湊かなえさんの『白ゆき姫殺人事件』はSNSが普及した現代社会における情報の拡散、人間の心理、真実とはなにか?などのテーマを感じとれるミステリー小説です。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています。
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
T県T市しぐれ谷の雑木林で日の出化粧品に勤務する美人OL・三木典子の焼死体が発見された。事件を担当することになったフリー記者の赤星雄治は取材を開始し、典子の同僚である狩野里沙子から情報を得る。そして容疑者として浮上したのは、典子とは対照的な存在である地味なOL・城野美姫だった。
SNSでは「白ゆき姫殺人事件」として拡散され、美姫はネット上で激しいバッシングを受けることになる。赤星は、関係者への取材を通して、美姫が犯人であるという確信を深めていく…。
小説の特徴
- イヤミス
湊かなえさんならではの後味の悪さ!読後もどっしりと心に残る - SNSとメディアのリアルな描写
現代社会における情報の恐ろしさがリアル - テーマ性
ネット社会やマスコミの問題点を扱っていて現代的で共感を呼びそう - 多角的な視点
語り手によって変化する人物像。人間の多面性が浮き彫りに! - 構成
インタビュー形式とSNSの書き込みを組み合わせた構成
感想
面白くて数日で読み終えてしまいました。同じ出来事でも視点が変わると捉え方が変わるというのが、よくわかる気がします。
また、SNSという現代的なツールを使いながらも、人間の嫉妬や悪意といった普遍的な感情を描き出していると思います。他人事ではないテーマを感じとれ、考えさせられる内容だったとも思います。登場人物たちの心の闇に触れるたび、自分自身の中にも同じような感情が潜んでいるのではないかと、ゾッとする感覚を覚えたりもしました。ミステリーはもちろんですが、SNSやメディアとの向き合い方、人間関係のあり方などに興味がある人にオススメしたい一冊です。
高評価なポイント
- SNSやメディアの描写がリアルで、現代社会の縮図を見ているような気分になる!
- 登場人物の心理描写が繊細かつ丁寧で感情移入できる!
- 事件の真相が二転三転し最後まで飽きない
- SNSや週刊誌の記事を再現した資料も高評価なポイント
低評価なポイント
- 殺人事件自体――トリックや動機は…そこまでのことではない気がしてしまう
- 資料ページが章ごとに挟まっていないなど、ちょっと読みづらい部分があるかも
- イヤミスだから仕方ないけど後味が悪い、そして、結末にスッキリしない気もする
- 登場人物に共感できない部分があるかも…
ネタバレ
化粧品会社の美人社員・三木典子が殺害され、容疑者として同僚の城野美姫が浮上したわけですが、真犯人は狩野里沙子です。三木典子からいじめを受けていたこと、会社の商品の窃盗を三木典子に知られたことなどが動機です。手口を簡単に説明すると、三木典子を殺害する前に、城野美姫に睡眠薬を飲ませて眠らせ、その隙に三木典子を殺害するというものです。アリバイ工作や証拠の捏造なんかも仕掛け、さらに、SNSを利用して城野美姫に対する悪い噂を流しています。
結末
真犯人が捕まって事件は解決され、容疑者扱いされた城野美姫ははビジネスホテルから出て、新しい生活を始めようとします。ただ、容疑者として報道されたことで、友人や同僚からの信頼を失い、人間関係に大きな傷跡が残っていそうですし、一度「殺人犯」というレッテルを貼られたことで、世間からの偏見に苦しむことにもなりそうです…。
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