『獄門塾殺人事件』は『金田一少年の事件簿』のエピソードの一つで、アニメ「金田一少年の事件簿R」では第10話から第14話にかけて放送されました。スパルタ学習で有名な「極問塾」を舞台に発生する連続殺人事件が描かれています。天才犯罪者〈地獄の傀儡師〉こと高遠遙一が登場するエピソードで、高遠のシナリオ通りに怪人・スパロウが犯行を繰り返していきます。この記事ではあらすじ・ストーリー、ネタバレ、登場人物、感想などをまとめています。
あらすじ(ネタバレ注意)
金田一一と明智健悟の二人が探偵役となり、高遠遙一が仕組んだ事件に挑みます。事件は主に、同じ森の中にある別々の建物「太陽荘」と「月光荘」で発生し、すべて授業内容に見立てられた殺人となります。
File.1
留年を回避するため厳しい指導で知られる極問塾の合宿に参加することになったはじめ。塾を訪れた矢先、塾内で非常ベルが鳴り響き、駆けつけると理系の塾生・茂呂井連が毒殺されていた。茂呂井は手に「外部生徒の皆さんへ模範解答を相談室にて配布いたします」と書かれた紙片を握りしめており、そのほかの状況から、無差別殺人が疑われる。しかし、はじめは、犯人がマジシャンズセレクトのトリ ックを使い、茂呂井を狙って殺害したと推理する。事件には地獄の傀儡師・高遠遙一が関わっていることが判明し、はじめは高遠の挑戦を受ける。
- マジシャンズセレクトと同じトリック
全ての問題用紙にそれぞれ別の場所を指定したメモを挟み、犯人は茂呂井がどの席に着くのか見届け、その席に置いたメモに合わせて相談室に毒針付きの模範解答を用意した - 容疑者
ニセモノの模範解答(茂呂井を毒殺した針が仕込まれていた小冊子)の答えは正解だった。はじめは犯人が事前にテストの問題を知っていたと推理。事前に同じテストを受けて、答えを知っていたのはAクラスの生徒のみとなる(近衛、海堂、式部、鯨木、濱、霧沢、中屋敷、絵波、草太と講師の氏家、厳島)
(アニメは2014年6月7日放送)
File.2
はじめ、美雪、草太を含む塾生と講師たちは、山奥にある極問塾の合宿所へバスで向かう。合宿所は樹海の中にあり、太陽荘(文系)と月光荘(理系)に分かれていた。太陽荘には白ずきんの男が講師となり、月光荘には数学講師として明智警視が潜入していた。
合宿は超過密スケジュールで、授業は1コマごとに教室を移動する。深夜、はじめは美雪から、理系の海堂が近衛に「6人は同じ穴のムジナ」「茂呂井が殺害されて今は5人になった」と話していたことを知る。はじめは、茂呂井が殺される前に誰かが死んでいたことを察する。
- そば茶
絵波ゆりかはそば茶を飲まずに捨てている。これが後の事件に関わる伏線となる
(アニメは2014年6月14日放送)
File.3
太陽荘で授業中、文系の絵波ゆりかが体調不良を訴えトイレへ向かうが戻ってこない。厳島講師は絵波が脱落したと判断する。一方、月光荘では理系の近衛元彦がチョークを取りに行ったきり戻ってこなかった。氏家講師もまた厳島と同様に、逃げ出したと判断することになる。
その後、氏家が生物の授業で「二重螺旋構造」の小テストを行い、早々に終えた海堂が教室を出ていった。厳島の国語の授業では、ドストエフスキーの「悪霊」に関する小テストを行い、カンニングを疑われた鯨木が教室を出された。
そして深夜、氏家講師と明智警視は樹海で燃える近衛の遺体を発見する。その直後、月光荘で海堂瞳が赤と青のテープで巻かれて絶命しているのが見つかる。太陽荘では絵波が竹藪で竹に腹を貫かれて、鯨木大介が教室で首を吊って絶命していた。はじめと明智は、これらの事件が見立て殺人であり、授業内容に関連していることに気づく。
唯一アリバイのない霧沢透が犯人と思われたが、はじめと明智は彼が真犯人に罪をなすりつけられたスケープゴートだと推理し、はじめは英語講師の赤尾一葉が高遠遙一だと見抜くが…。
