『這う人(這う男)』は、大学教授がおかしくなってしまう話です。原作は1925年に発表されました。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1925年2-3月発表 (ストランド) |
発表順 | 54作品目 (60作中) |
発生時期 | 1902年9月3日~ 9月16日 |
発生順 | 53件目 (60作中) |
あらすじ
プレスベリー教授の助手であり、教授の娘と婚約中のトレバー・ベネットが相談のためホームズを訪ねてくる。相談の内容はプレスベリー教授の奇行についてだった。
妻を亡くした教授は、最近、61歳でありながら、とても若いアリス・モーフィーと婚約した。婚約自体に特に問題はないのだが、教授の異変は、その頃から始まったという。
ある日、教授は誰にも行き先を告げずに2週間ほど外出した。どうやらプラハへ行っていたらしいのだが、帰国後、教授は、これまでと違い、ベネットに特定の手紙の開封を禁じるようになった。さらに、教授がプラハから持ち帰った木箱にベネットが触れると、ひどく激怒したという。
九日おきに、愛犬が教授に噛みついたこともあった。以来、愛犬が教授を襲ってしまうことがあるため、愛犬は鎖につながれている。近頃は、教授の性格も変わり、不思議なことに教授が若く健康になっていた。極めつけは、教授が廊下を這うようにして移動する姿を目撃したことである。さらに、教授の娘であるイーディスは、自宅の三階で寝ていたときに、窓にはりつく教授の姿をみたという。
その後、ベネットがホームズに、ある手紙の宛先を伝える。それはドラークという男性で、教授のプラハ旅行に関連しているようだった。ホームズはこの人物について調べ、ドラークが老人で雑貨店を経営していることなどの情報を掴む。ホームズは、さらなる調査のため、イーディス・プレスベリーの寝室の窓、すなわち、夜中に教授がはりついていた窓も調べる。そして、壁をよじ登る手段が、つる植物をつたう以外にないことを知る。
ネタバレ
ホームズは、プレスベリー教授がプラハで薬を服用して依存症になったと推理する。薬の服用は、おそらく、九日おきだったに違いない。その直後に、ホームズとワトスン博士は猿化した教授を目撃することになる。
プレスベリー教授は自宅から出てきて、四つん這いで走り回り、つるを登ったりしていた。すると今度は、鎖に縛られた愛犬にちょっかいを出し始める。だが、凶暴化した愛犬に襲われ、やっつけられてしまう。近くにいたホームズとワトスンは、ベネット氏と共に犬から教授を引き離し、手当を始めるのだった。
真相解説
プレスベリー教授は若い女性との結婚を控えていたため、若返ろうとしていました。依頼人のベネットが触れた木箱には、若返り用の薬と手紙が入っており、この手紙から、若返りという動機が判明します。なお、教授が使った薬は尾長猿の体液でした。つまり、教授は猿の体液を体に取り込んだため、猿になってしまいました。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1991年3月28日に放送されました。シーズン5の第6話(50分)となります。とてもリアルなゴリラらしき霊長類が登場しますが、これは、人が演じているようです。
項目 | 内容 |
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シーズン | 5 |
話数 | 6 |
放送順 | 32 |
長さ | 50分 |
放送日(英) | 1991年3月28日(木) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作とドラマで、大筋は同じですが、違いがいくつかあります。まず、ドラマでは猿の盗難事件が発生していますが、この事件はドラマオリジナルで原作小説には全く登場しません。ワトスンやホームズが怪しい商店へ向かうというのも原作にはない描写となります。
事件の発端にも違いがあり、原作小説は教授の様子がおかしいという依頼でしたが、ドラマは窓に変な人物がはりついていたから調べて欲しい、という依頼内容になっています。そのため、ドラマでは、何やら異変は起きているが、教授のしわざかどうかははっきりしない状況になっています。
また、ドラマにはレストレード警部が少し登場していましたが、原作には登場しません。
感想
ホームズシリーズの中で最もナンセンス(馬鹿げた)な話と言われているようですが、内容は、特殊設定ミステリー、もしくは、ホラーやSF要素を含んだミステリーだったと思います。動物の体液を摂取して猿になった教授が犯人、というのは荒唐無稽な感じもしますが、ぶっ飛んでて、むしろ面白かったですし、そういったミステリー作品は、結構あると思います。
とはいえ、リアリティのある事件を扱ってきたホームズが、猿化した人間と戦うというのは、パスティーシュやパロディっぽい作品ではあると思います。様々な意見があるとは思いますが、個人的に、ドラマで教授が猿になって暴れているシーンは、もう一度みたくなる名シーンです。おもしろすぎます。しかも、動機が若い女性と結婚するためです。その気持ちは、なんとなくわかる気もします。
考察
猿の体液を取り込んで、猿並みの身体能力を発揮するというのは、現実離れしている気がします。当時は信じられていたようなので、現代風に言い換えると、iPS細胞をつかったキメラ人間が犯人だった、という感じではないかと思います。そんなことがあり得るかどうかは、専門家でないと判断が難しいです。
まとめ
シャーロック・ホームズの「這う人」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。ホームズが依頼を受け調査するという流れでした。
- 発端[原作]依頼人がプレスベリー教授について相談する
[ドラマ]依頼人が窓にはりついた男などについて調査を依頼する - 展開ホームズとワトスン博士が調査を始める
教授の屋敷へと向かう - 結末教授がドラークとやり取りしていることに気付く
ホームズとワトスンが豹変した教授の姿を目撃する…
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。シャーロック・ホームズとワトソン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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プレスベリー教授 Professor Presbury |
61歳で若い女性と婚約する 若返るために猿の体液を摂取し猿になってしまう |
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