伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』について、あらすじや感想、ネタバレをまとめています。伊坂さんらしい雰囲気のある小説です!
項目 | 評価 |
---|---|
【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
|
【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
|
【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
|
【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
|
【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
|
【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
中学校教師の壇千郷(だん・ちさと)は教え子の布藤鞠子から小説原稿を渡される。その小説には、猫を虐待する者たちを制裁するネコジゴハンターが登場し、奇妙な活躍を見せていた。壇自身は、他人の飛沫を浴びることで、その人物の未来を垣間見ることができるという特殊な能力「先行上映」を持っていた。ある日、壇は教え子の父親である里見八賢が、何者かに拘束されている未来を「先行上映」で見てしまう。里見八賢はカフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族たちが集まる「サークル」というグループに関わっており、壇は八賢を救うため、サークルに近づくが、やがて自身も思わぬ事件に巻き込まれていく。
小説の特徴
現実と小説の世界が交錯する、複雑でありながらも引き込まれるストーリー展開が特徴の一つだと思います。伊坂幸太郎さんの作家生活二十年の集大成ともいえる作品とうたわれていますので、魅力が凝縮されていると思います!
- 複数の視点
物語が複数の登場人物の視点から語られる - メタフィクション
小説の中に小説が登場し、登場人物が自分たちが物語の登場人物である可能性に言及する - 特殊能力
主人公が他人の未来を垣間見ることができる特殊能力を持つ - 哲学的なテーマ
ニーチェの哲学(特に永遠回帰)が物語のテーマに組み込まれている - ユーモアと軽快さ
シリアスなテーマを扱いながらも、ユーモアのある会話や軽快な展開が特徴 - 伏線
緻密に張り巡らされた伏線が、物語の終盤で回収される
主要人物
- 壇千郷(だん ちさと): 中学校の国語教師。飛沫感染によって他人の未来を「先行上映」できる特殊能力を持つ
- 布藤鞠子(ふとう まりこ): 壇の教え子。小説家志望で、ネコジゴハンターを主人公にした小説を書いている
- ロシアンブルー: ネコジゴハンターの一人。悲観的で心配性な性格
- アメショー: ネコジゴハンターの一人。楽観的で明るい性格
- 里見八賢(さとみ やたか): 大地の父親で、内閣府に所属する対テロ組織の人間。カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族のサークルに出入りしている
- 庭野: カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族サークルのリーダー
- 野口勇人: カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族サークルのメンバー。マイク育馬への復讐心を持つ
- 成海彪子(なるみ ひょうこ): カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族サークルのメンバー。カンフーが得意な女性
- マイク育馬: テレビ番組の司会者。カフェ・ダイヤモンド事件の生中継中に不適切な発言をし、事件を悪化させたとされている
その他の人物
- 里見大地: 壇の教え子で、八賢の息子
- 友沢笑里: 布藤鞠子の友人
- 羽田野: カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族サークルのメンバー。元小学校校長
- 将五: 野口勇人の仲間
- 壇の母親: 壇に「ヘディング」という言葉を教えた人物
感想
伊坂幸太郎さんの作品の中でも特に独特な世界観が際立っていると思いました。登場人物たちの会話や行動、物語の展開など、すべてが伊坂ワールド全開で、読んでいて非常に楽しかったです!
物語が進むにつれて、現実と小説の世界が交錯していく展開は、まさに「ペッパーズ・ゴースト」というタイトルにふさわしいものだったと思います。
高評価なポイント
- 魅力的な登場人物
主人公の壇先生をはじめ、ネコジゴハンターの二人組、サークルのメンバーなど、個性豊かなキャラクターたちが、まさに物語を彩っています! - 巧みな物語構成
現実と小説の世界が交錯する、複雑でありながらも引き込まれるストーリー展開が魅力です! - 伊坂幸太郎ワールド全開
伊坂作品ならではのユーモアや軽妙な会話、伏線の張り方など、ファンにはたまらない要素が満載! - 哲学的なテーマ
ニーチェの哲学や永遠回帰といったテーマが物語に深みを与えていると思います
低評価なポイント
- 複雑なストーリー
登場人物が多く、物語の展開も複雑です…理解が難しいと感じるかもしれません - オチの弱さ
伏線回収は素晴らしいものの、最後のオチが少し弱いと感じる場合もあるかもです - テーマの重さ
重いテーマを扱っているため、読む人によっては気分が沈んでしまうかもしれません
ネタバレ注意
物語の結末は、ハッピーエンドともバッドエンドとも言い切れない、少し曖昧な終わり方です。事件は解決に向かうものの、登場人物たちの未来は明確には描かれていません。
簡単にまとめると、カフェ・ダイヤモンド事件の被害者遺族であるサークルメンバーが、新たな爆弾テロ事件を企て、その爆弾テロは、人質を監禁した上での集団自殺に見せかけた「パフォーマンス」でした。事件を繰り返さないための警告の意味合いがあった(ただし、これは壇先生の仮説)、みたいな感じでしょうか。
まとめ
伊坂幸太郎さんの魅力が詰まった読み応えのある作品だったと思います。独特な世界観や巧みなストーリー展開、魅力的な登場人物など、伊坂作品のファンはもちろん読んでいると思いますが、初めて伊坂作品を読むという方にもおすすめできる一冊です。
次におすすめの小説
「ペッパーズ・ゴースト」を読んだ方には、同じく伊坂幸太郎さんの作品である『マリアビートル』や、少し重いテーマですが『死神の浮力』もおすすめです。
コメント