探偵学園Q『初めての宿題』はキュウ以外のQクラスメンバーにスポットが当てられたエピソードのひとつで、実質的な主役はメグとなっています。全2話の構成で、単行本としては第5巻に収録されています。
あらすじ
神隠し村での事件のあとのある土曜日の朝、DDSに登校したキュウは全校掲示板に張り出された「全校一斉クラス決定試験」の通知を目にする。1ヶ月後に行われるこの試験の成績次第で、Qクラスも入れ替えがあり得るというものだった。
神隠し村事件で活躍ができていなかったメグは、これまでに既に多数の実績を挙げてきてるAクラスメンバーたちや、それぞれの能力を活かして活躍した他のQクラスメンバーたちと比べてしまい、憂鬱な気分になっていた。そんな中、団先生からの宿題が出される。宿題は、団が駆け出しの探偵だった頃に助手と共に携わったある事件のトリックを解明せよというものだった。
期日には明日(みょうにち)だが、メグは全然見当がつかず、すっかり自信を失くしてしまう。
宿題の内容
団が助手と共に探偵事務所を立ち上げてから2年目のこと。まだ無名の私立探偵だった団のもとに一人の女性が訪ねてきた。その女性は、父の遺産相続について、兄とトラブルを起こしていた。
女性は父の遺した唯一の財産である土地を兄と等分して相続したが、数年後にその土地を売ろうとしたところ、相続時に測量したときよりも幅が少なくなっており、兄の取り分が多くなっていたことが判明した。
兄が何らかのトリックを用いて騙したと考えられるが、当時その土地の測量を行ったのは他ならぬその女性自身なのだという。
この話を聞いた団は立派な詐欺事件だと断言し、そのトリックを見破ったようだった。
補足
依頼人の父が遺したのは50メートル四方の正方形の土地でした。依頼人自らが第三者の立ち会いのもとで測量を行い、図面通り50メートル四方あったことを確認し、その後そのうちの平行する2辺を25メートルずつ測って兄と分け合っています。しかし数年後に測量士を呼んだところ、実際には依頼人側の土地の幅は23メートルしかありませんでした。
なお、依頼人が測量を行った際に使用した巻き尺を用意したのは依頼人の兄です。
駅の路線図がヒントになります。
切符を買おうとしていたおばあちゃんは「山上台」という駅まで行きたいようです。この駅から「山上台」までは「赤川線」と「青山線」の2つの路線が出ており、どちらの路線も途中で「山中町」という駅を中継しています。「赤川線」で行った場合は「山中町」までが4駅停車、「山中町」から「山上台」までが6駅停車となります。一方、「青山線」で行った場合は「山中駅」までが5駅停車、「山中駅」から「山上台」までも5駅停車となっています。
登場人物
- 依頼人
団探偵事務所へ相談に訪れた和服姿の女性。貴美子と呼ばれているが、フルネームは不明。兄が何らかの方法で自分を騙したと考えているもその方法が分からず、弁護士に相談しても遺産相続の件は民事上時効になっており、そもそも自分で測ったのだから諦めろと取り合ってもらえなかった - 依頼人の兄
名字も名前も不明。父の財産を勝手に使ったことで勘当され、その後父が死んだ途端に帰って遺産の相続権だけを主張する等、とにかく身勝手な性格。挙げ句あるトリックを用いて妹から土地を多く騙し取る狡猾さを持つ。ちなみに事件後の詳細は作中では語られていないが、おそらく団により詐欺罪で告発され、奪った土地も不当利益として妹に返すことになったと思われる - キュウ
入れ替えテストの話で落ち込むメグに対し、自分がかつて命を救われた恩人の探偵の話をし、メグに「宿題のトリックをどっちが先に解けるか勝負をし、メグが勝った場合はキュウがその探偵から貰ったという『探偵心得帳』を見せてあげるが、キュウが勝った場合はメグのパンツを見せてもらう」と持ちかける。もちろんメグからはビンタを食らった - 美南恵
瞬間記憶能力という類稀な能力を持ちながらも神隠し村事件で他のメンバーに比べて大きな活躍ができなかったことに加え、Aクラスメンバーの経歴の凄さに衝撃を受け、自信を亡くしてしまう。キュウが尊敬する名探偵から貰ったという「探偵心得帳」にキュウのひらめきのルーツがあると考え、その心得帳を見せてほしいと頼んだところ、上述の勝負を挑まれる。キュウのスケベっぷりに怒り、勢いでその勝負に乗ってしまうが… - 天草流
