推理短編小説のおすすめはズバリ『世界推理短編傑作集』です。江戸川乱歩さんが選んだ短編集で全5冊・48の短編を楽しむことができます!収録されている短編は1850年頃から1950年頃までに発表された作品で、ミステリーの黎明期から黄金期までの様々なミステリーを読むことができます。
世界推理短編傑作集1
- 盗まれた手紙:エドガー・アラン・ポオ
- 人を呪わば:ウィルキー・コリンズ
- 安全マッチ:アントン・チェーホフ
- 赤毛組合:アーサー・コナン・ドイル
- レントン館盗難事件:アーサー・モリスン
- 医師とその妻と時計:アンナ・キャサリン・グリーン
- ダブリン事件:バロネス・オルツィ
- 十三号独房の問題:ジャック・フットレル
この選集の魅力
古典ということで、ちょっと古臭く感じるかもしれませんが、事件の奇抜さ、コミカルな味わい、納得感のある解決などなど、あっぱれな感じのミステリーが詰まっています。既視感のあるトリックや展開、結末などもあると思いますが、歴史的に元祖はこちらに収録されている短編のはずです。
- 名作と名高い推理短編の収録
- 奇抜なトリックやストーリー展開、キャラクター魅力など、どれも楽しめる
- 古典ミステリーならではの時代背景
- 様々な作家の作品を鑑賞できる
世界推理短編傑作集2
- 放心家組合:ロバート・バー
- 奇妙な跡:バルドゥイン・グロラー
- 奇妙な足音:G・K・チェスタトン
- 赤い絹の肩かけ:モーリス・ルブラン
- オスカー・ブロズキー事件:オースチン・フリーマン
- ギルバート・マレル卿の絵:V・L・ホワイトチャーチ
- ブルックベンド荘の悲劇:アーネスト・ブラマ
- ズームドルフ事件:M・D・ポースト
- 急行列車内の謎:F・W・クロフツ
感想
他の世界推理短編傑作集も読んでおりますが、2の紹介となっています。他意はありません。この傑作集を読んでいると、「名前は知っているけれども読んだことはない作家やキャラクターが登場する作品に触れてみるキャンペーン」みたいになります。キャラクターでいうとブラウン神父やルパン(本にはリュパンと書かれておりました)、作家で言うとオースチン・フリーマンやクロフツといったところです。
9作品の中で一番印象に残っているのはルパン作品の『赤い絹の肩かけ』です。これを読んで他のルパンシリーズにも興味が湧くという、私の影響されやすい面が表出しています(傑作集、ということなので、これ以上の作品はないのではないか、と思ったりもします。長編を除くですが)。『赤い絹の肩かけ』は、いうならば、驚きに長けたミステリーだったと思います。対して『オスカー・ブロズキー事件』は地味めな作品でした。倒叙形式で書かれたこの作品は犯人が最初にわかっているというやつで、探偵が科学などを駆使して捜査し、犯人に辿り着く過程を描いた作品です。
『ギルバート・マレル卿の絵』と『急行列車内の謎』は列車トリックと呼べそうなトリックが登場していました。鉄道に全く関心もなければ、当然、知識も皆無の私にとって、理解できるかどうかがキーポイントとなってくるわけですが、大丈夫でした。ミステリーものをみていると、鉄道はよく登場しますし、“名探偵ポワロ”なんかでは映像化もされていて、イメージしやすいです。ただ『急行列車内の謎』は、トリックがイメージできなかったので何度か読み返しました。海外の本のレビューサイトを除いてみると、専門的な内容が多くて具体的にイメージできなかった、みたいな感想を書き込んでいる海外読者がいたので、日本人だから想像できないわけではないのだなと思ったりもして、多少の慰めにはなりました。
ネタバレ
『放心家組合』は探偵が敗北するという結末でした。探偵が掴んだ証拠を犯罪者が隠滅して逃げおおせるという最後は、確かに“奇妙な味”(江戸川乱歩氏の分類)でした。wikipediaによれば、『奇妙な足音』も奇妙な味に分類されるらしく、それは、論理的な内容よりも、展開や結末、そしてキャラの異様さに主眼を置いた作品とのことです。異様さ、というのが曖昧なわけですが、この異様であるという条件を無視すれば、多くのミステリー作品は、論理的に細かい内容を描くよりも、あっと驚く展開や結末を重視しているように思ったりもします。
『奇妙な足音』はブラウン神父が登場する作品で、タイトルの通り、神父が奇妙な足音を耳にして変装を見破り、盗難に気付くというストーリーでした。序盤のおわりに、神父が犯人と接触して事件を終わらせるという構成になっていて、この部分が異様な展開といえるのかもしれません。
世界推理短編傑作集3
- 三死人:イーデン・フィルポッツ
- 堕天使の冒険:パーシヴァル・ワイルド
- 夜鶯荘:アガサ・クリスティ
- 茶の葉:E・ジェプスン&R・ユーステス
- キプロスの蜂:アントニー・ウィン
- イギリス製濾過器:C・B・ベックホファー・ロバーツ
- 殺人者:アーネスト・ヘミングウェイ
- 窓のふくろう:G・D・H&M・I・コール
- 完全犯罪:ベン・レイ・レドマン
- 偶然の審判:アントニイ・バークリー
世界推理短編傑作集4
- オッターモール氏の手:トマス・バーク
- 信・望・愛:アーヴィン・S・コッブ
- 密室の行者:ロナルド・A・ノックス
- スペードという男:ダシール・ハメット
- 二壜のソース:ロード・ダンセイニ
- 銀の仮面:ヒュー・ウォルポール
- 疑惑:ドロシー・L・セイヤーズ
- いかれたお茶会の冒険:エラリー・クイーン
- 黄色いなめくじ:H・C・ベイリー
世界推理短編傑作集5
- ボーダーライン事件:マージェリー・アリンガム
- 好打:E・C・ベントリー
- いかさま賭博:レスリー・チャーテリス
- クリスマスに帰る:ジョン・コリアー
- 爪:ウィリアム・アイリッシュ
- ある殺人者の肖像:Q・パトリック
- 十五人の殺人者たち:ベン・ヘクト
- 危険な連中:フレドリック・ブラウン
- 証拠のかわりに:レックス・スタウト
- 妖魔の森の家:カーター・ディクスン
- 悪夢:デイビッド・C・クック
- 黄金の二十:エラリー・クイーン
世界推理短編傑作集6(戸川安宣編)
※6は江戸川乱歩さんの選集ではありません。1~5の補完を目的として戸川安宣さんが選んだ短編集となっています。
- バティニョールの老人:エミール・ガボリオ
- ディキンスン夫人の謎:ニコラス・カーター
- エドマンズベリー僧院の宝石:M・P・シール
- 仮装芝居:E・W・ホーナング
- ジョコンダの微笑:オルダス・ハックスリー
- 雨の殺人者:レイモンド・チャンドラー
- 身代金:パール・S・バック
- メグレのパイプ:ジョルジュ・シムノン
- 戦術の演習:イーヴリン・ウォー
- 九マイルは遠すぎる:ハリイ・ケメルマン
- 緋の接吻:E・S・ガードナー
- 五十一番目の密室またはMWAの殺人:ロバート・アーサー
- 死者の靴:マイケル・イネス
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