『サイレントヒル3』はコナミが2003年7月3日にPlayStation 2向けに発売したホラーゲームです。シリーズ第3作目にあたり、初代『サイレントヒル』の直接的な続編という位置づけになっています。物語は、主人公の少女ヘザー・メイソンが悪夢のような異世界に巻き込まれることから始まります。そして彼女は自身の出生の秘密と、サイレントヒルに根差すカルト教団の陰謀に立ち向かうことになります。
あらすじ
ヘザー・メイソンは――血まみれのウサギの着ぐるみが倒れる遊園地をさまよい、異形のクリーチャーに襲われ、ジェットコースターに轢かれる――ショッピングモールでそんな奇妙な悪夢から目覚める。
目覚めた後、父ハリーに電話をかけるヘザーの前に、私立探偵のダグラス・カートランドが現れ、彼女の出生に関わる人物に会わせたいと告げる。ヘザーはダグラスを振り切り、人気のないショッピングモールへと逃げ込むが…そこは異形のクリーチャーが徘徊する悪夢のような世界へと変貌していた。
ブティックで拳銃を拾い、クリーチャー「クローサー」を撃退したヘザーは、謎の女性クローディア・ウルフ出会う。クローディアはヘザーに「始まりを迎えようとしている。思い出して、本当のあなたを」と話すと、ヘザーは激しい頭痛に襲われる。気付くとクローディアは姿を消していた。
その後、ダグラスと再会したヘザーは、彼もこの異変に巻き込まれていることを知る。ダグラスはクローディアに雇われてヘザーを探していたと話すが、ヘザーは彼を信用せず、自宅へ帰るために地下鉄へと向かう。だが、地下鉄もまたクリーチャーの巣窟と化していた。
地下鉄を抜け、下水道、建設中のビルを経て、ヘザーは雑居ビルにたどり着く。そこで、バスタブから血が溢れ出す異様な光景を目にし、再び激しい頭痛に襲われ、意識を失う。目覚めると、そこは壁や物が錆びつき、金網が張り巡らされた〈裏世界〉だった。
この裏世界で、ヘザーは謎の青年ヴィンセント・スミスと出会う。ヴィンセントはヘザーの過去や、彼女の父ハリーのことを知っているようだが、ヘザーは彼を信用できずにいた。
裏世界から表世界に戻ったヘザーは、ようやく自宅アパートに到着する。しかし、そこで彼女を待っていたのは、血まみれで絶命した父ハリーの姿だった。
悲しみに暮れるヘザーは、血痕を辿って屋上へ向かい、そこでクローディアと再会する。クローディアはハリーを殺害したことを認め、「17年前の復讐」と「ヘザーに憎悪を抱かせるため」だと告げる。そして、ハリーを殺したのはミショナリーというクリーチャーだと指差し、サイレントヒルで待っていると言い残してその場から立ち去る。
ヘザーがミショナリーを倒して部屋に戻り、そこにいたダグラスと共にハリーを弔う。そして復讐のため、サイレントヒルへ向かうことを決意する――。
ネタバレ
ヘザーはサイレントヒルへ向かう車中で、ハリーが残した手記を読みます。そして、自身の出生の秘密とサイレントヒルで起きた事件の全貌を思い出します(『出生の秘密』と『サイレントヒルで起きた事件』というのは、初代サイレントヒルで描かれた内容です。詳しくはサイレントヒル1|ネタバレ徹底解説【あらすじとストーリーなど】にまとめています)。
ヘザーの正体は、17年前に教団の儀式で〈神〉を宿したアレッサ・ギレスピーと、その半身であるシェリル・メイソンが融合し、ハリーに託された赤ん坊でした。ハリーは教団の目を欺くため、彼女にヘザーという偽名を与え、金髪に染めて育てていました。
なお、謎の女性クローディアの目的は、アレッサの生まれ変わりであるヘザーを新たな母体として〈神〉を再誕させ、地上に楽園を築くことにあります。
サイレントヒルに到着したヘザーは、クローディアの父であるレナード・ウルフを探すため、ブルックヘイブン病院へ向かいます。そして、裏世界で異形のクリーチャーと化したレナードを倒し、彼が守っていた『メトラトンの印章』が刻まれた石を手に入れます。病院を後にしたヘザーは、クローディアがいる教会へ向かうことになります。
遊園地を通り抜けようとすると、ヘザーは再び激しい腹痛に襲われ、あたりは悪夢のような裏世界へと変貌します。これは、ヘザーの負の感情を吸収した〈神〉の兆候でした。
