中、マフラーで首をしめられた朝倉がうめき声をあげたので、その時に彼女が殺されたと考えられていましたが、この時点ではまだ生きており、気絶しているだけでした。
犯人の智彦と彰彦はロウソクの火が消えた直後に、朝倉がまいていたマフラーの両端にある飾り玉を口に咥えています。その後、上半身を残しながら後ずさりし、人の輪が十分に広がったタイミングを見計らって一気にマフラーを引っ張ります。そして、全員が手を離したタイミングで、咥えていたマフラーを辿り、暗闇の中で朝倉を刺殺します。
このトリックを実行するため、智彦と彰彦は常に12時と6時の位置に立っています。マフラーを咥えている間は話せないため、テープレコーダーには智彦達の声が全く入っていませんでした。
降霊術師の正体
朝倉の正体は飛行機事故で亡くなったと思われていた一ノ瀬花代でした。このことを秘書の鍋島は知っていました。つまり、智彦と彰彦はありもしない遺言のために、自分の母親を殺したということになります。
飛行機事故が起きるほんの少し前、花代は倒産の危機に陥った会社を立て直すため、大阪の取引先へ借金の依頼をしようとしていました。ところが、羽田空港から飛行機で飛び立つ直前に、取引先から断られてしまいます。このとき花代は羽田空港で不要になった大阪行きのチケットを女性に譲りました。
その直後、花代が登場するはずだった大阪行きの飛行機は墜落。一ノ瀬花代の名前で搭乗した女性は死に、公けには一ノ瀬花代が事故死したことになります。花代はこの事件を利用し、一ノ瀬花代は死んだ事にし、整形手術をして朝倉光星という降霊術師を名乗ることになります。
一ノ瀬花代の死によって保険金等が手に入り、会社は倒産の危機から救われます。その後も花代(朝倉光星)は鍋島を通して会社経営に関わっていました。
朝倉光星が花代に依頼されたと嘘をついてまで降霊会をひらいたのは、子供達に伝えたいことがあったからです。遺書は居間に飾られていた家族写真の写真立てに隠していましたが、遺産については一言も書いていませんでした。そこに書かれていたのは、仕事が忙しくて母親らしいことが何もできなかったことと、子供達の幸せを願う言葉が書かれているだけでした。
結末
智彦と彰彦は手錠をかけられた途端に、警官の拳銃を奪って、互いに撃ち合って自殺しようとする。すぐにキンタと執事の太田黒(に変装した七海)に取り押さえられ事なきを得たが、その時の智彦と彰彦の目つきも力も異常だった。
殺人計画はある組織から授けられたもので、警官から拳銃を奪い暴れたのは、計画を授けられた人物に強力な後催眠をかけられたからだった。
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