名探偵・神津恭介シリーズの中でも傑作との呼び声が高い、高木彬光氏の『人形はなぜ殺される』。一見不可解な人形破壊事件が、連続殺人へと発展します。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレ(真相やトリック)などをまとめています。
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
日本アマチュア魔術協会の会員が集まる奇妙な事件――魔術の小道具として使用されるはずだった人形の首が、衆人環視の中、忽然と姿を消した。その直後、首を断ち切られた女性の遺体が発見され、現場には消えたはずの人形の首が転がっていた。これは単なる偶然か、それとも……?
さらに、第二の事件が発生。今度は線路上でマネキン人形が列車に轢かれるという事件で、その数時間後、同じ場所で女性が列車に轢かれて死亡する。人形と人間が同じ運命をたどるという異様な状況――名探偵・神津恭介は事件を解決するため、捜査を開始する。ところが、事件は予想以上に複雑で、関係者たちの思惑が絡み合い、神津は幾度となく窮地に立たされる。果たして神津は、人形が殺される理由を解き明かし、真犯人を突き止めることができるのか。
こんな人にオススメ
- 本格ミステリーが好きでトリックに驚きたい!
- 昭和の雰囲気を味わいたい!
- 読者への挑戦状に挑みたい!
- 一筋縄ではいかない複雑な人間関係やドラマを楽しみたい!
特徴
- タイトル回収と衝撃的な真相
「なぜ人形が殺されるのか?」という問いに対する衝撃的な真相!鮮やかに解き明かされます - 伏線とどんでん返し
何気ない台詞や行動が解決編で全く異なる意味を持つどんでん返し - 戦後日本の雰囲気
敗戦から立ち直りつつある昭和の日本の社会情勢や風俗が、物語に深みを与えています - 読者への挑戦
作者から読者への挑戦状が作中に提示され、読者は推理力を試される
登場人物(主人公について)
- 神津恭介
日本三大名探偵の一人。法医学者であり、その知性と美貌で周囲から超名探偵として尊敬されている。しかし、本作では犯人の巧妙なトリックに翻弄され、後手に回ることが多く、人間味あふれる一面をみせる - 松下研三
神津恭介の旧友である探偵作家で、本作のワトソン役。事件の調査に積極的に関わるが、時には危険な目に遭ったり、麻雀に夢中になったりするなど、人間臭く、どこか憎めないキャラクター
感想
ちょっと古い作品なので今の読者さんには少し読みにくい部分もあるかもしれませんが、それを補って余りある魅力が詰まっています!特に、『人形が殺される理由』が明らかになった瞬間の衝撃が忘れられないです。タイトルがこの作品のすべてを表していますね。重厚な雰囲気も魅力的ですし、神津恭介の苦悩や葛藤なども、読みどころだと思います。
高評価のポイント
- 斬新な着眼点
人形が殺されるという奇妙な設定と、それを核心に据えた物語が斬新! - 時代背景の描写
戦後日本の社会情勢や風俗が、物語にリアリティと深みを与えている - 読者への挑戦
作者からの挑戦状が、読者の推理意欲を掻き立てる - タイトルの回収
物語の最後に、タイトルの意味が鮮やかに回収される
低評価のポイント
- 言い回しが難しかったりして読みにくい
古い作品のため、現代の読者には読みにくい部分があるかも… - 神津恭介の影の薄さ
名探偵であり天才であるはずの神津恭介が事件に翻弄されがち - 緊迫感がない
猟奇的な事件にも関わらず、緊迫感に欠ける気もする
ネタバレ
一連の事件の犯人は沢村精神病院副院長の沢村幹一です。沢村は自身の計画を遂行するために人形を殺害し、その殺害方法を模倣して人間を殺害していました。第一の殺人は、典型的な首なし死体のトリックではありますが、読者の盲点を突いていると思います。第二の殺人は、緊急停車させた二台の寝台列車の乗り換えという大胆かつシンプルなアリバイトリックです。
主な事件の概要は以下のようになります。
- 第一の事件
マジックショーで盗まれた人形の首は、ギロチンで首を切断された京野百合子の死体のそばに置かれました。しかし、実際に殺されたのは精神病院に入院中の綾小路滋子であり、百合子と滋子が入れ替わっています。犯人は滋子を百合子に見せかけるために、指紋をゴム膜で複製し、警察の捜査を欺きました。人形の首は、この死体入れ替えトリックを隠蔽するためのミスリードでした - 第二の事件
マネキン人形が列車に轢断された後、同じ場所で綾小路佳子が列車に轢断されます。このトリックの核心は、犯人が列車を緊急停車させ、その隙に別の列車に乗り換えることでアリバイを成立させるという大胆なものでした。人形を轢かせたのは、列車を止めるためのいわば口実であり、その後、人間が轢かれることで、人形の殺害が単なる器物損壊ではなく、殺人予告にもみせかけることで捜査を攪乱しました
結末
神津恭介は、杉浦の残したメモや中谷譲次の示唆、そして自身の推理を重ね合わせることで、真犯人を突き止めます。沢村の犯行は、綾小路家の財産を巡る複雑な人間関係と、彼の狂気的な執念によって引き起こされたものでした。神津は、沢村の巧妙な「魔術」を「破れた夢」と表現し、事件の終結を宣言します。ワトソン役の松下研三は、事件の過程で負傷し入院しますが、最終的には回復します。
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