ドラマ化もされた中山七里さんのミステリー小説『嗤う淑女』は、美貌と巧みな話術で人々を操る悪女・蒲生美智留(がもう・みちる)のゾクゾクするような物語です!この記事では、あらすじ、小説の特徴、感想、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
地味な中学生・野々宮恭子はいじめに遭っていた。そんな彼女の前に現れたのは美貌の従姉妹・蒲生美智留。美智留よって恭子はいじめから救い出される…。美智留は巧みな話術で周囲の人々を操り、自らは手を汚さずに、横領、殺人、保険金詐欺といった悪事を重ねていく。美智留を追う刑事たち、彼女の過去と犯行の真相、そして物語は衝撃的な結末を迎える。
小説の特徴
- スピーディーな展開:無駄のない文章とスピーディーな展開!
- 悪女の圧倒的な存在感:美貌、知性、そして冷酷さを兼ね備えた美智留は、まさに悪女の中の悪女!
- 現代社会の闇:いじめ、家庭崩壊、拝金主義、自己責任論など、社会問題も読み取れる
- どんでん返し:読者の予想を覆す驚愕の展開!伏線回収!!
こんな人にオススメ
スリリングな展開と予想を裏切るどんでん返しを求める方におすすめです!
- 悪女に興味がある!
- スピーディーな展開と予想を裏切るどんでん返しを楽しみたい!
- 社会問題などのテーマは気にならない!
読む順番
『嗤う淑女』はシリーズ第一弾です。このシリーズの読む順番は別のページにまとめています!
感想
男女を問わず、様々な人物の心を魅了し、思い通りに操る美智留が怖いです…怖すぎます。「ゾワゾワとした恐怖」という表現がピッタリだと思いました。美智留のキャラクター造型がすごくて、美貌、知性、冷酷さ、そして狂気が、物語全体を支配していたと思います。なかなか忘れがたい存在でした。あとは、読んでいて『白夜行』や『火車』の雰囲気に似ているなと思ったりもしました。
美智留の悪事は決して許されるものではありませんが、彼女が背負う過去や、彼女を取り巻く社会の歪みを知ることで、複雑な感情が湧き上がってきたりもします。中山さんらしい作品で、ラストのどんでん返しは衝撃的でしたし、私はいろいろと深く考えさせられたりもしました。
高評価のポイント
- 圧倒的な読みやすさ
読みやすいです。無駄のない文章で、展開も早いので、つまづくことなくスラスラと読めました! - 悪女の魅力:
美貌、知性、そして冷酷さを兼ね備えた美智留の強烈な印象!美智留の行動原理や心理を読み解けば、人の心の闇を理解できる…かもしれません - 社会派
いじめ、家庭崩壊、拝金主義、自己責任論など、現代社会が抱える問題が巧みに織り込まれていると思います! - 衝撃のどんでん返し
中山七里さんの代名詞ともいえそうなどんでん返しが終盤に待ち受けています!
低評価のポイント
- グロ注意
グロテスク描写があります(気にならない人も結構いると思いますが、低評価なポイントとして紹介しています) - 動機の不明確さ
この作品には美智留の動機が十分に描かれていないかもしれません…よくいう動機が弱いというやつですね - 既視感のある設定
過去の作品との類似性がないわけではないかもしれません…『悪女を主人公としたミステリー』としては新しさが感じられないかも - 展開
物語の展開に無理があると感じる場合もありそうです
ネタバレ
美智留は逮捕されます。そして美智留は法廷で、実は自分は整形手術を受けた恭子であり、美智留は既に亡くなっていると発言します。ところがどっこい、本当は、恭子として法廷に立っていたのは美智留自身でした。結果的に美智留は全てを欺き、自らの過去を消し去って、自由を手に入れたようです。
野々宮恭子の事件
- 概要:中学生の野々宮恭子は、実父・典雄から長年にわたる性的虐待を受けていた。従姉妹の蒲生美智留に打ち明けたところ、美智留は恭子に「お父さんを殺 して、自由になりなさい」と唆す。恭子は美智留の指示に従い、典雄を殺害し、自殺に見せかける
- 真相: 表向きは典雄の自殺として処理されているが、前述の通り、実際は恭子と美智留による計画的な殺人
