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ハサミ男【あらすじ・ネタバレ解説・感想】

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 ハサミ男』は殊能将之(しゅのう・まさゆき)氏の推理小説で、1999年に第13回メフィスト賞を受賞しています。この記事では、物語のあらすじや真相、読者の感想などをまとめています。

項目 説明
タイトル ハサミ男
評価
著者 殊能将之
出版社 講談社
シリーズ
発売日 2002年8月9日
Audible版 なし
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あらすじ

“私”は、3回目の殺しの標的として、目黒区在住の樽宮由紀子を選んだ。由紀子は、私のバイト先で通信教育を受けている女子高生だった。世間からハサミ男と呼ばれている私には、自殺願望があった。様々な方法を試したのだが、どれもうまくはいかなった。ときどき、別人格のような人物が話しかけてくることもあった。私はそれを“医師”と呼ぶことにしていた。

私は由紀子殺害のため、偵察を繰り返し、父親の顔などを把握した。もちろん、凶器のハサミも用意した。アルバイトの繁忙期が過ぎるのを待って、さらに由紀子のことを調べ、機会を伺った。そして、犯行を決意した日、私は由紀子を待ち伏せしたのだが、綿密な下準備にも関わらず、彼女は一向に姿を現さなかった。諦めて帰宅しようとしたとき、通りがかった公園で、私は由紀子の死体をみつけてしまった。

由紀子はビニール紐で首を絞められ、首にはハサミが突き刺さっていた。それは、ハサミ男の手口に違いなかった。ハサミ男は私なので、由紀子を殺したのが本物のハサミ男ではないのは、間違いなかった。

運の悪いことに、私は、通行人に声を掛けられてしまった。やむを得ず私は、第一発見者のふりをすることになる。カバンに入れていたハサミはその場に捨て、代わりに、イニシャルKがほられたライターを拾った。

通報を受け、由紀子の死体がみつかった公園に刑事の磯部達がやってくる。現場でみつかったハサミは、死体の喉に刺さったものと同じタイプのものだった。性的暴行の痕跡はなく、ハサミ男の犯行だと見立てられる。犯罪心理分析官の堀之内も、後押しした。

私はハサミ男の犯行という報道に苛立っていた。“医師”は、犯人を見つけるべきだと提案してくる。“医師”の提案を拒絶しつつも、真犯人が気になった私は死んだ樽宮由紀子の自宅に電話をかけ、告別式の日取りを聞き出していた。何食わぬ顔で参加した告別式で、私は、由紀子の父親をみかけた。それは、偵察のとき、父親だと思っていた男性とは違っていた。

登場人物

主な登場人物をまとめます。

  • ハサミ男
    主人公。体型を気にする26歳。自殺志願者であり、ハサミを凶器に使う殺人鬼でもある。警察庁に記録されている正式な名称は“広域連続殺人犯エ十二号(え・じゅうにごう)”である。氷室川出版のアルバイトをしながら標的を探し、小西美菜(こにし・みな)や松原雅世(まつばら・まさよ)といった女子高生を殺している。
  • 医師
    60歳。自殺に失敗したハサミ男と面談する。真犯人の調査を促した人物。
  • 樽宮由紀子(たるみや・ゆきこ)
    被害者・高校2年生。ハサミ男のターゲットとなるが、別の人物によって殺される。
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ネタバレ

告別式後の展開ですが、まず、週刊誌の記者である黒梅という人物が現れ、“私”は、死んだ由紀子がビッチだったことなどを知ります。また、由紀子には実の父親と義理の父親がいるということも判明します。

その後、私は黒梅の名刺を悪用して、由紀子の友人である亜矢子と会い、さらに、教師の岩左邦馬とも接触します。私は、岩佐がイニシャルKのライターの持ち主だと考えていたようですが、岩佐は喫煙家ではなさそうでした。一方、警察は、現場からハサミが二つみつかったことから、第一発見者である日高という男を疑います。

ハサミ男の模倣犯を探していた私ですが、岩佐と接触後、手詰まりとなってしまいます。そして、自殺を図りますが、失敗。ちょうどそこに刑事達が現れ、私は事情を聴かれます。このことをきっかけに、私は、自分に嫌疑がかかっていると考え、現場にハサミが二つ落ちていたことを週刊誌にリークします。

ハサミが二つあったというのは、犯人や警察関係者だけが知る情報だったので、警察はハサミの情報がリークされたことを知り、日高の知能に警戒感を強めます。その後、警察は、二つのハサミの研ぎ方に違いがあることに気付き、別の人物が捨てたという推理を立てることになります。