(アニメは2014年6月21日放送)
File.4
はじめと明智は、霧沢がスケープゴートだと推理し、それぞれ太陽荘と月光荘で捜査を進める。美雪は明智の指示で見取り図を作成し、このとき違和感を覚える。
はじめは塾生たちから事情を聞き、絵波がソバアレルギーだったことや、鯨木がカンニングをしていたことなどを知る。中屋敷からは、藍野が亡くなる前日に殺害された6人全員が塾を休んでいたことを聞く。そして草太からは、藍野が優秀だったためにいじめの標的となり、薬をすり替えられて死亡した過去が語られる。剣持警部からは、藍野が氏家の隠し子だったという情報が入る。美雪から送られてきた写真を見たはじめは、トリックの核心に気づき、「謎は全て解けた!」と宣言する。
(アニメは2014年6月28日放送)
File.5
はじめは皆を太陽荘の食堂に集め、今回の連続殺人事件の真相を明らかにしていく。
連続殺人は極問塾本校で起きた茂呂井殺害事件から始まった。真犯人スパロウは合宿中に6人をまとめて殺害しようとしていたが、、茂呂井は塾を辞めたため、模擬テストの時に犯行に及んでいた。
太陽荘および月光荘で起きた殺人は、いずれも授業中だったため、全員にアリバイがあり、誰にも犯行は不可能なはずだった。しかしここには、地獄の傀儡師・高遠によるアリバイトリックがあった。
まず、太陽荘と月光荘のスケジュール表をみると、月光荘で殺人が起きた時、太陽荘は休憩や食事などで誰にもアリバイがなく、逆に太陽荘で殺人が起きた時、月光荘は自由時間などで誰にもアリバイがないことがわかる。もしも犯人が、太陽荘と月光荘に1人ずついたとすれば、太陽荘の犯人は月光荘の犯人のアリバイが成立する絶妙のタイミングで犯行が可能となる。
被害者の近衛と海堂は偶然教室を出て行ったようにみえたが、犯人の仕掛けた罠だった。そんな罠を仕掛けることができたのは講師の氏家だけとなる。
近衛にチョークを取りに行かせただけでなく、海堂がテストを早く終えて教室を出たのも氏家の罠だった。小テストのとき、海堂の問題用紙にだけはヒントが書かれていた。
同じように太陽荘の絵波がトイレに行ったのも巧妙に仕組まれていた。実は昼食の携帯食に腹痛になる毒が盛られていた。そばアレルギーの絵波だけは解毒剤入りのそば茶を飲まなかったので、絵波だけが席を外すことになった。
鯨木がカンニングをして教室を出されたのも、犯人のトリックだった。太陽荘にいたもう1人のスパロウが鯨木のテキストを破き、テスト中にカンニングペーパーとして床に落としておいていた。
しかし月光荘と太陽荘は離れているため、移動だけで1時間かかってしまう。短い休憩時間の間に往復して犯行に至るのは不可能に違いなかった。だが、ここにもトリックがあった。
2日目、実は太陽荘には文系グループだけでなく理系グループもいたのだ。氏家は1日目の夜の散歩の時に理系グループを月光荘ではなく、太陽荘へと連れ出していた。そして、扉に鍵をかけるなどして文系と理系が鉢合わせしないようにしていた。『月光荘』および『太陽荘』と記された看板は、夜になるとランプに照らされて『月光荘』になる細工が仕込まれていた。
証拠は太陽荘に残った理系グループ(月光荘にいたメンバー)の指紋である。ずっと月光荘にいたメンバーの指紋が太陽荘に付着しているはずがない。謎解きのために集められた理系グループの指紋が太陽荘に付着していてもおかしくないが…、理系グループは手袋をしていた。
近衛と海堂は月光荘で死体がみつかったが、実際は太陽荘で殺害されたあと、川に放り込まれて下流の月光荘まで運ばれていた。この時、近衛の足が濡れてしまったため、氏家は燃えていない足に水をかけていた。つまり、全ての見立て殺人は近衛の遺体を燃やした不自然さを誤魔化すためのものだった。
