『テスカトリポカ』は佐藤究さんのクライム小説で、麻薬、臓器売買、アステカ神話が複雑に絡み合う、血なまぐさい抗争と運命を描いています。第165回直木三十五賞(直木賞)と第34回山本周五郎賞を受賞した作品でもあります!
あらすじ
アステカの神テスカトリポカを信仰するバルミロは、その教えをビジネスに取り入れ、日本の裏社会で暗躍。無戸籍の少年コシモや、心臓外科医の末永など、様々な人物の運命が交錯しながら展開していく…。
メキシコの麻薬カルテル抗争を生き延びたバルミロ・カサソラは、日本人の闇医者・末永充嗣と出会い、日本で児童の臓器売買ビジネスを始める。アステカの神『テスカトリポカ』を信仰するバルミロは、ビジネスを拡大しながら、日本の裏社会で暗躍。無戸籍の少年コシモや、心臓外科医の末永など、様々な人物の運命が交錯しながら展開していく…。
小説の特徴
アステカ文明、麻薬、臓器売買といった要素を組み合わせた、他に類を見ない独特な世界観が特徴のひとつです。暴力的でグロテスクな表現が多く、読者を選びそうです。それでも、登場人物の個性が際立っており、特にコシモとパブロの関係性に心を掴まれます。
感想
暴力的な描写が多いものの、物語の構成や人物描写が巧みで、読後感は重く、考えさせられるものがあります。アステカ神話と現代社会の闇を組み合わせた独特の世界観は非常に強い印象を受け取りました。ストーリー展開や結末については、読者の評価が分かれそうです。
ポジティブな感想
- ストーリー展開がおもしろい!特に中盤以降の展開に引き込まれます
- アステカ文明とクライムストーリーの融合という、独特な世界観がいいです
- 登場人物の造形が魅力的です!特にコシモとパブロの関係性!
- 暴力描写やグロテスクな表現があるものの…それを上回る物語の力があります
- 読み応えがありながらも一気に読んでしまえそうな物語です
ネガティブな感想
- 暴力描写が過激で不快感を覚えそう…
- 物語の展開が唐突かもしれないです。終盤は駆け足気味で、感情移入しにくいかも…
- 登場人物に共感できないですね
- 登場人物が多い…序盤は人物の把握が難しい
- 結末があっけなく、期待外れだったという感想が見られます。
- アステカ神話に関する記述が冗長
ネタバレ注意
バルミロは、日本で新たな臓器売買組織を築き上げますが、次第に内部の裏切りや抗争によって追い詰められていきます。コシモは、バルミロに育てられながらも、パブロとの出会いを通じて自分の生き方を見つめ直します。物語の終盤で、コシモはバルミロを倒し組織は崩壊。コシモはパブロの遺志を継ぎ、パブロの娘にペンダントを渡します…。物語の流れを簡単にまとめるとこんな感じでしょうか。
- メキシコ
麻薬カルテル『ロス・カサソラス』の幹部バルミロは抗争で家族を失う
バルミロは、アステカの神『テスカトリポカ』を信仰する祖母から教えを受け復讐を誓う - インドネシア
バルミロは、逃亡先のジャカルタで闇医者・末永と出会う
末永は心臓移植の技術を持つが、医療業界を追放されていた
二人は互いの再起のため、日本で臓器売買ビジネスを始めることを決意 - 日本
バルミロと末永は川崎市を拠点にNPO法人『かがやくこども』を隠れ蓑にして、児童の臓器売買ビジネスを始める
バルミロは施設で育つコシモの才能を見出し、殺し屋として育て上げる
コシモはパブロからナイフ製作の技術を教わり、心の支えを得る - ビジネスの拡大と抗争
バルミロがアステカの教えをもとに組織を拡大
心臓移植を必要とする富裕層を顧客として獲得し、ビジネスは成功――しかし、組織内部の裏切りや外部からの圧力により、ビジネスは次第に崩壊していく - ラスト
末永は組織を裏切り、バルミロを殺そうとする
コシモは、パブロの教えを守り、末永を倒す
バルミロは、コシモにテスカトリポカの真実を伝え、息絶える
コシモは、パブロの娘にペンダントを渡し、過去と決別する
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