- 犯人: 野々宮恭子(実行犯)、蒲生美智留(教唆犯)
- 動機:
- 野々宮恭子:性的虐待からの解放、美智留への依存心
- 蒲生美智留:父親への憎悪、恭子を操ることで優越感を得るため
- 手口:
- 恭子は美智留の指示に従い、典雄を睡眠薬で眠らせた後、首を絞めて殺害
- 典雄の死体を、自殺に見せかけるように偽装工作を行った
鷺沼紗代の事件
- 概要:銀行員の鷺沼紗代は、仕事のストレスから買い物依存症になり、多額の借金を抱えていた。高校時代の同級生・野々宮恭子から紹介された蒲生美智留に相談したところ、美智留は紗代に架空口座を利用した横領を提案。紗代は言われるがままに会社の資金を横領し、借金を返済する。しかし、その後も浪費癖が止まらず、横領額は増え続ける。美智留は、紗代に未公開株への投資を持ちかけ、横領した金を騙し取る。全てを失った紗代は、駅のホームから飛び降り自殺する
- 真相:紗代の自殺は、美智留が仕組んだ偽装殺人。美智留は紗代を自殺に見せかけて殺害し、横領した金を奪い取った
- 犯人: 蒲生美智留(実行犯、計画犯)、鷺沼紗代(横領)
- 動機:
- 蒲生美智留:横領した金を奪い取るため、邪魔者を排除するため
- 鷺沼紗代:美智留への依存、借金苦からの脱却
- 手口:
- 美智留は、紗代に架空口座の開設方法や横領の手口を教え、犯罪を実行させた
- 美智留は、紗代に未公開株への投資を持ちかけ、金を騙し取る
- 美智留は、紗代が自殺する直前に接触し、ホームから突き落とした
家族殺害事件
- 概要:野々宮恭子の弟・弘樹は、就職活動に失敗し、家業の産業廃棄物処理の工場を手伝っていた。将来への希望を持てず、家族からも見下されていると感じていた弘樹は、美智留に相談するうちに、彼女に心酔していく。美智留は、弘樹に「お姉さんはあなたを奴隷のように扱っている」「お父さんはあなたをバカにしている」などと吹き込み、家族への憎悪を煽る。そして、弘樹は美智留の指示に従い、姉・恭子と父・孝之を殺害し、遺体を焼却炉で焼却する
- 真相:弘樹が美智留に操られ、家族を殺害
- 犯人:野々宮弘樹(実行犯)、蒲生美智留(教唆犯)
- 動機:
- 野々宮弘樹:家族への不満、美智留への愛情?
- 蒲生美智留:恭子を排除するため、自身の過去を隠蔽するため
- 手口:
- 美智留は、弘樹の劣等感を刺激し、家族への憎悪を煽る
- 美智留は、弘樹に殺害方法を教え、犯罪を実行させる
夫殺害事件
- 概要:主婦の古巻佳恵は、リストラされた夫のことで悩んでいた。生活プランナーを名乗る美智留に相談したところ、美智留は佳恵に多額の生命保険をかけて 夫を殺害することを提案。佳恵は、美智留の指示に従い、夫に多額の保険金をかけ、飲酒後に自動車事故に見せかけて殺害する
- 真相:佳恵は美智留に唆され、保険金目的で夫を殺害
- 犯人:古巻佳恵(実行犯)、蒲生美智留(教唆犯)
- 動機:
- 古巻佳恵:経済的な困窮、美智留への依存
- 蒲生美智留:自身の計画を遂行するため、佳恵を操る
- 手口:
- 美智留は佳恵に保険金殺害の手口を教え、犯罪を実行させた
裁判
- 概要:警察は、古巻佳恵の事件から蒲生美智留の関与を疑い、過去の事件との関連性を捜査。その結果、美智留を逮捕・起訴する
- 真相:裁判で美智留は、自分が蒲生美智留ではなく、整形手術で顔を変えた野々宮恭子であると主張。整形外科医の証言もあり、無罪判決を勝ち取る。しかし 、実際には美智留は整形手術を繰り返し、身分を偽っていた。
- 犯人: 蒲生美智留(詐欺、偽証)
- 動機:
- 蒲生美智留:過去の犯罪から逃れるため、新たな人生を歩むため
- 手口:
- 美智留は、整形手術を繰り返し、顔を変える。整形手術を行った医師を証人として呼び、その証言を得る
- 美智留は、弁護士や証人を操り、裁判を有利に進める
- 美智留は、骨髄移植を利用して、DNA鑑定を欺く
- 弘樹がパックをして顔が分からなかったため、姉の恭子を殺してしまったと証言する
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