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長い長い殺人|あらすじ・感想・ネタバレ【宮部みゆき】

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宮部みゆきさんの推理小説『長い長い殺人』は、物語の語り手が人間ではなく、事件に関わる登場人物たちの財布という作品です。この記事では、あらすじや作品の特徴、感想、高評価および低評価なポイント、ネタバレなどをまとめています。

項目 評価
【読みやすさ】
スラスラ読める!?
【万人受け】
誰が読んでも面白い!?
【キャラの魅力】
登場人物にひかれる!?
【テーマ】
社会問題などのテーマは?
【飽きさせない工夫】
一気読みできる!?
【ミステリーの面白さ】
トリックとか意外性は!?
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あらすじ

 ある晩、男性のひき逃げ死亡事件が発生する。被害者には多額の保険金がかけられており、妻・森元法子は塚田和彦と愛人関係にあった。世間やマスコミは、保険金目当ての殺人を疑い、法子と和彦に疑惑の目を向ける。しかし、二人には鉄壁のアリバイがあった。その後も、和彦の妻である早苗をはじめ、二人の周辺で不審死が相次ぐ。

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小説の特徴

10個の財布がそれぞれの視点から見た出来事を語ることで、一つの連続殺人事件の真相が徐々に明らかになっていくという連作短編集の構成になっています。各章を独立した短編として読むこともできますが、全体を通して読むことで、一つの大きな殺人事件の全貌が明らかになります。
財布が語り手であるため、得られるのは持ち主が見聞きしたものに限られ、情報の欠落など、特有の制約があります。

舞台設定

携帯電話が普及する前の時代設定で、財布という存在の重要性を際立たせています。キャッシュレス化が進む現代とは違った世界観といえるかもしれません。

テーマ

自己顕示欲、承認欲求、自分は特別な存在だと思い込む心理、マインドコントロールなどを感じとれます。

主人公

10個の財布が主人公といえます。刑事の財布、少年の財布、探偵の財布、死者の財布、犯人の財布など、様々な財布が登場します。持ち主の立場や性格を反映して、財布たちにもキャラがあります。

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感想

『長い長い殺人』というタイトルから重くて濃密な人間ドラマのミステリーを想像していましたが、語り手はまさかの財布でした。事前情報がなかったので、最初は「え、財布が喋るの?」と思ったりもしました。超能力とかが出てくるわけではないので、特殊設定とも言い切れなさそうですが…、特殊ですね。
ミステリーの骨子は保険金殺人です。怪しい男女がいるけど、完璧なアリバイがあるという典型的なパターンで、やはり財布視点というのが面白い部分ではないでしょうか。正直にいうと、結末はあっけない気もしましたが、考えさせられる内容だったと思います。

高評価のポイント

  • 斬新な設定
    〈財布が語り手〉という設定が斬新さでおもしろい!財布という視点の制限がミステリーとしての効果を高めています
  • 構成の巧みさ
    各章が巧みに繋がり、徐々に事件の全貌が明らかになっていく構成が見事です
  • 読みやすさとストーリーテリング
    読みやすい文章、物語に引き込むストーリーテリング能力が高くて一気読みできそう
  • 財布描写(人物描写)
    財布に個性があって魅力的!愛らしさや健気さなんかも感じとれます

低評価のポイント

  • 結末への不満
    「ラストが唐突すぎる」「あっさりしている」「拍子抜けした」「物足りない」と感じる場合もあるかもしれません…
  • 財布視点の必然性
    斬新すぎる設定なので、その必然性については考察の予知がありそうです
  • ミステリーとしての評価
    本格的なミステリーやびっくり仰天なトリックを期待すると…ちょっと違うかもしれません

ネタバレ

一連の殺人事件の実行犯は、それまでほとんど登場していなかった三木一也(みき・かずや)という青年でした。三木は大手商社をすぐに辞め、鬱屈した日々を送る中で歪んだ自己顕示欲を募らせていました。偶然出会った塚田和彦に弱みを握られたことをきっかけに、和彦と森元法子の計画に加担し、彼らの配偶者である森元隆一と塚田早苗を殺害。さらに、事件の目撃者や口封じのために関係者を殺害していました。

三木の動機は、保険金のような金銭的なものではなく、「自分は特別な人間であり、世間から注目されたい」「他人をコントロー ルしたい」という歪んだ自己顕示欲と承認欲求でした。
和彦と法子は、三木を巧みに利用し、自分たちは手を汚さずに保険金を手に入れ、さらには事件の被害者・関係者としてマスコミの注目を集めることで名声を得ようと考えていたようです。

結末

私立探偵の河野康平(早苗から調査依頼を受けていた)と刑事の響武史らは、事件の真相に近づいていきます。一連の事件の真犯人を名乗る偽の犯人(予備校生)をおびき出す作戦を実行し、その偽犯人を襲おうとした三木一也を現行犯逮捕します。この時、三木の財布の中から決定的な証拠となる被害者たちの遺品(森元隆一のネクタイピン、西方早苗の結婚指輪)が発見され、これにより三木の犯行が立証されると共に、塚田と法子の教唆・関与も明らかになります。

事件後、叔母を亡くし心を痛めた少年・雅樹が家出しますが、響刑事と河野探偵が彼を見つけ出し、河野は早苗の形見のイヤリングを雅樹に渡します。

この本を読んだ後に読みたい推理小説

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