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Zの悲劇|あらすじ・感想・ネタバレ【エラリークイーン】

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 エラリー・クイーン〈ドルリー・レーン四部作〉の三作目『Zの悲劇』は、これまでとは違い、若い女性探偵ペイシェンス・サムの視点で物語が展開されます!この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています。

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あらすじ

 巨大なアルゴンキン刑務所がそびえ立つリーズ市。悪徳政治家として知られる上院議員フォーセットが殺害され、その容疑者として、出所したばかりの元囚人アーロン・ドウが逮捕されるが…。元警視のサムとその娘ペイシェンスが事件の矛盾点に気づき、ドウの無実を確信する。そして名探偵ドルリー・レーンの協力を得て、真相究明ため奔走する。

 ところが第二の殺人事件が発生し、ドウは再び容疑者として逮捕され、死刑判決を受けてしまう。残された時間はわずか。ペイシェンス、サム、そしてレーンは、様々な思惑が渦巻く中で、真犯人を突き止め、ドウを救うことができるのか――。

Zの悲劇
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特徴

  • 一人称視点: 語り手がサム警視の娘ペイシェンスであり、彼女の視点を通して物語が展開されるというこれまでとは違った構成
  • タイムリミット: 無実の罪を着せられた男の死刑執行が迫る中、真相を究明するというタイムリミットサスペンス!緊迫感あふれる展開にページをめくる手が止まらない!?
  • 社会的なテーマ: 死刑制度という重いテーマに触れ、正義とは何か、法とは何かを読者に問いかける
  • 鮮やかな推理: ドルリー・レーンによる容疑者を一人ずつ排除していく鮮やかな消去法推理!

こんな人におすすめ

  • 本格ミステリーが好き!論理的な推理を楽しみたい!
  • サスペンスが好き!ハラハラドキドキする展開を味わいたい!
  • 社会派ミステリーにも興味があって重いテーマについて考えたい!
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感想

 『Zの悲劇』は、これまでのシリーズ作品とは異なる要素が盛り込まれており、賛否両論ありそうです。女主人公で一人称というのが珍しく、クイーンの著作の中で一人称の作品はこれ一作だけらしいです。Yの悲劇から10年の月日が経っているので、レーンもだいぶ年をとっていますね。
 個人的には、一人称視点の導入や社会的なテーマへの挑戦など、新たな試みは評価されるべきだと思います。ドルリー・レーンの推理力は健在で、最後の謎解きシーンは、毎度ながら見事でした。ただ、XやYの方が面白かったかなという印象はあります。

高評価のポイント

  • 緻密な推理:ドルリー・レーンによる鮮やかで論理的な推理は読み応えがある
  • サスペンス:死刑執行までのタイムリミットが緊迫感を与え、ハラハラドキドキさせる!
  • 異質な設定:警部の娘が一人称で語るという、クイーン作品では珍しいスタイルが新鮮
  • ドラマ性:冤罪を晴らすという、ドラマチックな展開!

低評価のポイント

  • 地味な印象: XやYに比べると、事件そのものが地味で盛り上がりに欠けるかも
  • 語り手の魅力不足:ペイシェンスという語り手に魅力を感じない…
  • レーンの衰え:レーンが老いて精彩を欠いているのが寂しい…
  • Zの意味の弱さ:タイトルの「Z」に、XやYほどの必然性を感じない…
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ネタバレ

 真犯人は、アルゴンキン刑務所の所長マグナスです。表向きは模範的な人物として振る舞っていましたが、裏では金に汚く、権力を笠に着て悪事を重ねていました。マグナスは、過去に「ヘジャーズの星」号事件でダイヤを強奪したフォーセット兄弟を、元囚人のアーロン・ドウを利用して脅迫し、大金をせしめようと企みます。しかし、兄弟が金を払うことを拒否したため、マグナスは自ら手を下して彼らを殺害し、その罪をすべてドウになすりつけようとしていました。

 マグナスは、ドウが刑務所内で作っていた木箱の破片を利用し、フォーセット兄弟に脅迫状を送っています。ドウが脱獄した夜に兄弟を殺害することで、状況証拠を完全にドウに不利なものにしました。
 しかし、レーンは、死刑執行直前に、事件現場に残されたわずかな証拠から、犯人が右利きでありながら、左手で殺人を犯したことを突き止めます。そして、その手がかりから、マグナスが犯人であるという結論にいたります。

 マグナスの動機はまさに金銭欲と権力欲です。強欲のため、自らの地位と財産を固守し、罪のない人間を犠牲にすることを厭いませんでした。その冷酷なまでの合理性と人間性の欠如もまた、衝撃的な事実といえそうです。

結末

 事件は解決し、真犯人は逮捕されますが…無実の罪で死刑を宣告された男は、救われることなく、命を落としてしまいます。正義は果たされたものの、すべてが報われたわけではない、という後味の悪さが残ります

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