『連続殺人鬼カエル男ふたたび』はカエル男シリーズの第二弾で、前作の事件から10ヶ月後を舞台に、新たな猟奇殺人が発生します。テーマは前作に引き続き刑法39条。精神鑑定による責任能力の有無が、事件の行方を大きく左右します。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
前作のカエル男事件から10ヶ月後、事件に関わった精神科医の自宅が爆破される。現場には、カエル男の犯行声明文が残されていた。埼玉県警の渡瀬と古手川コンビは再び捜査に乗り出すが……。サ行の頭文字を持つ人々が、次々と猟奇的な方法で殺害されていく――爆発、溶解、轢断、破砕、エスカレートする犯行、果たして、真犯人は誰なのか?
小説の特徴
- 圧倒的なグロテスク描写:今作でも、目を覆いたくなるような凄惨な殺害シーンが満載。特に「破砕する」の章は、 読者のトラウマになること必至
- 刑法39条を巡る葛藤:精神鑑定による責任能力の有無が、事件の根底に深く関わってくる。被害者遺族の感情、司法 制度の矛盾などが複雑に絡み合う
- 予測不能な展開:二転三転するストーリーは、読者を最後まで飽きさせない。そして巧妙なミスリードと衝撃の真相!
- シリーズの繋がり:前作からの登場人物に加え、御子柴弁護士など、別シリーズのキャラクターも登場!中山七里ワールドのファンにはたまらない!
こんな人にオススメ
- グロテスクな描写に抵抗がない(ここが大事なポイントです)
- 社会派ミステリに興味がある!刑法39条について考えるきっかけが欲しい!
- 予想を裏切る展開を楽しみたい!
- 中山七里作品のファン!前作のカエル男を気に入った人はぜひぜひ!
感想
グロテスクな描写がえぐいですね(苦笑)。刑法39条を巡る問題提起は、前作同様、非常に考えさせられるものがありますし、著者の考えとは言い切れませんが、この問題に対する意見が書かれているようにも思えます。正義とは何か、法とは何か、人間とは何か…様々な問いが、頭に浮かんできますね(浮かぶだけで、たいした答えは持ち合わせていないのだけど)。やはり、前作と比べてしまいがちなので、気になる点がないわけではないです。
高評価のポイント
- 予想外の犯人:前作からの流れを覆す、意外な人物が真犯人
- 刑法39条への問題提起:責任能力の有無を巡る議論が深く考えさせるきっかけになる
- スッキリするラスト:悪事を重ねた人物が最後に溜飲が下がる
低評価のポイント
- グロテスクな描写:高評価なポイントにもなりそうですが…凄惨な殺害シーンは不快感しかないかもしれないです…
- 既視感:悪くいうと前作と似たような展開やテーマ。新鮮味に欠けると感じるかも
- 古手川刑事のキャラクター:熱血漢すぎる古手川刑事の行動が空回りにもみえる
ネタバレ
真犯人は御前崎教授でした。教授は娘と孫を殺害した犯人・古沢冬樹への復讐を果たすため、まず当真勝雄を殺害。自分の身代わりとして利用し、その後、サ行の人物を次々と殺害していました。
御前崎は、自身の死を偽装するため、ホームレスの老人を殺害し、爆弾で木っ端微塵にするという文字通りぶっ飛んだトリックを使っています。また、警察の捜査を撹乱するため、事故や自殺に見せかけた殺人も実行しています。自らが精神科医であるという知識を活かし、転移と逆転移という心理学的な要素を利用したのもトリックといえそうです。被害者について簡単にまとめると以下のようになります。
- 佐藤尚久:工場の濃硫酸プールで溶解死体として発見。御前崎教授の復讐計画における「サ行」の犠牲者として選ばれ、事故に見せかけて殺害された
- 志保美純:JR神田駅で列車に轢断され死亡。こちらも御前崎教授の復讐計画における「サ行」の犠牲者として、自殺に見せかけて殺害された
- 末松健三:精神科医。光市母子殺害事件の犯人である古沢冬樹の精神鑑定を担当し、刑法39条の適用を決定づけた。御前崎教授に拉致され、製材所の破砕機で破砕される
- 当真勝雄:過去の事件でカエル男として扱われた青年。御前崎教授に利用された後、自宅を爆破するために殺害され、身代わりとして利用された老人の遺体とともに爆破された
結末
ラストシーンには、古沢が有働さゆりに刺される場面が描かれています(直接的な殺害描写ではない)。御前崎の復讐が終わったことを意味しているようですが、新たな惨劇の幕開けにもみえます。ここは、意味深なラストシーンといえます。
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