「放課後の体育館で、一体何が起こったのか」――鮎川哲也賞受賞作!青崎有吾さんのデビュー作『体育館の殺人』であり、〈裏染天馬〉シリーズ1作目でもあるこのミステリー小説のあらすじや感想などをご紹介します!
あらすじ
6月――梅雨の時期。風ヶ丘高校の旧体育館のステージ上で、放送部部長の朝島友樹が刺殺体で発見され、現場は密室だった。神奈川県警捜査一課の仙堂警部と袴田刑事は、状況から卓球部部長の佐川奈緒に疑いの目を向けるが、袴田刑事の妹である柚乃は納得がいかない…。
登場人物
- 裏染天馬(うらぞめ・てんま)
2年生。百人一首研究部の部室を私物化し生活している変わり者。アニメや漫画が好き - 袴田柚乃(はかまだ・ゆの)
1年生の女子卓球部員。神奈川県警の刑事である袴田優作の妹 - 朝島友樹(あさじま・ともき)
3年生で放送部の部長。被害者 - 正木章弘(まさき・あきひろ)
2年生で生徒会会長 - 八橋千鶴(やつはし・ちづる)
2年生で生徒会の副会長 - 佐川奈緒(さがわ・なお)
2年生で女子卓球部の部長 - 秋月美保 あきづき・みほ)
2年生で放送部に所属 - 針宮理恵子(はりみや・りえこ)
2年生で帰宅部の金髪の少女。 - 早乙女泰人(さおとめ・やすひと)
1年生で吹奏楽部に所属 - 仙堂警部
神奈川県警の刑事
読む順番
〈裏染天馬〉シリーズの読む順番は別のページにまとめています!
感想
論理的な謎解きや個性的なキャラクターが魅力だと思いますが、ロジックについては賛否両論あると思います。作品の特徴しては『アニメネタの多さ』が挙げられますが、ここは好みが分かれそうです(ネタがわからない人にとっては、そもそも、評価ポイントにならないですが…)。アニメ好きには楽しめる要素である一方、そうでない読者にはノイズになりそうですね。
読者層は幅広そうで、ミステリー愛好家からライトノベル読者まで、色んな読者さんがいそうです。全体的に「読みやすい本格ミステリー」という評価を受けているようです。
高評価ポイント
- 緻密なロジック
一本の傘から推理が展開されます!謎を解き明かしていく様やその過程がロジカルで面白いです - 魅力的なキャラクター
探偵役の裏染天馬が個性的なのはもちろん、癖のある登場人物が多いです。登場人物たちの会話が軽快なテンポで進みます - 読みやすさ
文章が読みやすくて、展開が早くて飽きさせず、ミステリー初心者でも楽しめそうです - 意外な展開
最後のどんでん返し…、真相の裏に隠された陰謀…、エピローグまで気が抜けない感じです
低評価ポイント
- 論理の粗さ
ロジックについては否定的な意見もあると思います。強引、展開に無理があるというツッコミですね… - アニメネタの多さ
アニメネタが多いです - その他
- 人ひとりが死んでいるのに、全体的に軽い雰囲気
- 犯行動機が弱い
- キャラクター設定の賛否(アニメオタクという設定について、過剰である、不自然である、あるいは時代錯誤と思えたりする)
- 警察が無能…
- 既視感がある
ネタバレ注意
生徒会副会長の八橋千鶴の助言で、柚乃は学内一の天才、裏染天馬に協力を求めます。天馬は、現場に残された傘を手がかりに推理を展開し、佐川の無実を証明。さらに、放送室の状況や部員のアリバイ調査から、意外な人物が犯人であることを突き止めます。
真犯人
犯人は生徒会長の正木章弘でした。正木はカンニングの証拠写真を朝島に撮られ、口封じのために殺害に及びました。密室トリックは演劇部が使用するリヤカーに隠れて体育館から脱出するというものです。おおまかな流れはこんな感じです。
- 凶器は正木が所持していたナイフ
- 人気のない旧体育館で、正木は朝島を刺殺
- 犯行後、事前に約束していた場所へ朝島の携帯を移動
- 犯人はリヤカーに隠れて体育館から脱出
- 逃走経路はトイレに傘を置き、下手側の扉から演劇部員が運ぶリヤカーに紛れて脱出
- その後、特に騒ぎもなかったことから、何食わぬ顔で現場に戻り事件が発覚したかのように装った
事件の裏には、生徒会長の座を狙う八橋千鶴の策略が隠されていました。八橋は正木のカンニング行為を朝島に告発させ、生徒会長の座を狙っていたようです…。プロローグで犯罪を企てていたのは八橋であり、正木を操り事件を裏で操っていたことを示唆しています。
まとめ
『体育館の殺人』は、本格ミステリーとしての魅力と、個性的なキャラクターによる読みやすさを兼ね備えた作品です。アニメネタが気になる方もいるかもしれませんが、ミステリー好きなら一度は読んでみる価値ありです!
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