『修道院屋敷(アベ農園)』は、押し入り強盗に殺された男性の事件です。原作は1904年に発表されました。作品が収録された短編集「シャーロック・ホームズの帰還」は1905年に発行されました。修道院屋敷以外に、僧坊荘園、アベ農園、アベイ農場などのタイトルもあります。原題は“The Abbey Grange”ですが、アベと読む場合もあるようです。
項目 | 内容 |
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発表 | 1904年9月発表 (ストランド) |
発表順 | 39作品目 (60作中) |
発生時期 | 1879年1月23日 |
発生順 | 42件目 (60作中) |
あらすじ
冬のある朝、スタンリー・ホプキンス警部からブラッケンストール卿殺人事件の捜査協力要請を受けたホームズはワトスンと共に修道院屋敷へと向かっていた。その屋敷では、前夜、主人のユースタス・ブラッケンストール卿が押し入り強盗に襲われ死亡するという事件が発生していた。
屋敷に到着したホームズは、死んだユースタスの妻でオーストラリア人のメアリー・ブラッケンストールに事情を尋ねる。夫のユースタスは酒癖が悪く二人の結婚生活は不幸だったという。そんな彼女も事件の被害者で、彼女はダイニングルームへと侵入した3人の男に口をふさがれ拘束されてしまう。物音に気づいたユースタスがその場に駆け付けたのだが、ユースタスは強盗に火かき棒で殴られて死亡する。その後、強盗達はワインを飲み、いくつか銀食器を奪って逃走した。メアリーいわく、その強盗は巷で有名な強盗団に違いないとのことだった。メアリーの話を聴いた後、ホームズは幼い頃からメアリーのメイドだったテレサにも話を聴くが、事件について彼女はほとんど何も知らない様子だった。
強盗団の犯行ということで決着がついているらしい事件に呼び出されたホームズは腹を立てて帰途につく。しかし途中で様々な疑問を抱くことになる。例えば、ある時間帯であれば呼び鈴を鳴らしても誰も駆けつけないのを押し入り強盗が知っていたということ、強盗団が安価な銀食器だけを盗んだこと、3対1だったにも関わらずユースタスだけ殺害したことなど、腑に落ちない点が多い。そして、強盗が飲んだとされているワイングラスは、なぜか1つだけ滓が入っていた。そういった様々な疑問から、ホームズはメアリーとメイドのテレサが嘘をついたと結論に至る。ホームズは修道院屋敷へと引き返し、再調査を進めようとするのだが、二人の女性は何も語らず、成果は挙がらなかった。
その後、ロンドンに戻ったホームズとワトソンは現場に残されたロープの結び目が船乗りのものであることなどを根拠に船舶営業所を訪れる。そしてそこで、オーストラリアからイギリスへの航海で、メアリーと同じに船に乗っていた乗組員の情報を手にすることになる。
ネタバレ
ホームズはジャック・クロッカーという船長を221B呼び出し問い詰めると、クロッカー船長はついに殺人を認めた。船長は船で偶然見かけたメアリーに恋をしていた。その恋が叶うことはなかったが、しばらくして、メイドのテレサと再会し、メアリーの夫による暴力を知ることになる。船長はメアリーを慰めるために屋敷へと向かいメアリーと再会したのだが、その場に夫のユースタスが現れる。船長はメアリーに暴力を振るわんとするユースタスを止めようとしたのだが、意図せずして、ユースタスを殴り殺してしまう。この状況を隠蔽するため、船長はテレサの協力を得て、強盗団の犯行にみせようとしたのだった。
クロッカー船長はメアリーのことを想い、全ての責任を負うと話す。その言葉に感銘を受けたホームズとワトスンは、強盗団の犯行であるという見解を受け入れ、船長を見逃す決意を固めるのだった。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1986年8月6日に放送されました。シーズン3の第5話(52分)です。
項目 | 内容 |
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シーズン | 3 |
話数 | 5 |
放送順 | 18 |
放送日(英) | 1986年8月6日(水) |
出演者 | キャスト一覧 |
ストーリー
ホプキンス警部はユースタス・ブラッケンストール卿殺人事件についてホームズに協力を求める。ところが、ホームズが修道院屋敷に到着したとき、事件はランダル強盗団の犯行であるという見立てが固まっていた。その根拠は被害者の妻であるメアリーの証言だった。メアリーは犯人一味に拘束され、助けに入ったユースタス卿が殺害されたと話していた。
