NHKで放送された『シリーズ横溝正史短編集4 金田一耕助悔やむ』。名探偵・金田一耕助(池松壮亮)が、奇妙で不可解な事件に挑む人気シリーズの第4弾です!読唇術が見抜いた殺人計画、そして予期せぬ展開を迎える事件の真相とは?この記事では、その第2話として放送された『鏡の中の女』のあらすじ、登場人物とキャスト、感想、そしてネタバレや結末などをまとめています。
あらすじ
読唇術の達人である聾唖学校の教師・増本克子(中嶋朋子)は、カフェで鏡に映る女性の会話を読み取る。その女性は殺人を計画しているようだった…。このことを金田一耕助(池松壮亮)に伝える克子だったが、金田一は半信半疑だった。ところが二週間後、本当に事件が発生してしまう。ただし、殺害計画を立てていたはずのその女性自身が、トランクに詰められた死体となって発見されていた。
登場人物・キャスト
役名 | 俳優名 | 作中での役割 |
---|---|---|
金田一耕助 | 池松壮亮 | 私立探偵 |
増本克子 | 中嶋朋子 | 聾唖学校の教師 読唇術ができる |
河田重人 | 田中要次 | 【被害者】○△産業の専務 タマ子とカフェで話をしていた男性 |
倉持タマ子 | 中村ゆりか | 【被害者】河田の愛人 カフェで殺害計画を話していた女性 |
河田登喜子 | 高畑遊 | 河田重人の妻 カフェで夫とタマ子を監視していた女性 |
杉田豊彦 | 倉悠貴 | 河田家の運転手 |
由美 | 中島セナ | 河田重人と登喜子の娘 |
藤本文雄 | 神谷圭介 | 逗子のSホテルの従業員 |
運転手 | 小出圭祐 | トランクを運んだ運転手 |
古谷警部補 | 福地桃子 | 三鷹署の警部補 |
等々力警部 | ヤン・イクチュン | 警部 |
ネタバレ
金田一耕助と聾唖学校の教師・増本克子はカフェ「アリバイ」にいました。増本は金田一の後ろにある大きな鏡に映る男女に気づ き、読唇術で彼らの会話を読み取ります。女性は「ピストル、だめよ。音が出るから」「やっぱり、ストリキニーネね」「トランク、三鷹駅がいいわ」と話しており、増本はその内容をメニューの裏に書き留め、金田一に人殺しの相談をしているようだと伝えます。カフェには別の女性(河田登喜子夫人)もおり、鏡の二人を監視している様子でした。
二週間後、増本の言葉が現実となります。三鷹駅の宿直室で発見されたトランクの中から、カフェで増本が読唇術をした女性の死 体が見つかったのです。遺体は断末魔の苦悶を浮かべ、出血痕はなく、金田一はストリキニーネによる毒殺だと推測します。遺体からはダイヤの指輪を含む装身具が失われていました。トランクは「牟礼・山口良雄行き」となっていましたが、宛先がなく、異臭がしたために開封されたものでした。そして発送地は逗子でした。
遺体は河田重人の愛人・倉持タマ子と判明します。駆けつけた河田重人の妻・登喜子(カフェで監視していた女性)はタマ子の遺 体を見て叫び声をあげます。タマ子はかつて河田家に奉公していました。ところが、重人との関係が原因で暇を出されていました。
登喜子はタマ子に会っていないと嘘をつきます。夫は数日前から帰宅しておらず、捜索願いを出すつもりだったようでした。
河田家を訪れた金田一は、運転手の杉田豊彦から、重人がタマ子と会っていたこと、娘の由美が不行跡で退学になったのはタマ子のせいだという話を耳にします。
逗子の河田家別荘が捜索され、庭から河田重人のストリキニーネ中毒による死体が発見されます。別荘はホテルが管理しており、数日前に重人から宿泊と食事の注文が入っていました。料理を運んだ従業員は、裏木戸でネッカチーフとマスクをつけた女を目撃しており、この女だけが毒を盛る機会があったと考えられます。
重人とタマ子は毒殺され、重人は庭に埋められ、タマ子はトランクに詰められました。トランクの運び出しを指示したのもその女で、運転手はフードと眼鏡・マスクで顔を隠していたため正体は不明でした。古谷警部補は、なぜタマ子を庭に埋めずに運び出したのか?という疑問を抱きます。
捜査本部で増本はカフェでの読唇術の内容を詳細に語ります。
河田登喜子もメニューの裏を読んでいたことを認めますが、毒殺は否定。目撃された女は登喜子とは体型が違うという証言もあるようでした。娘の由美には確かなアリバイがありましたが、運転手の杉田と母親が関係していたこと、そして由美自身も杉田と関係があったことが示唆されます。
金田一は「一家のバランスが崩れれば、何もかもがめちゃめちゃになる」と呟きます。そして、この殺人計画を知っていた人物は誰かと問いかけ、自分を除外すると残るのは増本女史だと等々力警部を驚かせます。
真相
犯人は増本克子です。自分の読唇術の技術を金田一耕助に認めさせたい、プライドを証明したいという動機です。
金田一は増本がひどい近眼であり、カフェの距離でタマ子の唇を正確に読むことは不可能だったと指摘。
増本は、最初はいたずら心で嘘の読唇術をメニューに書きましたが、金田一がそれを真剣に受け止めなかったことにプライドを傷つけられ、自分の読唇術が本物だと証明するために、実際にその通りの殺人事件を起こしたと自白します。タマ子の遺体から消えていたダイヤの指輪が増本の犯行の決定的な証拠となります。
結末
増本は自らの技術を証明するために無関係の男女を殺害しましたが、被害者となった男女もまた、家庭崩壊や不倫といった問題を抱えた人物たちでした。
金田一は、もし自分がもっと増本のいたずらに乗って驚いていれば、彼女のプライドを傷つけずに事件を防げたかもしれないと悔やみます。面会室で増本は金田一に何も語らず立ち去り、その姿が金田一の心に残ります。金田一は現代社会のストレスが人間に何をしでかすか分からないと倦怠感を滲ませ、等々力警部に慰められます。
放送情報と原作情報
NHK BSプレミアム4Kにて2025年4月19日(土) 夜7:30に放送されました。また、NHK BSにて2025年5月8日(木) 夜8:30に放送予定です。
本作『鏡の中の女』は、横溝正史の短編集『金田一耕助の冒険』に収録されている作品の一つです。この短編集には、「霧の中の 女」「洞の中の女」「傘の中の女」「鞄の中の女」「夢の中の女」「泥の中の女」「柩の中の女」「瞳の中の女」「檻の中の女」「赤の中の女」といった「~の中の女」と題された短編が収められています。
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