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Nのために|あらすじ・感想・ネタバレ【湊かなえ】

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 湊かなえさんの『Nのために』は、関係者の証言から事実が明らかになっていくミステリー小説です。東京のきらびやかな高層マンション・スカイローズガーデンで起きた夫婦の死亡事件を軸にしています。この記事では、あらすじ、感想、ネタバレなどをまとめています。

項目 評価
【読みやすさ】
スラスラ読める!?
【万人受け】
誰が読んでも面白い!?
【キャラの魅力】
登場人物にひかれる!?
【テーマ】
社会問題などのテーマは?
【飽きさせない工夫】
一気読みできる!?
【ミステリーの面白さ】
トリックとか意外性は!?
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あらすじ

 高層マンション〈スカイローズガーデン〉の一室で、野口貴弘とその妻・奈央子の死体が発見される。現場に居合わせたのは、杉下希美、成瀬慎司、安藤望、西崎真人の4人の男女で、警察の事情聴取に対し、それぞれが事件について証言する。その証言は一見すると真実を語っているようだったが…。

小説の特徴

 ミステリーとしての謎解き要素と、登場人物たちの過去や心理描写に重きを置いた人間ドラマ、そして恋愛小説の要素が巧みに融合されている点が、本作の大きな特徴といえます。

構成

 複数の登場人物の視点で事件が語られます。それぞれの登場人物の視点を通して、事件の異なる側面を知りながら、パズルのピースを一つずつ集めていくかのように、徐々に事件の全貌を把握していきます。

舞台設定

 瀬戸内海の青景島と東京という対照的な場所が舞台です。青景島は、閉鎖的で保守的な社会であり、そこで育った杉下希美や成瀬慎司は、島からの脱出を夢見ています。一方、東京は、自由で多様な価値観が共存する都会であり、杉下や安藤望は、そこで成功を収めようとします。

テーマ

 愛、友情、そして罪といったテーマを感じとれます。貧困、家庭内暴力、格差社会など、現代社会が抱える問題も登場していると思えます。

作風

 湊かなえさんの文章は美しく、時に残酷で、感情を激しく揺さぶられます。湊さんの作品は『イヤミス』と評されることが多いですが、この作品に関しては、その印象は薄いと感じる方もいるはずです(全くないわけではありません)。「感動した」「泣ける」といった肯定的な印象をもつ読者もいるのではないかと思います。

主人公

 明確な単一の主人公は存在せず、複数の主要人物の視点で物語は描かれています。
 中心的な役割を担うのは杉下希美です。貧しい家庭に育ち、強い意志の持ち主です。頭脳明晰で、行動力があり、目的のためには手段を選ばないという一面もあります。

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感想

 読後感が非常に複雑で、深く考えさせられる作品でした。それぞれの登場人物が抱える過去や秘密、そして互いへの想いが、事件という形で表面化したとき、何が正しくて何が間違っているのか、判断するのが非常に難しいと思いました。それこそがこの作品の魅力であって、人間の心の複雑さを表現しているのだと思います。

高評価のポイント

  • 物語の構成の巧みさ:複数の視点から事件が語られ、事件の真相が徐々に明らかになっていくので飽きない
  • 予想を裏切る展開:予想を裏切る展開の連続!
  • 心情描写の丁寧さ:登場人物たちの過去や感情が丁寧に描かれています
  • テーマの深さ:様々な形の愛が描かれている

低評価のポイント

  • 展開が複雑:複数の視点から語られるということもあって…物語の全体像を把握するのが難しい
  • 共感できない:登場人物たちの行動や価値観が現実離れしていると感じる場合もあるかもしれません
  • 結末が曖昧/すっきりしない:事件の真相は明らかになりますが…すべてがまるっと語られるわけではありません

ネタバレ

 事件の真相は、当初の西崎真人の供述とは大きく異なります。野口貴弘を殺害したのは野口奈央子で、奈央子はその後、自殺していました。つまり、野口夫妻は心中だったわけです。奈央子の動機は嫉妬心で、夫・貴弘が杉下希美に惹かれているのではないか思っていました。

 西崎は奈央子と不倫関係にありました。DVを受けている奈央子を救うために野口宅を訪れ、そして、口論の末、奈央子が貴弘に刺されので、逆上した西崎が貴弘を燭台で殴り殺したと主張しますが…これは、奈央子を殺人犯にしないための嘘でした。西崎には過去に母親を見殺しにしたことへの贖罪の意識もあったようです。

 杉下希美は、安藤望が野口貴弘との将棋の勝負に負けて海外へ飛ばされることを阻止しようとしていました。事件当日、杉下は西崎が奈央子を連れ出しにくることを貴弘に伝え、西崎が貴弘に暴行を加えるという傷害事件を起こさせて、貴弘を失脚させようとしていました。しかし、安藤が予期せずかけたドアチェーンや、奈央子の衝動的な行動により、計画は最悪の結果を招きます。

 安藤望は、希美と西崎の計画から疎外されていると感じ、嫉妬心からドアチェーンをかけてしまいます。事件後、彼はそのことを後悔しつつも、真相を知ることはありません。
 成瀬慎司は、希美への想いから、事件現場で安藤がチェーンをかけた事実を隠蔽し、「チェーンはかかっていなかった」と嘘の証 言をしています。

結末

 事件から10年後、杉下希美は病に侵され余命半年と宣告されます。彼女は事件の全ての真相を知りたいと願いながらも、それを誰にも打ち明けることはありません。登場人物たちは、それぞれが大切な「N」のために行動し、嘘をつき、真実を隠し続けたまま、それぞれの人生を歩んでいくことになります(読者だけが全てのピースが組み合わさった事件の全体像を知っています)。

トリック

 タイトル「Nのために」は、登場人物それぞれの行動原理や愛情の形を象徴していますが、主な登場人物のイニシャルはNです。そのため、誰が誰のために行動したのか、誰が誰を愛していたのかがわかりにくくなっています。事件は複数の登場人物の視点で語られるので、これまた、全体像が見えにくくなっています。

この本を読んだ後に読みたい推理小説

  • 湊かなえさんの他の作品:
    「告白」「贖罪」なども人間の心の闇を深く掘り下げた作品です
  • 東野圭吾氏の作品:
    「容疑者Xの献身」「白夜行」などは、愛や友情、そして罪をテーマにしています

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