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レモンと殺人鬼【あらすじ・ネタバレ解説】

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 「レモンと殺人鬼」は、くわがきあゆ氏の推理小説で、2023年の“このミステリーがすごい!大賞”で文庫グランプリに輝いた作品です。この記事では、あらすじや読者の感想、ネタバレなどをまとめています。

項目 説明
タイトル レモンと殺人鬼
評価
著者 くわがきあゆ
出版社 宝島社文庫
シリーズ 単発
発行日 2023年4月6日
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あらすじ

小林美桜(こばやし・みお)と妹の妃奈(ひな)は、小学生の頃に洋食店を経営していた父親を亡くした。通り魔殺人だった。母親も行方不明になり、美桜と妃奈は別々の親戚のもとで生活することになった。その生活は、どちらも、決して幸せといえるものではなかった。月日は流れ、妹の妃奈の遺体が発見され、妃奈に保険金殺人の疑いがかかてしまう…。

登場人物

簡単に登場人物をまとめます。主人公は小林美桜で、その相棒役が渚丈太郎となります。

名前 説明
小林美桜
こばやし・みお
大学事務の派遣社員
歯並びを気にしている。鶏が苦手
小林妃奈
こばやし・ひな
美桜の妹。保険外交員
山中で死体となってみつかる。滅多刺しにされていた
小林恭司
こばやし・きょうじ
美桜と妃奈の父親。佐神という少年に殺される
洋食屋「グリル那見」を営んでおり看板メニューはチキンのレモンソテー
小林寛子
こばやし・ひろこ
美桜と妃奈の母親
失踪している
佐神翔
さがみ・しょう
恭司を14歳の時に殺害した男。動機は人を殺してみたかったから
少年院に入ったが出所し、その後、行方不明となる
海野真凛
うみの・まりん
美桜の中学の同級生。美桜をいじっていた
「そのあとクラブ」に所属
渚丈太郎
なぎさ・じょうたろう
大学4年生。真凛の彼氏。美桜に協力する
ジャーナリスト志望で経験を積むため美桜に協力する
桐宮証平
きりみや・しょうへい
放課後に児童を預かるクラブの責任者
農学部の大学院生
銅森一星 妃奈の元彼。居酒屋経営者
金田拓也 堂森の幼馴染で用心棒のような存在
川喜多弘 妃奈の元彼。登山中の事故で死亡
回想に登場する少年

事件概要

主人公である美桜(ミオ)が、警察から連絡を受け、妹の妃奈(ヒナ)の死を知り、物語が始まります。ミオの父親は10年前に佐神翔という当時14歳の少年に殺害されており、さらに、その後、母親も失踪しています。そして、今回、妹のヒナが死体となって発見されます。サスペンスやスリラーらしい物語の発端で、ここに佐神翔が出所しているという設定も加わったりします。

あらすじの繰り返しになりますが、ヒナの死が発覚したあと、マスコミによって、彼女に保険金殺人の嫌疑がかかります。これは、ヒナの元彼(川喜多という男)が事故で亡くなっていてその保険金の受取人がヒナだった、という事実が疑惑の根拠となります。ここに、銅森一星なる男の証言が加わり、ヒナがより一層疑われます。銅森一星というのは、洋風居酒屋の経営者で、銅森もまたヒナの元彼です。そしてこの銅森が、自分も保険金殺人に遭いそうになったと話したことでヒナの立場が悪くなります。これを払拭するために、ミオがジャーナリスト志望の渚丈太郎と共に、保険金殺人について調べ始めます。

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ネタバレ

ヒナにかけられた保険金殺人の嫌疑ですが、これは、ヒナが受け取った3000万円の保険金を寄付していたことが明らかになります。これにより、疑いは晴れます。銅森が保険金殺人を語っていましたが、これは嘘でした。どうやら、自身が経営する居酒屋の知名度を上げる目論見だったようです。

その後、行方不明だった寛子の遺体がみつかり、ミオは、自分も狙われているのではないかと疑ります。そしてある朝、ミオの職場のロッカーから鶏の死体がみつかります。不穏な状況の中で、ミオは「そのあとクラブ(放課後に児童を預かる団体の名称)」で真凛と二人きりになり、ミオがぬいぐるみを片付けていると、ぬいぐるみに仕込まれたガラスの破片がミオの指に刺さったりもします。

ミオがずっと無視されていた真凛に話し掛けると、どういうわけか真凛がひどく怯え始めます。ここで、真凛はミオによるいじめの復讐を恐れており、その恐怖から、ミオを無視するような態度をとっていたということが明らかになります。

ミオが声を掛けたことで、真凛は逃げようとし、そこに渚が現れます。そして、渚がミオを襲ってきます。助けに入った桐宮が刺されてしまいますが、命に別状はなく、無事でした。その場から、逃げるミオでしたが、今度は、日本刀をもった謎の男に襲われます。

トリック

まず、渚丈太郎は偽者です。偽の渚は恋人の真凛が美桜を恐れていることを面白く思っていませんでした。この偽の渚が、最後、美桜を殺害しようとします(相棒が犯人だったというトリックです)。