遊園地では、探偵のダグラスが雇い主であるクローディアと対峙します。このときダグラスは足を負傷してしまいます。ヘザーはダグラスに休むよう告げ、ひとりで教会へと向かいます。
結末
ヘザーは礼拝堂でクローディアと対峙します。
クローディアはヘザーの中に眠るアレッサに語りかけ、ヘザーはアレッサとしての記憶を取り戻します。そんなヘザーは楽園など望んでおらず、父を殺したクローディアへの憎しみを爆発させることになります。ヘザーの憎しみを糧に〈神〉が成長していることを確認したクローディアは、教会の奥へと消え去ります。
ヘザーが後を追うと、クローディアがヘザーの体から〈神〉を誕生させようとします。ヘザーは父ハリーから貰ったペンダントを開け、中に入っていた赤い結晶アグラオフォティスを飲み込みます。これにより、ヘザーは体内の〈神〉を不完全な形で吐き出します。
〈神〉再誕の計画を打ち砕かれたクローディアは、その不完全な〈神〉を自ら飲み込み、体を変色させながら地中へと引きずり込まれていきます。ヘザーがクローディアを追って穴に飛び込むと、そこにはクローディアの亡骸と、彼女を母体として誕生した巨大で不完全な〈神〉がいました。ヘザーは悲しみと怒りを胸に、神(ラスボス)と戦い、倒します。
全ての戦いを終えたヘザーは、遊園地で待つダグラスの元へ戻ります。ダグラスが「終わったのか?」と尋ねると、 ヘザーはナイフを構えて彼に近づき、「まだあなたが残ってる」と冗談を言います。ダグラスが狼狽する中、ヘザーは笑顔を見せ、もう偽名を名乗る必要がなくなったことを告げます。そして、父がつけてくれた本名「シェリル」として生きていくことを決意します。
登場人物
主な登場人物について簡単に紹介します。ネタバレを含む内容になっています。
ヘザー・メイソン
主人公。17歳の少女で、養父ハリーを深く慕っている。口が悪く強気な一面もありますが、根は優しい性格。その正体は、初代『サイレントヒル』の事件で〈神〉を宿したアレッサ・ギレスピーと、その半身であるシェリル・メイソンが融合し、生まれ変わった赤ん坊です。教団の追跡を避けるため、金髪に染め、偽名ヘザーを名乗っていました。ハリーから教わったサバイバル術を駆使して、異世界での困難に立ち向かいます。
ハリー・メイソン
『サイレントヒル(初代)』の主人公。ヘザーの養父。17年前の事件後、教団から身を隠すためにヘザーと共に生活していたが、物語の序盤でクローディアの刺客ミショナリーによって殺されてしまう。ハリーが残した手記や、ヘザーに託したペンダントに仕込まれたアグラオフォティスが、ヘザーを救う重要なアイテムとなる。
クローディア・ウルフ
教団の聖女派に属する司祭で、ダリア・ギレスピー(初代サイレントヒルの登場人物)の後継者。29歳。幼少期に父レナードから虐待を受け、同じように虐待されていたアレッサを姉のように慕っていた。その経験から、苦しむ人々を救うために〈神〉を誕生させ、地上に楽園を築くことを妄信している。
ダグラス・カートランド
50代の初老の私立探偵。クローディアに雇われてヘザーを探し、自身も異変に巻き込まれる。ハリーが殺された後、教団に協力してしまった罪悪感と責任感から、ヘザーの復讐に協力する。過去に息子を失った経験があり、ヘザーを娘のように感じている。最終的にヘザーと共にサイレントヒルから生還する。
ヴィンセント・スミス
クローディア同様、教団に属する司祭だが、クローディアの派閥とは対立している。20代後半の皮肉屋で、他人を見下すような言動 が目立つ。現世での実利を追求しており、クローディアの楽園思想には懐疑的。ヘザーの過去を知る人物で、彼女を言葉巧みに操り、クローディアとの共倒れを画策する。しかし、クローディアに刺されて死亡する。
アレッサ・ギレスピー
ヘザーの前世(『サイレントヒル(初代)』のキーパーソン)。幼少期に教団の儀式で〈神〉を宿し、全身に大火傷を負いながらも生き長らえた。学校ではいじめを受け、家庭では母ダリアから虐待を受けている。本作では、ヘザーの記憶や妄執として度々登場。ヘザーの前にメモリーオブアレッサとして立ちはだかることもある。
