『白鳥とコウモリ』は、人間の心の奥底にある光と闇を描いた読み応えのあるミステリーです。罪と罰、償い、家族愛など、様々なテーマが盛り込まれており、読後に深く考えさせられます。個人的には『東野圭吾版 罪と罰』だと思います。
あらすじ
弁護士・白石健介の刺殺事件。容疑者として逮捕されたのは、愛知県在住の男・倉木達郎。彼は犯行を自供するだけでなく、33年前に愛知で起きた未解決殺人事件についても自分が犯人だと告白する。しかし、被害者の娘・白石美玲と容疑者の息子・倉木和真は、それぞれの父親の供述に違和感を覚え、独自に真相を調べ始める…過去と現在が交錯する中、二人がたどり着いたのは、予想を遥かに超えた驚愕の真実だった。
感想
被害者家族と加害者家族、それぞれの苦悩や葛藤が丁寧に描かれていると思います。東野圭吾さんの作品らしく、緻密なプロットと予想を裏切る展開で、最後まで飽きないです。過去の罪と現在の罪が複雑に絡み合う様は圧巻でした。
高評価なポイント
- 緻密なプロットと巧妙な伏線
過去と現在の事件が複雑に絡み合い、読者を飽きさせない展開。伏線の張り方も巧妙で、最後にすべての点が線で繋がった時のカタルシスは格別! - 多角的な視点からの人間ドラマ
被害者家族、加害者家族、刑事、弁護士など、様々な立場の人物の心理描写が深く、感情移入しやすい。それぞれの正義や苦悩がリアルに描かれている - 現代社会の問題を反映したテーマ
冤罪、時効、ネットでの誹謗中傷など、現代社会が抱える問題が物語に織り込まれており、考えさせられる - 善と悪・光と影の対比
善と悪、光と影といった対比が物語全体を通して描かれており、人間の多面性を浮き彫りにしている - 予想を裏切る展開と衝撃の結末
物語が進むにつれて、二転三転する展開。最後の最後まで読者の予想を裏切り、衝撃的な結末へと導く
低評価なポイント
- 真犯人の動機がやや弱い
最後のどんでん返しは予想外ですが、動機がやや短絡的で納得できないかもしれないですね - 長めの小説…
飽きない工夫がされているとは思うけど…500ページを超える長編なので疲れてくるかもしれないです
ネタバレ注意
33年前、悪徳金融業者の灰谷を殺害したのは、弁護士の白石健介でした。灰谷は白石の祖母を騙し、その恨みを晴らすために衝動的に殺害しています。白石は弁護士になり罪を隠蔽します。その後、弁護士として順風満帆な人生を送っていた白石は、過去の罪を告白しようとします。それを知った福間淳二の孫である安西知希は、白石を殺害。知希は、過去の事件で濡れ衣を着せられた祖父の復讐を果たそうとしていました。
倉木達郎は知希を庇うために、自らが白石を殺害したと嘘の自白をしています。かつて、白石を庇ったことで福間淳二が自殺してしまった過去があり、今度は罪を償うために、自らの人生を犠牲にしようとしたわけです。ところが、事件の真相は美令と和真によって暴かれ、知希が真犯人であることが明らかになります。知希は、人を殺してみたかったという身勝手な理由で白石を殺害したのでした。
- 1984年の事件の真犯人
金融業者・灰谷昭造を殺害したのは白石健介 - 2017年の事件の真犯人
弁護士・白石健介を殺害したのは、浅羽織恵の息子・安西知希 - 倉木達郎の自供
倉木は安西知希をかばうために嘘の自供をしていた。また、白石健介が過去に犯した罪を償おうとしていたことを知り、その遺志を継ごうとした - 安西知希の動機
過去の事件の真相(祖父は冤罪で真犯人は白石だったということ)を知り白石健介に復讐しようとした…と思いきや「人を殺してみたかった」という動機だった
まとめ
本作は読み応えのあるストーリー、巧みな伏線回収、考えさせられるテーマが魅力で、東野圭吾さんのファンにはたまらない一冊だと思います。ぜひ、手に取ってその世界観を楽しんでいただきたいです!
続編
こちらの作品はシリーズ化されています!続編は『架空犯』です。
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