『厭魅の如き憑くもの(まじもののごときつくもの)』は三津田信三先生の推理小説で、刀城言耶シリーズの1作目です。ホラーとミステリーが融合した作品として評価の高いシリーズです。
項目 | 説明 |
---|---|
タイトル | 厭魅の如き憑くもの まじもののごときつくもの |
著者 | 三津田信三 |
シリーズ | 刀城言耶シリーズ 1作目 |
発行日 | 2006年2月 (単行本) |
Audible版 | なし (2025年1月時点) |
出版社 | 講談社 |
評価 |
あらすじ
戦後の昭和、山深い神々櫛村(かがぐしむら)には、『憑き物筋』とされる谺呀治家(かがちけ)と、『非憑き物筋』の神櫛家(かみぐしけ)という二つの旧家が存在し、村には憑き物信仰が根強く残っていた。怪奇作家の刀城言耶は因習や信仰を取材するため、村を訪れるが、滞在中に連続怪死事件が発生する。村人たちが畏れ崇めるカカシ様の姿で発見される死体、神隠しの伝承、生霊の目撃など、怪異と事件が複雑に絡み合う中、言耶は真相解明に挑む。
シリーズについて
冒頭にも記載していますが、この作品は刀城言耶シリーズの1作目です。読む順番については↓のページにまとめています。1作目ですが、必ずしも最初に読むべきという作品ではありません。読み飛ばした場合であっても、早い段階で読んでおいたほうがいいと思います。
事件概要
なかなか殺人事件は発生しません。最初は神櫛家の千代のお祓いから始まります。紗霧の生き霊が千代に憑いていて、その理由は神櫛漣三郎に千代を渡さないため――いわば嫉妬です。その後、紗霧は憑き物を移した依代を川に流しますが、その依代がまるで生きているかのように振舞ったりします。
谺呀治家と神櫛家はいわくありの旧家でした。しかし、憑き物信仰を払拭するため、一部の人間が神櫛漣三郎と谺呀治紗霧の婚姻を進めようとしています。
なお、村では十二年前に神櫛漣三郎の兄・聯太郎が神隠しにあっています。捜索されましたが遺体はみつかっていません。
殺人事件
死体はカカシ様のお姿で発見されます。殺されたのは漣三郎と紗霧の婚姻を進めようとした谺呀治家の人々と、密会に乱入した膳徳坊です。
- 小佐野膳徳(おさの・ぜんとく)
紗霧を襲った直後に首吊り死体となって発見される - 谺呀治勝虎(かつとら)
緋還川の近くで死体が発見される - 谺呀治国治(くにはる)
毒入りのお茶を飲んで死亡する - 谺呀治絹子(きぬこ)
村から逃げようとしたところを殺される - 谺呀治勇(いさむ)
警察が警戒していたが鎌で喉を斬られて殺される
感想
最初はやや退屈かもしれませんが、刀城言耶がバスで当麻谷と会話するあたりから、徐々にミステリっぽくなってきます。金田一耕助シリーズや京極堂シリーズなどと似た雰囲気で、序盤は本格ミステリというよりもホラー小説を読んでいるような印象になります。閉鎖的な村社会、因習といえばまさに金田一耕助という感じです。
殺人が発生した後は、どんどん事件が進んでいきます。要所要所の推理場面でミステリらしさが現れてきます。結末にはどんでん返しやいくつもの伏線回収があるので、読んだ良かったと思えるはずです。
- 独特の世界観と雰囲気がいい!
おどろおどろしい雰囲気、神隠しや怪異などの謎が世界観を作り上げています - ミステリーホラーとしてかなり面白い!
どんでん返し、意外な犯人、ミステリーとしての構成などなど、ミステリー小説として抜群の面白さがあります!もちろんホラーの要素もあります
ネタバレ注意
謎解きでは、いろんな人物が告発されます。いずれも犯人ではなく、真犯人は谺呀治紗霧の双子の姉である谺呀治小霧です。小霧は死んだとされていましたが、実は生きており、カカシ様の中に隠れて、いろいろと見聞きしていました。
物語の語り手も小霧(=カカシ様)です。第三者視点、言い換えると神視点で事件は綴られていると冒頭に書かれていましたが、本当は小霧の一人称視点でした。カカシ様、すなわち神様の視点ですので、神視点というのはあながち間違いではなりません。なお、『紗霧の日記より』『取材ノートより』『漣三郎の記述録より』は、それぞれの視点になっています。壱「巫神堂」から陸「行き逢い筋」までの章で、『紗霧の日記より』が始まるまでの文章、および、柒「巫神堂」の文章がいわゆるカカシ様視点です。
- 依代の謎
不思議な動きをした依代は自然現象。偶然 - 聯太郎の行方
聯太郎は小霧の身代わり。小霧を生かすため、叉霧が聯太郎を殺した - ×××
作中に登場する×××には「山神様」の三文字が入る
コメント