エンディング
『サイレントヒル3』には、プレイヤーの行動によって分岐する3種類のエンディングが存在します。
Normalエンド
最も一般的なエンディングです。
全ての事件に決着をつけたヘザーが、遊園地で待つダグラスの元へ戻ります。ヘザーはダグラスにナイフを向けて冗談を言い、彼を驚かせます。そして、もう偽名を名乗る必要がなくなったことを告げ、父ハリーがつけてくれた本名シェリルとして生きていくことを決意します。そして、ハリーの墓の前で佇むシェリルの姿で物語は終わります。
Possessedエンド
「憑依」を意味するバッドエンディングです。このエンディングでは、戦いに勝利したヘザーが、倒したはずの〈神〉に憑依されてしまいます。血まみれのナイフを手に、ダグラスの刺殺体の前で佇むヘザーの姿が描かれ、悲劇的な結末を迎えます。
エンディングの条件を簡単に紹介すると、多くの敵を殺害する、自身も多くのダメージを受ける、終盤で負傷したダグラスの様子を見に戻らない、最終ステージで特定の選択肢を選ぶなどが挙げられます。
Revengeエンド(UFOエンド)
シリーズ恒例の隠しエンディングです。このエンディングでは、自宅に戻ったヘザーを、死んだはずの父ハリーと宇宙人、そして前作の主人公ジェイムスが迎えます。ハリーはヘザーの報告を聞いて激怒し、UFO軍団を率いてサイレントヒルに総攻撃を仕掛け、街を瞬く間に壊滅させてしまいます。サイレントヒルの歌が流れる中、瓦礫と化した街の光景が映し出され、ゲームは終了します。
特定の隠し武器(ヘザービームやセクシービーム )で一定数以上の敵を倒し、武器を何も装備せずに自宅に戻るという特殊な条件を満たすと発生します。
感想
『サイレントヒル3』は『サイレントヒル1』の続編です。1のエンディング後の世界が描かれており、初代の物語を深く掘り下げた作品だといえます。『サイレントヒル2』はというと、これは別の世界の話になっており、直接的なつながりはないです。
初代のファンはもちろんのこと、心理的恐怖と深いストーリーを求めるホラーゲームファンにとって、楽しい一作であるのは間違いないと思います。教団の歪んだ思想など、考察の余地も多いです。
考察
サイレントヒルに登場する教団は、古くからこの地に根付く土着宗教とキリスト教の教義が混ざり合った、独自の信仰体系を持っています。彼らは神の降臨によって地上に楽園を築くことを最終目的としていますが、その手段は非常に残酷で、生贄や洗脳といった非人道的な行為を厭いません。
クローディアが属する聖女派は、特にアレッサの力を利用して神を再誕させようとしています。クローディアの行動は、苦しみから人々を救いたいという善意から発していますが、その方法は極めて独善的で、他者の意思を無視したものです。
なお、ヴィンセントという存在が意味するように、教団内部にも様々な思惑や対立が存在しています。教団の複雑な構造と、その信仰の歪みがサイレントヒル3では描かれています。
サイレントヒルの異世界は、訪れる者の「心の闇や願いが歪んだ形で現れる」という設定が基本です。
『サイレントヒル3』においては、主にクローディアの妄執とアレッサのトラウマが強く反映されています。クローディアが神を誕生させ楽園を築こうとする強い願い、彼女自身が幼少期に受けた虐待、アレッサの悲劇に対する歪んだ救済の思想などが、異世界を具現化しています。
特に病院の裏世界に見られる赤く脈打つ壁やストレッチャーなどは、アレッサが火傷を負い、病院で苦しめられた記憶が具現化したものと解釈できます。
一方で、ヘザー自身もまた、父ハリーの死に対する憎悪や、自身の出生の秘密に対する混乱といった負の感情を抱えています。これらの感情が、クローディアの意図とは別に、異世界の形成に影響を与えているとも考えられます。
前作について
『サイレントヒル1』と『サイレンヒル2』については下記のページにまとめています!1は3と直接つながるストーリーになっており、3よりも過去の出来事が描かれています。
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