柚月裕子さんの『教誨(きょうかい)』は死刑囚の心の闇、救済とは何か、そして人間の業などの重厚な人間ドラマを描いた社会派のミステリー小説です。この記事では、あらすじ、登場人物、感想、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
吉沢香純は遠縁の死刑囚・三原響子の遺骨を引き取った――響子は幼女二人を殺害した罪で死刑となった。香純は響子の遺品の中にあった日記から、彼女の過去に触れ、事件の真相に疑問を抱く。響子の遺骨を故郷の青森に納めようとする香純は、事件の真相を探るため、関係者たちから話を聴いていく。そこで明らかになったのは、響子の壮絶な過去と、事件の裏に隠された複雑な人間関係だった…。
主な登場人物
- 吉沢香純
32歳。響子の遠縁にあたる女性。響子の遺骨を引き取り、事件の真相を追う - 三原響子
38歳。幼女二人を殺害した罪で死刑が執行された女性 - 三原千枝子
響子の母親。娘を愛するがゆえに、悲劇を招いてしまう - 樋口純也
津軽日報社の記者。響子の事件を追い続ける
小説の特徴
- 重厚な人間ドラマ
死刑囚の心の闇、救済とは何かを深く考えさせられます - 緻密な心理描写
登場人物たちの葛藤や苦悩がリアルに描かれています - 社会派ミステリー
事件の背景にある社会問題にも鋭く切り込んでいます - 美しい文章
柚月裕子さんの繊細で美しい文章が、物語をより一層感動的なものにしています!死刑囚の心情や、周囲の人々の葛藤が丁寧に得画れていると思います
感想
読み終えた後、深い感動とやるせなさが入り混じった複雑な感情が残りました。救いのない物語ではありますが、人間の業や愛について深く考えさせられる作品です。
高評価なポイント
- 圧倒的なリアリティ
事件の背景や登場人物の心理描写が非常にリアルで、引き込まれます。特に、響子の過去や、彼女が抱える孤独感が痛いほど伝わってきます - 考えさせられるテーマ
罪と罰、救済、家族愛、貧困、いじめなど、様々なテーマが描かれていると思います - 美しい文章
柚月裕子さんの繊細で美しい文章や、情景描写、感情表現などがストーリーをより一層感動的なものにしていまう。ほんとに心に深く響きます
低評価なポイント
- 結末
物語全体が暗くて結末を迎えたあとの読後感も重いです - 重いテーマ
読むのに覚悟が必要な重いテーマを扱っています。高評価なポイントにもなり得ますが、いじめや虐待など、目を背けたくなるような描写もあります
ネタバレ
香純は、響子の過去を辿る中で、彼女がいじめや貧困、家庭内暴力など、様々な苦難に満ちた人生を送ってきたことを知ります。響子はなぜ、幼女二人を殺害するに至ったのか?香純は事件の真相に近づくにつれ、響子の心の闇に深く入り込んでいきます。
真相
響子は幼少期から虐待を受け、孤独な日々を送っていました。そんな彼女にとって、娘の愛理は唯一の心の支えでした。しかし、愛理の存在が響子を苦しめるようになり、追い詰められた響子は8歳の娘・愛理を殺してしまいます。そして近所の5歳の女の子・栞を殺害したのも響子ですが、その記憶はかなりあいまいで、ほぼ憶えていないといえます。
約束の意味
響子が最期に口にした「約束は守ったよ。褒めて」という言葉は、母親の千枝子との約束でした。千枝子は、響子に「あの子がいなかったら…」と口走ったことを誰にも言わないように約束させていました。この「あの子が…」という言葉は、響子が娘を殺害した原因になった一言でしたので、それを口にしてしまえば、情状酌量の余地もあったかもしれないわけですが……約束を守ったのは、故郷に戻るためです。千枝子も悪者になってしまうとふるさとには戻れないので、約束は守る必要があったわけです。
まとめ
『教誨』はいろいろと深く考えさせられる作品でした。ミステリーというジャンルに含まれるとは思いますが、受け取るものがだいぶ違う気がします。こういう作品を読みたくなるときってありますね。
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