『占星術殺人事件』は島田荘司(しまだ・そうじ)氏の推理小説で、著者のデビュー作であり、〈御手洗潔シリーズ〉の第1作でもあります。東西ミステリーベスト100で3位に、および、世界の密室ミステリーベスト10で2位にランクインしている作品で、金田一少年の事件簿で類似のトリックが使われたことでも有名になっています。この記事ではあらすじと真相、感想などをご紹介します。
項目 | 説明 |
---|---|
タイトル | 占星術殺人事件 |
評価 | |
著者 | 島田荘司 |
出版社 | 講談社 |
シリーズ | 1作目 |
発行日 | 1981年12月 |
Audible版 | なし |
あらすじ
1936年2月26日、画家・梅沢平吉が自宅の密室アトリエで殺害され、残された遺書には異常な内容が書き残されていた。処女6人の体の一部分を切り取り、合成して理想の女性「アゾート」を作るという不可解な計画…。その後、6人の姉妹が殺害され、それぞれ、体が切り取られた状態で発見される。占星術殺人と呼ばれるこの事件は、未解決のまま迷宮入りとなる。
約40年後――元警察官の竹越文次郎の娘である飯田美沙子は、父の遺品整理中に占星術殺人事件に関する手記をみつける。そこには「自分こそが占星術殺人で切り取られた体を、各地に運んだ人間なのだ」という記述があった。警察に持ち込むことをためらった美沙子は、探偵として評判の御手洗潔に相談することになる。
登場人物
主な登場人物を簡単に紹介します。
- 梅沢平吉
最初の被害者。多恵と結婚し時子を授かるが離婚。その後は昌子と再婚する - 梅沢昌子
平吉の再婚相手。警察に拘留され獄中死する。自分の子供ではない時子をいじめていた - 梅沢一枝
二番目の被害者。昌子の連れ子。長女 - 梅沢知子
被害者。昌子の連れ子。次女 - 梅沢秋子
被害者。昌子の連れ子。三女 - 梅沢雪子
被害者。平吉と昌子の子供 - 梅沢時子
被害者。平吉と多恵の子供 - 梅沢礼子
被害者。平吉の弟である吉男の長女 - 梅沢信代
被害者。平吉の弟である吉男の長女 - 竹越文次郎
警官。飯田美沙子の父親 - 飯田美沙子
依頼人 - 御手洗潔
探偵役。変人。探偵が趣味の占星術師 - 石岡和己
助手役。ごくごく普通な日本人。御手洗の親友
ネタバレ
犯人は梅沢時子(当時22歳)です。動機は母を救うことと、邪魔者扱いされたことに対する復讐でした。
犯人はまず平吉を殺害しました。犯行後、雪の上にあえて足跡を残し男性の犯行にみせ、さらに義母の昌子に罪をなすりつけるため、偽の証拠を昌子の部屋に残しました。同時に、アゾートに関する手記を平吉のアトリエに残し、アゾート事件の下準備も進めました。つまり、平吉のものと考えられていた手記は、実は時子によって書かれたものでした。
平吉の次に殺したのが一枝で、犯行後、犯人は以前から目をつけていた竹越刑事に近づいて肉体関係を結び、竹越の精子を入手しました。その後、一枝の膣内に精子を入れ、犯人が男性であるかのように偽装工作を行います。
最後の事件では、一枝の自宅に知子、秋子、雪子、礼子、信代の5人集めて、全員を毒入りジュースで殺しました。その後、遺体をバラバラにし、6つ遺体があるようにみせて、別々の場所に埋めました。結果的に、時子も殺されたと認識されることになります。なお、遺体を埋めたのは、時子に脅迫されていた竹越刑事でした。
結末
その後、時子は満州へと逃亡。50歳を迎えてから、母の多恵に会うために日本へと戻ります。時子は母親を救うために殺人を重ねてきましたが、再会した多恵は孤独で、しかも病に冒されてました。殺人に意味がなかったことを知った時子は、母親である多恵に、自分が死んだはずの時子であることを告白することになります。
時子は真相を突き止める人物が現れるのを期待します。弱みを握ったその人物を時子は愛する覚悟でした。しかし、そのような男性はなかなか現れず、御手洗が時子に会いに来たとき、時子は既に65歳になっていました。最後時子は、警察に捕まる前に自ら命を絶ちます。
感想
500ページ超えの作品です。難解な部分や冗長な部分があって、読みづらい印象もありますが、本格的なミステリーというのは間違いないです。退屈な感じを凌駕するミステリーのトリック!というと期待値が高まってしまいますが、他の作品で同じよく似たトリックが使われていたりするので、ご存知の方は、あまり楽しめないかもしれません。
とはいえ、東西ミステリーベスト100の3位にランクインしている『占星術殺人事件』がかなり面白いは間違いないです。ミステリーとしてのトリックや謎解きが素晴らしいだけではなく、私個人としては、一人の生涯を描いたヒューマンドラマとして非常に心動かされたりもしました。
金田一少年の事件簿
金田一少年の事件簿「異人館村殺人事件」で、バラバラにして死体の数を誤魔化すというトリックが使われています。このトリックは占星術殺人事件ではメイントリックですが、異人館村では特に真相につながるようなトリックにはなっていません。なお、最近では漫画「鬼はよく燃えているか」でも同様のトリックが使われ、パクリ騒動が発生しています。
トリックを流用したからといって、法的な問題は一切ありません。ただ、異人館村の場合、島田荘司氏に相談なく無断で使用したため、島田荘司氏が異議を唱えることになりました。しかしその後、民事訴訟には発展せず、話し合いによって解決しています。
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