岡嶋二人さんの『クラインの壺』は、1989年に発表されたSFミステリー小説です。当時はまだ珍しかったバーチャルリアリティ・VRを題材にしており、現実と仮想世界が曖昧になる恐怖を描いています。この記事では、小説のあらすじ、特徴、感想、ネタバレ、そして読後におすすめの作品などを紹介しています!
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
主人公の上杉彰彦は、ゲームブックの原作を謎の企業「イプシロン・プロジェクト」に売却。そして、原作をもとにしたヴァーチャル・リアリティ・システム「クライン2」の製作に関わることになる。
イプシロン・プロジェクトは、上杉の作品をもとに、五感すべてを再現する究極のVRゲームを開発しようとしていた。上杉は、アルバイトとして雇われた美少女・梨紗と共に、テスターとして仮想現実の世界に入り込み、次第に現実と仮想の区別がつかなくなっていく。やがて梨紗が失踪し、上杉はプロジェクトの真相を追う中で、恐ろしい陰謀に巻き込まれていく――。
小説の特徴
クラインの壺はSFとミステリーの要素を融合させた作品で、緻密なプロットとスピーディーな展開が特徴です。
上杉が山奥の貸別荘で、自分が此処に至った経緯を大学ノートに綴る形で始まります。ゲーム制作に関わる中で、現実と 仮想の境界線が曖昧になっていく過程が、サスペンスフルに描かれています。物語が進むにつれて、読者も主人公と同様に現実感が喪失していく感覚を味わいます。上杉は、ゲーム内で「戻れ」という謎の声を聞いたり、梨紗の失踪、そして七美との出会いを通じて、徐々にプロジェクトの裏側に隠された真実に近づいていきます。
舞台設定
1980年代後半の日本のような世界観が舞台です。携帯電話やインターネットが普及していない時代設定で、溝の口や二子玉川(神奈川県の都市名)といった具体的な地名や、アメリカのクライン記念病院という謎めいた場所も登場します。
テーマ
現実と仮想現実の区別がつかなくなるという人間の認識の曖昧さが、テーマとして読み取れます。五感を通じて体験する現実とは何か、そして人間は何を信じて生きていくのか…というような哲学的な問いです。
感想
1989年というぎりぎり平成な時代に書かれた作品ですが、そこまで古さは感じなかったです(古さが微塵もないなどとはいえませんが…)。没入感やスリルを味わえる点も良かったです。
VR技術が現実のものとなりつつある現代において、現実と虚構の境界線とか、そんな感じのテーマについてより一層深く考えさせられる作品でした。読者にゆだねる終わり方も、考えることを促しているように思います。
高評価のポイント
- 物語の面白さ:現実と仮想現実が交錯するスリリングな展開!
- 時代を超越したテーマ:30年以上前に書かれた作品でありながら、現代にも通じるテーマ
- テーマの深さ:現実とは何か?人間の存在意義とは何か?という哲学的な問いかけに知的好奇心がMAX
- 構成の巧みさ:伏線の張り方や回収など、物語全体の構成が非常にうまい
- 読みやすさ:文章が平易で読みやすく、SFに慣れていない読者でも楽しめそう!
低評価のポイント
- 結末の曖昧さ:ラストが明確に示されていない…消化不良感を覚えるかもしれません
- アイテムやセリフ回しの古さ:作中に登場するアイテムやセリフ回しに古臭さを感じるかも…
- 展開の唐突さ:物語後半の展開が唐突に思え、広げすぎという感想を抱くかも…
ネタバレ
上杉は七美と共にイプシロン・プロジェクトの陰謀を暴こうとしますが、研究所で毒ガスを浴びせられ意識を失います。
目を覚ましたとき、上杉は「クライン2」の筐体の中にいました。そして、プロジェクトのメンバーから、高石梨紗は生きていると告げられ、これまでの出来事はすべてゲームの一部だったと説明されます。しかし、上杉は七美との記憶や、研究所で見た梨紗の死体写真が忘れられず、現実と仮想の区別がつかなくなってしまいます。
結末
混乱した上杉は、自分がどちらの世界にいるのかを確かめるため、別荘に立て籠もり、過去の出来事をノートに書き出します。そ して、すべてを書き終えた後、風呂場で手首を切ることで、現実か仮想現実かを見極めようとします。
ここで物語は終わってしまいます。上杉がどちらの世界にいたのか、その後どうなったのかは、具体的に描かれていません。
次にオススメの推理小説
現実と虚構が曖昧になる世界観や、人間の心理を描いた作品に興味を持った方には、以下の作品をおすすめします!
- フィリップ・K・ディックの作品:水槽の脳という思考実験を元に現実とは何かを問いかける作品が多い(著者の代表作は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)
- 東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』:記憶を操作された主人公が現実と虚構の狭間で苦悩する姿を描く
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