そして、小林美桜と小林妃奈は双子でした。冒頭で、妃奈は死んでいるので、美桜の視点で描かれていると思いがちの物語でしたが、子供の頃の話は、実は、妃奈の視点でした(語り手のトリック)。美桜と妃奈以外にも、佐神翔だと思われていた描写が父親だったという同様のトリックも仕掛けられています。

なお、初恋の人である蓮は桐宮のことで、彼は「そのあとクラブ」を運営している人物です。桐宮が蓮で、蓮が佐神翔かもしれないという三者同一人物の関係が推測されますが、結局、桐宮=蓮というだけです。

トリックとは違うと思いますが、美桜には暗い過去があります。彼女の父が生きていたとき、美桜は、鶏の屠殺をやらされていました。一方、妃奈はレモンを絞るという簡単な作業を手伝っていました。二人の父である恭司は妃奈の方を可愛がっていたようです。

結末

妃奈の死の真相やラストについてです。まず、出所した佐神翔は父親の佐神逸夫によって殺されています。この証拠を掴んだ妃奈で、妃奈が逸夫を問い詰めます。が、返り討ちにあい、妃奈は殺されてしまいます。その後、逸夫は美桜や妃奈の母親である寛子も殺害します。動機は日本刀で自分の思い描いたように斬りたいから、みたいなことです。

最後に現れた日本刀の男は佐神逸夫です。逸夫と対峙した美桜は逸夫の目にガラス突き刺し、逸夫が持っていた日本刀を奪って、それを振りかぶり…という感じで物語は終わります。

佐神の父親の手から日本刀が離れたのだ。それを私は見逃さなかった。
すばやく拾い上げる。すると、佐神の父親は左目を手で覆いながら、こちらに突っ込んできた。
私は冷静に刃物を振るった。
鶏の解体なら数えきれないほどやった。その経験を応用すればいいだけだ。
ざくり、ざくりと、相手の肉に刃先が食い込む感触も、顔に飛んでくる血も、大きな鶏のものだと思えば何ともない。
ほどなくして、どさり、と佐神の父親が前のめりに倒れた。それきり、起き上がる様子はない。
荒い息を吐きながら、私は手にした日本刀を下げた。
勝った。私が勝った。急に縮んだように見える死体を見下ろしながら考える。
レモンと殺人鬼:くわがきあゆ 抜粋

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感想

 伏線がたくさん盛り込まれており、どんでん返しの展開が面白いです。本格ミステリというよりも、スリラーやサスペンスの要素が強いので、“どんでん返し”かと言われると、やや意見が分かれそうな部分もあります。しかしこれは、本の内容とは別に関係のないことですので、物語が面白くないというわけではないです。登場人物の人物像が、次々に変わっていくのが、この作品の魅力かなと思います。

誤植

173ページの9行目あたりに誤植らしき部分があります。本に書かれている人物名は金田となっていますが、状況的にここは銅森でないとおかしい、というものです。今後、修正されるかもしれません。

みんなの感想

 本のレビューを調べてみると、怒涛の展開、確かにどんでん返しだったなどの感想がよく書き込まれていました。

どんでん返し

 どんでん返しが帯などで訴求されており、これについて感想を書きこんでいる読者の方が多いです。どんでん返しを楽しめる!というコメントが多いですが、ちょっと強引ではないかという意見もあったりします。

イヤミスだけど、不快感を感じることなく、どんでん返し祭りを堪能した。

読みやすく、最後はどんでん返しからのまさかの結末が良かった。これは面白い。要所要所で謎が解けていき、飽きずに読み切れるし、最後のどんでん返しの展開は、しっかり読んでおかないと置いてかれるかもしれない。けど、自分的にいいミステリーでした。

確かにどんでん返しだった。読みやすくて先も気になるしサクサク読めた。エンタメとしては面白かった。

帯でどんでん返しがあることは分かっていたが、2回ほど「えっ!?」と声が出た。

二転三転……のどんでん返しは間違いないのだけど、なんだかもうメチャクチャ感満載。かなり強引な展開かなあ。でもそれも面白いけど!な本でした。

怒涛

 それほど数は多くありませんが、怒涛の展開というのも口コミをみられます。

怖~いミステリー小説。帯通り四転五転ある。後半は怒涛の展開のため、一気読みをおすすめします。

中盤から怒涛の展開で、読むのを止めるタイミングが見つけられず一気読みしてしまった。

ある真相がわかってからの怒涛の展開が凄かった。今まで考えていた全体像みたいなものが、ひっくり返されました。

虐げる

 「虐げる、虐げられる」が本書のキーワードになっているように思います。これについて、読者の方は次のようにコメントしています。

虐げる側が自由なのだろうか。

虐げる者と虐げられる者。そんな呪いに取り憑かれ、サイコ化していく。

描写が緻密なのも相まって「うっ」てなるシーンがめっちゃある。虐げる側と虐げられる側。なかなか歪んでる考えだけど、案外そうなのかもって少し思う。

コメント

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