『SILENT HILL ZERO(サイレントヒル ゼロ)』はコナミから発売されたホラーアドベンチャーゲーム・〈サイレントヒル〉シリーズの5作目で、初代『サイレントヒル』の7年前を描く前日談となっています。この記事では、あらすじ、登場人物、ネタバレ、考察などをまとめています。
あらすじ
長距離トラック運転手のトラヴィス・グレイディは近道のため、サイレントヒル付近の道を走っていた。その夜、突然目の前を横切った少女を追い、燃え盛る一軒家にたどり着く。家の中から聞こえる悲鳴に導かれ、トラヴィスは炎の中に飛び込み、全身に火傷を負った少女を救出するのだが、そこで意識を失ってしまう。
目を覚ますと、トラヴィスはサイレントヒルにいた。少女の安否を確かめるため、病院へ向かい、そこで出会った看護師のリサから少女は亡くなったと告げられる。
しかし、病院の鏡に映る少女に誘われるようにして触れると、周囲は血と錆に覆われた異様な〈裏世界〉へと変貌。トラヴィスはこの鏡を通じて表と裏の世界を行き来する能力に目覚める。
病院の書類から、医者であるカウフマンの悪行や、少女(アレッサ)が病院に監禁されていることを知る。その後、サナトリウムでアレッサの母親であるダリアと出会い、自身の母親ヘレンの過去のトラウマと向き合うことになる。劇場やモーテルを探索する中で、トラヴィスは自身の父親リチャードの悲劇的な死の真相を知り、自身の心に潜む「ブッチャー」という凶暴な人格の存在を暗示される。
登場人物
初代『サイレントヒル』などのネタバレを含む内容になっています
トラヴィス・グレイディ (Travis Grady)
本作の主人公。20代のトラック運転手。過去に両親を巡る深いトラウマを抱えており、サイレントヒルでの体験を通じて それらと向き合うことになります。鏡を使って表と裏の世界を能動的に行き来できる能力を持ち、その能力は母親から受け継いだ可能性が示唆されています。
アレッサ・ギレスピー (Alessa Gillespie)
本作および『サイレントヒル』、『サイレントヒル3』のキーパーソンとなる少女。生まれつき超常的な能力を持ち、母親ダリアが行った儀式で「神」を胎内に宿します。儀式による火事で全身に重度の火傷を負いますが、神が宿っているため死ぬことができません。トラヴィスの助けにより、自身の魂の半分を赤ん坊(シェリル)として遠くへ逃がし、神の成長を止めます。
ダリア・ギレスピー (Dahlia Gillespie)
アレッサの母親であり、サイレントヒルのカルト教団の司祭。本作と初代『サイレントヒル』の黒幕的存在です。娘のアレッサを犠牲にして神を復活させることに異常な執着を見せます。トラヴィスの名前を初対面で知っていたり、彼の行動を把握しているなど、謎めいた部分が多いです。
マイケル・カウフマン (Michael Kaufmann)
アルケミラ病院の院長で、初代『サイレントヒル』にも登場します。教団と裏で繋がりがあり、教団から麻薬の原料・ホワイトクロジェアを供給してもらい、PTVという麻薬を精製して密売することで不当な利益を得ていました。信仰心は持たないものの、自身の密売ルートを守るためにダリアの儀式に協力しています。異世界やクリーチャーの姿はみえていないようです。
リサ・ガーランド (Lisa Garland)
アルケミラ病院に勤める看護師見習いで、初代『サイレントヒル』や『サイレントヒル3』にも登場します。本作では麻薬中毒であり、カウフマンと肉体関係があったことが示唆されています。彼女もまた、異世界やクリーチャーの姿は見えていないようです。
ヘレン・グレイディ (Helen Grady)
トラヴィスの母親。鏡の世界を行き来する能力を持っていましたが、精神疾患を患い、トラヴィスを〈悪魔の子〉と呼んで殺害を試みました。その結果、サナトリウムに収容されます。彼女の能力はトラヴィスに遺伝した可能性があります。
リチャード・グレイディ (Richard Grady)