私は、殺し損ねた由紀子、もとい、死んだ由紀子の弟や母親と会います。そして、由紀子の母親であるとし恵との会話から、告別式に実の父親も参列していたことを知ります。つまり、私が偵察している時に目撃した男性は、義理の父親でも、本当の父親でもなかったということになります。

ハサミ男

またしても、“私”が自宅での自殺に失敗すると、呼び鈴が鳴ります。私が応じると、そこにいたのは日高光一でした。つまり、“私”というのは日高という男性ではなく、安永知夏という美人な女性でした。由紀子の死体がみつかったときに登場した通行人が日高で、日高は由紀子がハサミを捨てる瞬間を目撃していました。

模倣犯

安永知夏がハサミ男であることに気付いた日高は、知夏を自宅アパートへと連れ込みますが、逆に殺されてしまいます。日高は模倣犯でもなかければ、ライターの持ち主でもありませんでした。

模倣犯の正体は堀之内で、堀之内が由紀子を殺害しました。堀之内は由紀子が妊娠してしまったため、ハサミ男の犯行にみせかけて、由紀子を始末しました。

結末

堀之内が日高のアパートに現れます。そして、堀之内は知夏こそがハサミ男であることに気付きます。一方知夏は、堀之内に拳銃をつきつけられ、身動きがとれません。ここに、刑事の磯部も登場し、三つ巴となります。そんな状況で、知夏が堀之内の握った拳銃を掴み、堀之内の指ごと引き金を引いて、自死を図ります。が、またしても死ねません。

それをみていた磯部は、堀之内が知夏を撃ったという風に勘違いします。追い詰められた堀之内は、拳銃で口にふくんで発砲し死亡。結果的に、ハサミ男は日高で、堀之内は由紀子殺害をハサミ男になすりつけようとして、日高も殺害したということになります。

ハサミ男の正体は安永知夏、ですが彼女は全ての罪から逃れます。自らを撃ったのも、堀之内が撃ったと証言します。入院先では、隣の患者のお見舞いにきた女子高生くらいの賢そうな女の子に、「きみ、名前はなんていうの?」と声を掛けます。

知夏が女の子に名前を聞き、次の標的をみつけた様子を匂わせ、物語は終わります。
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みんなの感想

 本の口コミを調べると、とても面白い、まんまと騙された、展開に驚くなど、ポジティブな感想が多く書き込まれていました。少し残念という感想もあるようですが、おおむね高評価といえます。

騙された

 騙された!というコメントが多いです。

騙されないぞ!と意気込んで読んでも、結局、最初から騙されてて二度読み確定。

知り合いから勧められて購入。絶対騙されるぞ、と言われていたので、気を使いながら読んでいたのですが、綺麗に騙されてしまいました(笑)

後半は「えっ?なに?」と頭が混乱。まんまと騙されました。すぐに再読し、2度目は違った目線で確認しながら読み、とても楽しめました。

作者の巧みなミスリードにまんまとやられてしまいました。叙述トリックとしてはまさに王道のようなストーリーであり、なおかつ大胆、再読すると伏線に気付けると思うので読んでみたい。

読み始めは、どんな終わり方になるのかなと思いながら読み、中盤はハラハラし、後半はまんまと騙され一気読みしてしまった。

映画

ハサミ男は映画化もされています。安永を豊川悦司さんが演じ、堀之内は阿部寛さんです。そして、映画には安永とは別に、知夏という人物が登場しています(演じるのは麻生久美子さん)。原作では、安永知夏という一人の人物が登場していたわけですが、映画では、安永と知夏という二人の人物になっています。

原作小説との違い

ネタバレ注意

原作小説の叙述トリックは、男だと思われていた人物が女だったというものですが、映画にこのトリックは登場しません。代わりに、安永という人物は実在せず、ハサミ男である知夏の妄想だったというトリックが仕掛けられています。

作者について

ハサミ男の作者である殊能将之(しゅのう・まさゆき)さんは2013年2月11日に49歳で亡くなりました。死因は公表されていません。世間に素顔や本名などを公開していなかった殊能ですが、死後に、田波正が本名であることが公表されています。

まとめ

 殊能将之著「ハサミ男」について、あらすじ、みんなの感想、ネタバレなどをまとめました。

犯人

  • 安永知夏=ハサミ男
    男だと思われていたが実は女だった。つまり、ハサミ男ではなく、ハサミ女。模倣犯の堀之内という人物も登場したことで、事件は複雑になっている。堀之内は自殺の直前に、やけくそになって“全て俺がやった”といった内容の発言するため、堀之内が真犯人ということになり、本物のハサミ男は罪から逃れている。

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