入れ替えテストの話を聞いても一人動じることなく、宿題もあっさり解いて一足先に教室を後にした - 遠山金太郎
神隠し村事件のラストでの対応の仕方に対する意見の相違から、リュウに対して不信感と対抗意識を募らせる。あっさりと謎を解いてみせたリュウを見て「こうなったらなにがなんでも解いてやるぜ!じっちゃんのじっちゃんのそのまたじっちゃんの名にかけて!!」と異様に張り切る - 鳴沢数馬
謎を解いたリュウを見たキンタに八つ当たりで胸ぐらを捕まれ揺さぶられる。その後、キンタが謎を解くのに付き合わされる羽目に。具体的にどのタイミングでかは不明だが、理系なだけあって早い段階で謎は解けていた模様 - 団守彦
Qクラスに対して前述の宿題を出し、「この程度の問題に手こずっているようではQクラス残留はおぼつかない」と発破をかける。
曰く、「単純だが心理的盲点を突いたトリック」であるという - 雪平桜子
Qクラスをライバル視するAクラスの筆頭格。カズマ曰く、Aクラスの中でも特にとんでもない経歴と実績の持ち主らしいが、その詳細については後の事件までお預けとなる - 郷田京助
Aクラスメンバーの一人。霧咲島の最終試験の時はパズル王という触れ込みだったが、カズマのリサーチで実は17歳にして数学オリンピックで世界ランキングに入ったこともある数学の天才だったことが判明する - 白峰隼人
Aクラスメンバーの一人。カズマのリサーチによると父親が世界的マジシャンで、8歳にしてラスベガスのショーでデビューを飾ったこともあるという。片や同じマジシャンでも正反対の道を歩むアイツとは大違い - 獅子戸猛
Aクラスメンバーの一人。カズマのリサーチによるとハーバード大学の現役学生で、現在は休学してDDSに通っているが、20歳で犯罪心理学の博士号を持っているという - 三郎丸豊
Aクラスメンバーの一人。入れ替えテストの通知を見てQクラスにイヤミを言い、今回は負けないと全く根拠のない自信を見せつける - キュウの母親
キュウが自宅でメグのことをよく話題にしているのを見て、キュウがメグに恋しているのだとからかう。キュウは顔を真っ赤にして否定するが… - メグの姉
19歳で女子大生。こちらもメグがよくキュウとリュウのことをよく話題にしていることを指摘し、何かを感じ取っている - 団の助手
団探偵事務所を共に立ち上げたパートナー。団はいずれ彼に「警視庁特別公認探偵」の証のメダルを譲り自分の後継者とするつもりでいたが、とある凶悪事件で命を落としたという - おばあちゃん
キュウとの宿題の答え合わせに向かう前にとある駅でメグが出会った、瓶底眼鏡とマスクをしたおばあちゃん。電車の切符を買おうとしていたが、目が悪くて路線図が見えないため、メグに切符を買ってほしいと頼む
ネタバレ
依頼人の兄は用意した巻き尺の25mの目盛が、実際の25mよりも手前にくるように細工していました。依頼人の女性が25mをはかった時、目盛は25mだったかもしれませんが、実際の距離は23mだったわけです。細工がされているのは、25m付近の目盛だけですので、最初に依頼人が50メートル四方をはかった時は、正しい目盛になっています。
メグは路線図に描かれた2つの路線をみて途中までの数は違っても合計は同じという点がヒントとなり、真相に辿り着いています。
結末
キュウはメグが自分よりも先に答えに辿り着いたので、「探偵心得帳」をメグにみせようとします。しかしメグは『人に頼ろうとする悪い癖』を自覚し、「探偵心得帳」に頼るのをやめます。
(キュウは「オレがパンツ見せるよ」といって服を脱ぎ始めますが、メグにビンタで止められます)
実はメグが駅前で出会ったおばあちゃんはキュウの変装でした。キュウは本当は最初から答えを知っていて、落ち込んでいるメグに自信をつけさせるためにDDSの変装セットを使ってヒントを与えていました。メグは、駅でおばあちゃんに切符を買ってあげようとしたときに受け取った千円札の通し番号が、キュウの持っていたものと同じ番号であったことから真実を知ります。
一方その頃、キンタはカズマを無理やり付き合わせて徹夜で宿題に挑んでいたわけですが…。
翌日、自信満々な顔をしていたQクラスの面々を見た団先生は全員宿題をクリアしたことを確信し、宿題のことには触れずに授業を開始します。
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