トラヴィスの父親。妻ヘレンの入院後、幼いトラヴィスと共にモーテルに滞在していましたが、妻の精神的な悪化に絶望し、モーテルで首吊り自殺を遂げます。トラヴィスは彼の遺体を発見し、その記憶を深く抑圧していました。
ネタバレ
トラヴィスは旅の途中で集めた「未来」「過去」「偽り」「真実」「現在」の欠片を使い、魔除けの力を持つフラウロスを完成させます。しかし、教団の集会所でカウフマンにガスを浴びせられ意識を失ってしまいます。
朦朧とする意識の中で、アレッサの胎内に宿る〈神の種〉が生み出した〈アレッサの悪夢〉と対峙することに。激しい戦いの末、〈アレッサの悪夢〉を打ち破ると、フラウロスの光がアレッサに降り注ぎ、彼女は魂の半分を赤ん坊として具現化させます。この赤ん坊こそが、『サイレントヒル』で物語のキーパーソンとなるシェリルです。
エンディング
- Normal End
トラヴィスが自身のトラウマを克服し、トラックの走行距離をリセットして新たな人生を歩み始めます。アレッサは魂の半分を赤ん坊(シェリル)として生み出し、メイソン夫妻に拾われます。このエンディングが初代『サイレントヒル』の物語へと直接繋がります - Bad End
トラヴィスが自身の内なる殺戮衝動に打ち勝てず、町で殺人行為を繰り返すブッチャーと化してしまう結末です。ゲーム中で大量の敵を倒すことが条件となります - UFO End
特定の条件を満たすと見られるコミカルなエンディングです。なんと、トラヴィスの前にUFOが現れ、宇宙人と犬が降りてきて、彼を宇宙へと誘います。トラヴィスはトラックを置いていけないと渋りますが、宇宙にもトラックがあると聞いて喜んで同行します
感想と考察
開発元が変更されたということもあり、これまでのシリーズ作品とは異なる部分がありそうです。ちなみにですが、開発は日本のTeam Silentではなく、イギリスのClimax Studiosが担当しています。海外版のタイトルは『Silent Hill: Origins』 で、PSP版の他にPS2版もリリースされています。
鏡に触れることで能動的に表世界と裏世界を行き来できる新システムが導入され、謎解きや探索の鍵となります。また、近距離武器には耐久度が設定されており、使い続けると破損しますが、素手での攻撃も可能となっています。
システム面や一部の演出には賛否両論があるようですが、PSPのホラーゲームとしては高いクオリティだと思います。シリーズの最初の物語に深く関わる前日談ということで、初代の物語をより深く理解するために重要なストーリーとなっています。
ブッチャーの正体
ブッチャーは、トラヴィスの潜在意識に眠る凶暴性や残虐性が具現化したクリーチャーであると解釈されています。ゲーム中でブッチャーが他のクリーチャーを惨殺しているのは、トラヴィス自身の殺戮衝動の表れであり、バッドエンドではトラヴィス自身がブッチャーと化すことで、その関連性が明確に示されます。母親ヘレンがトラヴィスを「悪魔の子」と呼んだのは、彼の中にこの凶暴性を見抜いていたためかもしれません。
フラウロスとは
フラウロスは、悪魔を閉じ込めたり、思考を制御・増幅させる効果を持つとされるアイテムです。本作では、アレッサが神の種を封印するためにフラウロスをバラバラにし、トラヴィスがその欠片を集めることで力を取り戻します。このフラウロスが、後に初代『サイレントヒル』でダリアがアレッサの結界を破るために利用されることになります。
表世界と裏世界の解釈
本作では、鏡を通じて能動的に表世界と裏世界を行き来できます。表世界にもクリーチャーが出現しますが、リサやカウフマンといった他の登場人物にはその姿が見えていません。これは、トラヴィスが見ている「表世界」自体が、彼の精神状態やサイレントヒルの影響を受けた異界であり、彼自身の内面が反映されたものであることを示唆しています。つまり、トラヴィスは常にサイレントヒルの影響下にあり、彼にとっての「現実」が歪んでいる可能性があります。
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