『高名な依頼人(高名の依頼人)』は悪い男と恋に落ちてしまった令嬢を説得するエピソードです。原作は1925年に発表されました。「高名な依頼人」「高名の依頼人」と訳されます。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1925年2-3月発表 (ストランド) |
発表順 | 54作品目 (60作中) |
発生時期 | 1902年9月3日~ 9月16日 |
発生順 | 53件目 (60作中) |
あらすじ
ホームズとワトスンがトルコ風呂で寛いでいると、ある手紙が届いた。差出人はジェームズ・デマリー卿で、内容は特別な依頼のためにベーカー街を訪れる、というものだった。
デマリー卿は自ら指定した時刻ちょうどにベイカー街へとやってきた。依頼はド・メルヴィル将軍の娘であるヴァイオレットとグルーナー男爵の婚約を破棄させるというもので、ヴァイオレットはグルーナー男爵に騙されているという。グルーナー男爵は、ヨーロッパ大陸で女性に対する様々な悪事を働いており、その中には、元妻への殺害疑惑も含まれていた。
デマリー卿は代理人に過ぎず、依頼人は非常に高名かつ身分の高いお方だという。ホームズは、その高名なお方の名前を聞き出そうとするのだが、デマリー卿は頑なに匿名を希望し、ついに依頼人の名前を明かすことはなかった。
依頼を受けたホームズは、グルーナー男爵と直接対峙し、話をつけようとするのだが、グルーナーは一切応じなかった。それどころか、ホームズと似たような調査をしていたフランスのルブランという探偵が酷い目に遭って不自由な体になったと話し、ホームズに“警告”するのだった。
男爵のもとから立ち去った後、ホームズは情報屋のシンウェル・ジョンソンと接触する。そして、キティ・ウィンターという女性を紹介される。キティは、グルーナー男爵から危害を加えられた女性の一人だった。
ホームズは、キティにヴァイオレットを説得させるつもりだったのだが、途中でグルーナー男爵が持っているという日記を盗む計画に変更する。キティによれば、その日記は、グルーナー男爵が自ら書き記しているもので、その中には、これまでに男爵に遊ばれた女性が書き留められているという。
ところがある日、ホームズは2人組の暴漢に襲われてしまうのだった。
ネタバレ
暴漢に襲われ大怪我が負ったホームズは、徐々に回復していく。しかし、グルーナー男爵を欺くために、瀕死であるかのようにみせます。
そして、グルーナー男爵の渡米を報道で知ったホームズは、ワトスンに中国陶器の知識を蓄えるよう頼む。その翌日、ワトスン博士は中国陶器の収集家に変装して、グルーナー男爵の屋敷へと向かう。のコレクションである中国陶器について予習するように頼みました。そして、翌日、ワトスンはヒル・バートンという中国陶器のコレクターに変装してグルーナー男爵の屋敷へと向かう。
真相解説
ワトスン博士は中国陶器のコレクターに変装して、隙をみて日記を盗み出すつもりでしたが、グルーナー男爵に正体がバレてしまいます。しかしそこに、負傷したホームズが現れ、さらに、キティも現れて、キティがグルーナー男爵の顔面に硫酸をかけます。
硫酸をあびた男爵は悪態をつきながらのたうち回り、ワトスン博士が応急処置をします。その後、ホームズとワトスンはベイカー街へと戻り、ホームズが、グルーナー男爵の日記をワトスンにみせます。
日記は代理人のデマリー卿に渡り、後日、グルーナー男爵とヴァイオレット嬢の婚約取り消しが報道されます。
依頼人の正体
依頼人の正体はイギリス国王のエドワード7世だと考えられています。すなわち、公爵や伯爵などの貴族よりも偉い王族ということになります。なお、原作小説でもドラマでも、依頼人が誰なのかは最後まで明かされません。原作小説では、デマリー卿が馬車の紋章を隠したという描写があり、この紋章がドラマではイギリスの国章になっていました。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1991年3月21日に放送されました。シーズン5の第5話(48分)となります。
項目 | 内容 |
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シーズン | 5 |
話数 | 5 |
放送順 | 31 |
長さ | 52分 |
放送日(英) | 1991年3月21日(木) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作とドラマのストーリーは概ね同じです。しかし、細かな違いはいくつかあります。まず、ドラマでは、キティが男爵に硫酸をかけられたことになっていますが、原作にこのような記述はありません。ジョンソンとキティが襲われるシーンも、ドラマオリジナルです。
感想
どんなに評判の悪い人であっても、愛してしまったのなら、その人を信じるしかないよね?みたいなことを、ヴァイオレット嬢は考えていたのだと思います。なんだかよくわからん探偵(シャーロック・ホームズ)が現れて、いろいろ言ってきましたが、それよりも、結婚しようとする人を信じるのは当然のことのように思います。もしもグルーナーが無実の男性ならば、とても美しい愛なのかもしれません。
考察
結婚を阻止するという依頼で、ホームズとグルーナー男爵の対決が見どころだったと思います。犯人がわかっている(グルーナー男爵が極悪人だということがわかっている)ため、倒叙のような物語になっていました。平和的な解決、とはなりませんでしたが、ラストのキティの登場に意外性があったと思います。
まとめ
シャーロック・ホームズの「高名の依頼人」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。ホームズが依頼を受け調査するという流れで、依頼人に特徴がありました。
- 発端依頼人の代理人がホームズを訪ねる
代理人がある令嬢と男爵の婚約を取りやめさせるよう依頼する - 展開ホームズが男爵のもとへ
情報屋を通じてホームズが男爵の被害者であるキティと知り合う
キティがホームズに男爵の“女日記”を教える - 結末ホームズが襲われてしまう
女日記を奪うためワトスン博士が変装して男爵の屋敷へ向かう
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。シャーロック・ホームズとワトソン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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グルーナー男爵 Baron Gruner |
元妻の殺害を疑われるなど評判の悪い男爵 女性について綴った日記を奪われ婚約は取り消される |
キティ・ウィンター Kitty Winter |
グルーナー男爵の被害者 復讐のため、男爵に硫酸をかける |
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