有栖川有栖さんの〈学生アリス〉シリーズの中でも、傑作との呼び声が高いらしい『双頭の悪魔』。本格ミステリーとしての完成度はもちろんのこと、複雑に絡み合う人間関係や巧妙な仕掛けも満載の作品です!この記事ではあらすじ、登場人物、感想、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
『孤島パズル』の事件で心に深い傷を負った有馬麻里亜(マリア)は、大学を休学し、四国の山奥にある木更村という閉鎖的な芸術家村に滞在していた。マリアを心配した両親から依頼を受けた英都大学推理小説研究会・EMCのメンバー、江神二郎、望月周平、織田光次郎、そして有栖川有栖は、マリアを連れ戻すために木更村へと向かう。
木更村は外部からの訪問者を極端に嫌う排他的な村だった。アリスたちは、村人との間に生まれた誤解によって、マリアとの面会を拒否されてしまう。それでも諦めきれないアリスたちは、嵐の夜に乗じて木更村への潜入を試みるが、鉄砲水によって村に通じる唯一の橋が崩落。アリスたちは隣の夏森村に取り残され、江神はマリアと共に木更村に閉じ込められてしまう。
外部との連絡手段を失い、孤立した木更村と夏森村。そんな中、それぞれの村で不可解な殺人事件が発生する。木更村では、芸 術家の一人である小野博樹が鍾乳洞の中で奇妙な姿で発見され、夏森村では、東京からやってきたカメラマンの相原直樹が殺害された。江神とマリア、そしてアリスたちは、それぞれの事件を解明しようと奔走する。
登場人物
- 江神二郎: 英都大学推理小説研究会(EMC)の部長。冷静沈着な頭脳と鋭い洞察力を持つ名探偵
- 有栖川有栖: EMCの会員。語り手
- 有馬麻里亜: EMCの会員。前作の事件で心に傷を負い、木更村に滞在
- 望月周平: EMCの会員。経済学部
- 織田光次郎: EMCの会員。経済学部
- 木更菊乃: 木更村の当主
- 小野博樹: 木更村に住む画家
- 香西琴絵: 木更村に住む調香師
- 八木沢満: 木更村に住む音楽家
- 室木典生: 夏森村の郵便局員
- 相原直樹: カメラマン
特徴
- 緻密なロジック
複雑に絡み合った事件の真相が、論理的な思考によって解き明かされていく過程は圧巻 - 魅力的なキャラクター
個性豊かな登場人物たち!江神二郎の冷静さ、アリスたちのコミカルなやり取りなどが魅力 - 読者への挑戦
3度にわたる「読者への挑戦」!読者も推理に参加することで物語への没入感が高まる - 青春要素
アリスとマリアの友情など青春小説のような甘酸っぱさも楽しめます
感想
本格ミステリーとして楽しめる一冊だと思います。本格ならではの緻密なロジックはもちろんですが、登場人物たちの心情描写や、ラストの衝撃的な展開など、ミステリーや物語としての面白さが凝縮されています。火村英生も好きですが、江神二郎もいいキャラしてますね。
噂ですが、タイトルを検索するともれなくトリックが検索ワードに登場することがあるらしいです…。
高評価のポイント
- 論理的な謎解き
論理的に組み立てられた謎解きが素晴らしい!伏線の張り方と回収の仕方も丁寧で、読み終わった後の満足感が非常に高い - 意外な展開
予想を裏切る展開に、最後まで飽きない!ラストは衝撃的!! - 読みやすい文章
文章が読みやすい! - キャラクターの魅力
登場人物が個性的!特に江神二郎の魅力に惹かれた
低評価のポイント
- 動機の弱さ
犯行動機がやや弱いと感じるかもしれません - 長い
そこそこページ数が多いため読むのに時間がかかります…事件が起こるまでの序盤は冗長かも - 既視感
トリックに既視感がないわけではないですね…
ネタバレ
調香師・香西琴絵が交換殺人を仕掛けていました。香西は村の門戸を開放しようとする小野博樹の排除を計画。音楽家の八木沢満(元アイドル歌手・千原由衣の写真を盗撮して恐喝していたカメラマンの相原直樹を恨んでいた)と、郵便局員・室木典生(遺産相続のために木更村の地主・木更菊乃の婚約者である小野博樹を殺害したいと思っていた)に接触し、互いの殺人を依頼します。
香西は八木沢には「小野を殺せば、相原を殺してやる」と、室木には「小野を殺せば、お前の罪を隠蔽してやる」と持ちかけ、 それぞれの殺意を煽り立てます。そして、香西は、八木沢と室木にアリバイ工作の方法や、警察の捜査を撹乱する方法を指南し、計画の実行を促します。
最終的に、木更村で小野と八木沢が殺害され、夏森村で相原が殺されます。小野を殺したのは交換殺人を持ち掛けられた八木沢で、相原を殺したのは室木です。そして香西が口封じのために八木沢を殺しています。
動機
香西は木更村の伝統を守ろうとしており、木更村が外部からの干渉を受け、観光地化されることを恐れていました。小野は、木更村の門戸を開放し、観光客を呼び込むことで村を活性化させようと考えていましたが、香西は、それが木更村の伝統を破壊する行為だと考えていたようです。そこで、香西は小野を殺害することで、木更村の観光地化計画を阻止しようとしていました。
江神とアリスについて
本作では、江神の過去についても触れられています。彼の母親は占い師であり、江神が30歳までに死ぬという予言を残していまし た。アリスとマリアの関係も気になるところですね。
読者へのオススメ
『双頭の悪魔』を読んだ方には、ぜひ有栖川有栖さんの『女王国の城』もオススメします。学生アリスシリーズの続編です!
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