ロンドンに戻る途中、ホームズは現場に残されたワイングラスに疑問を抱き、引き返すことを決意する。ホームズは修道院屋敷の近くで、メアリーの愛犬に捧げられた石碑をみつける。どうやら、ユースタスがペットをなきものにしたらしい。メアリー自身にもあざがあったのだが、彼女は良い夫だったと主張し続け、ついに、真相を語らなかった。そこでホームズは船会社に問い合わせ、ついにジャック・クロッカーという人物に辿り着く。
ネタバレ
ホームズに電報で呼び出されたクロッカー船長は真相を告白する。船長は、メアリーがアルコール依存症の夫から暴力を受けていたこと、そして、メアリーのことを愛していたことを告白する。事件があった夜、船長は出航が決まったため、メアリーに別れを伝えようとしていた。屋敷で密かに会った二人だったが、その場にユースタスが乱入した。格闘の末、船長はユースタスを殺害してしまった。暴力を受けていたメアリーに殺人の疑いがかからないようにするため、船長はテレサと共謀し、強盗団による犯行を偽装したのだった。
原作とドラマの違い
原作とドラマは概ね同じ内容ですが、異なる部分もいくつかあります。まず、原作小説では、物語の冒頭で夫の暴力というのが明らかになっていますが、ドラマではこの事実が最後まで明らかになりません。
結末も、ホームズが船長を見逃す(ワトスンを陪審員のようにしてホームズが無罪を言い渡す)というくだりは同じですが、ドラマでは、最後、221Bにメアリーがやってきます。そして、船長とメアリーの再会が描かれます。原作小説にこのような描写はないため、ドラマオリジナルのシーンといえます。メアリーに抱きつかれて迷惑そうな表情を浮かべるホームズ、というのもドラマオリジナルです。
感想
僧坊荘園(そうぼうしょうえん)、アベ農園、修道院屋敷などなど、日本語のタイトルがいろいろあります。アベにもまたバリエーションがあり、アビだったり、アビィだったり、アベイだったりしています。英語の発音をカタカタで表記することはできないのではないか、と思えてしまう結果です(そもそも発音記号というのがあるわけですが)。原題はThe Abbey Grangeとなっており、どの訳も、間違いということではなさそうです。
ドラマでは、窓を背景にパイプを吸うシャーロック・ホームズが印象的でした。
考察
ドラマでは伏線が多く登場していました。夫人の最初の証言(夫は酒が云々)、流木などなど、後に、事件とのつながりが明らかになります。ただ、一つだけカスの入ったワイングラスが残っていたという状況が、どういう経緯でそうなったのか、ドラマでは明確に語られていませんでした。経緯は置いておいて、カスの入っていないグラスがあったから瓶から注がれていないワインがある、と考えるのがいいようです。
酒癖の悪い夫による暴力が事件の背景となっています。動機そのものにはなっていなかったと思いますが、現代風に言い換えるならば、DVに悩んだ妻や友人達の犯行となりそうです。
まとめ
シャーロック・ホームズの「修道院屋敷」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。
- 発端ホプキンス警部に捜査協力を依頼される
ホームズとワトスンが修道院屋敷へと向かう - 展開目撃者メアリーに対する事情聴取
強盗団の仕業に違いないということになるがホームズが疑問を抱く - 結末ホームズが船を乗客と乗務員を調べる
ホームズがある人物を221Bに呼び出す
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。主人公であるシャーロック・ホームズとワトスン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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ユースタス・ブラッケンストール Sir Eustace Brackenstall |
被害者 酒癖が悪く妻に暴力をふるっていた |
メアリー・ブラッケンストール Mary Brackenstall |
ユースタスの妻 夫から暴力を受けていた |
クロッカー Captain Croker |
船長 船でメアリーと知り合い恋をし、のちにユースタスを撲殺する |
テレサ・ライト Theresa Wright |
メイド メアリーに長年仕えたメイド |
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