「怪物の木こり」は倉井眉介(くらい・まゆすけ)氏のデビュー作で、2019年発表の第17回「このミステリーがすごい!大賞」の受賞作です。2023年12月には映画も公開されます。この記事では、物語のあらすじと真相、感想などをまとめています。
項目 | 説明 |
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タイトル | 怪物の木こり |
評価 | |
著者 | 倉井眉介 |
出版社 | 宝島社 |
シリーズ | 単発 |
発行日 | 2019年1月 |
Audible版 | なし |
あらすじ
共感力に乏しいサイコパスの二宮彰が怪物マスクの男に襲われる。偶然、その場に通りかかった女子大生のおかげで、二宮は一命を取り留めることになるが、友人である杉谷の父親が経営する病院に入院することになる。そして検査の結果、二宮の脳内から“脳チップ”がみつかるが、二宮本人には身に覚えが全くなく、物心つく前に親が埋め込んだと考えるのだが、捨て子の二宮には確かめようがなかった。
同じ頃、刑事の戸城嵐子はある事件の捜査を担当していた。その事件は犯人が被害者の脳を盗むという不気味なもので、のちに“脳泥棒事件”として世間を騒がせることになる。被害者の数は既に三人で、いずれも児童養護施設の出身者だったが、施設自体はバラバラでこれといった共通点はなかった。プロファイリングの専門家である栗田は犯人について、過去に犯罪の経験があることや児童養護施設出身者の情報を入手できる人物だと推測する。
二宮は怪物マスクの人物と脳泥棒事件にはつながりがあると考え、杉谷と共に調査を開始する。そして、容疑者の一人である杉谷のいとこを拷問するのだが、これまでとは違う感情が湧きおこり、うまく殺すことができなかった。二宮は今まで感じてこなかった感情に戸惑い始める。
ネタバレ
その後も“脳泥棒事件”の被害者は4人目、5人目と増え続けてしまうが、5件目以降、突然、犯行がおさまる。嵐子は犯人が6件目の犯行に失敗したと考え、二宮へと辿り着く。その後、被害者の脳にチップが埋め込まれていたことが判明し、さらに、脳泥棒の被害者が東間事件の犠牲者であることも明らかになる。
二十六年前――東間翠と夫の東間和夫が逮捕され、死刑となった。東間夫妻が暮らす森の洋館からは15体の子供の死体がみつかった。死刑になった東間翠は人工的なサイコパスを生み出すために、脳チップで脳の信号を乱す実験を行っていた。被験者となった子供達こそが、脳泥棒事件の被害者に違いなかった。
その頃、二宮も東間事件に辿りついていた。そして彼の携帯電話に、怪物マスクと人質になった二宮の婚約者の姿が送られてくる。二宮は怪物マスクの要求通り、指定の場所へと移動する。怪物マスクの正体は剣持武士で、脳泥棒事件の犯人でもあった。そして、剣持は東間事件の最初の被害だった。
二宮は窮地を脱し、剣持を捕らえることに成功する。剣持は二宮に東間事件で脳チップを埋め込まれた子供達を脳泥棒事件と同様に殺すことを依頼する。その願いを受けいれた二宮は、剣持を殺すのだった。
時系列
出来事を時系列にまとめると次のようになります。
- 2000年東間事件発生
- 2024年剣持武士の妻である剣持咲が階段から転落死する
剣持武士による保険金殺人が疑われ乾登人が捜査を担当する
乾登人が義父に暴言を吐いた剣持を殴り、異動となる
- 2026年脳泥棒事件が3件発生
二宮彰が怪物マスクに襲われる
二宮彰の脳チップが発覚
さらに、脳泥棒事件が2件発生
二宮彰が娘を虐待する父親を殺す
二宮彰の目の前に怪物マスクが再び現れ警告する
杉谷健吾の拷問と殺害
戸城嵐子と乾登人が二宮彰を訪ねる
脳泥棒と東間事件がつながる
二宮彰と脳泥棒の対決
脳泥棒の剣持が二宮に殺され、遺体が発見される
二宮彰が脳チップの交換を拒む(心を持つことを受け入れ、サイコパスに戻る事を拒否する)
感想
物語は、サイコパスである二宮の視点と警察の視点で語られます。東間事件、怪物仮面の襲撃、サイコパスに芽生える感情など、物語の展開に飽きることはありません。冷酷な州人口の二宮も、実は人体実験の被害者であり、20年以上も心の傷を抱えていました。彼が「心」を取り戻したにもかかわらず、最終的には「サイコパス」としての道を歩む姿に触れ、何が「感情」であるのかを深く考えさせられます。頭蓋骨をぶち割って脳を盗むというインパクトもあり、ダークな感じの作品として楽しめます。
みんなの感想
口コミを調べてみると、設定が面白い、読みやすい、テンポがいいなど、ポジティブな感想が投稿されています。著者のデビュー作ということもあり、今後に期待するという言葉も書き込まれています。
映画が公開されるということもあり、さらに、シリアルキラーVSサイコパス!みたいな感じで宣伝されていたので面白そうだなと思い読んでみました。ロボトミー映画ということなのかもしれませんね。
デビュー作ということなので、確かに拙さを感じる部分はあった。それでも、設定が面白く、ストーリーも楽しめた。最初から最後まで楽しめる作品だったと思う。
ややグロいけれど、テンポよく読めて、犯人探しというミステリー要素もある。エンタメミステリーとして面白かった。
読み出しから引き込まれて一気読み。作者に都合のよい展開、ストーリーやキャラクターに深みがないことなど、もろもろあるけど、著名な作家達と比較せずに評価すれば、面白かったといえる。今後の作品を期待します。
このミス大賞受賞作。設定はぶっ飛んでいたけど、斬新でキャッチーだし、全体的に万人向けしそうな作品だった。
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