もう1人の犯人、太陽荘のスパロウの正体は、近衛が残した「117」というダイイングメッセージから明らかになる。これは「ハマ」の書きかけだった。すなわち犯人は濱秋子だった。
真相を暴いたはじめは、犯行をプロデュースした高遠遙一も追い詰めるが、高遠は逃亡してしまう。
(アニメは2014年7月5日放送)
登場人物
ネタバレを含む内容になっています
- 金田一一
主人公。文系。留年寸前の成績を心配した美雪に連れられ、極問塾の合宿授業に参加することになる。明智警視からの依頼で、高遠遙一の「犯罪ガイドマップ」の調査も兼ねている。塾の超過密スケジュールに精神的に追い詰められたりもする。明智から検死の方法を教わり、初めての検死に挑む(アニメ版では携帯没収後、明智から連絡用携帯を渡される) - 七瀬美雪
ヒロイン。理系。成績優秀だが、一に付き添って合宿に参加する。事件のトリックに関わる重要なヒントを偶然目撃する。終盤では、一からの頼み事を忠実に実行し、犯人を追い詰める決定的な証拠を見つけ出す役割を担う(アニメ版では携帯没収後、明智から連絡用携帯を渡される) - 明智健悟
警視庁捜査一課の警視。高遠遙一の「犯罪ガイドマップ」の情報を得て、極問塾の数学講師として潜入する。大学時代は「伝説の講師」と呼ばれるほど優秀だったらしい - 剣持勇
警視庁捜査一課の警部。今回は本庁で情報収集を担当し、一に重要な情報を提供する。終盤、部下を引き連れて高遠遙一逮捕のための包囲網を敷く - 高遠遙一
金田一一の宿敵、地獄の傀儡師。獄中から犯罪ガイドマップを送り、一と明智に挑戦する。脱獄後、英語講師の赤尾一葉に変装して極問塾に潜入。教師としては有能な一面も見せるが、氏家貴之と濱秋子を操り、復讐殺人をプロデュースする。最後は一と明智の追跡をかわし、再び逃亡する(ドラマ・アニメ版ではこの事件が一との初対決)
極問塾塾生
- 村上草太
不動高校2年生で極問塾塾生。文系Bクラス。美雪と共に合宿に参加する。藍野修治とは親友だった。事件発生後、美雪に代わって金田一一の相棒的な役割を担う。藍野へのいじめについて一に語る(アニメ版では冒頭で一に弁当を食べられる) - 中屋敷学
極問塾塾生。文系Aクラス。フレンドリーな性格。藍野修治の死にいじめグループが関わっているのではないかと疑念を抱いていた。自身の推理を披露するが、一に否定される。事件解決に協力的な姿勢を見せる(ドラマ版ではいじめグループのリーダー格となり、殺害される) - 式部清子
極問塾塾生。文系Aクラス。メガネをかけた可愛らしい少女。女の子に対して態度を変える一面がある。茂呂井連と入れ替わる形でAクラスに昇格した。合宿中に携帯を隠し持っていたようだが詳細は不明。事件解決に協力する(アニメ版ではクールな性格に変更。ドラマ版では佐木竜二が彼女の立ち位置を担う) - 濱秋子
極問塾塾生。文系Aクラス。ショートカットの地味ながらも可愛い少女。どこか暗い影を背負っている。事件の真犯人「スパロウ」の一人(太陽荘側の実行犯)。家庭の崩壊といじめで自殺未遂を図った過去があり、藍野修治に救われた。いじめグループに騙され、藍野の薬をすり替えてしまい、彼の死の直接の原因を作ってしまう。藍野の死後、いじめグループに脅され、高遠遙一の誘いに乗り、氏家貴之と共に復讐殺人を実行する。氏家とは互いを庇い合う関係だった - 茂呂井連
元極問塾塾生。元文系Aクラス。得意科目は英語。ぽっちゃり体型で、鯨木大介のパシリだった。事件の最初の犠牲者。極問塾本校で毒針のトリックにより殺害された。いじめグループのメンバーだったが、気弱な性格 - 近衛元彦
極問塾塾生。理数系Aクラス。得意科目は化学。事件の二番目の犠牲者で、合宿中に化学の「燃焼」に見立てて燃やされる。いじめグループのリーダー格の一人であり、藍野修治の死に関与していた。死の間際にダイイングメッセージを残す - 絵波ゆりか
極問塾塾生。文系Aクラス。得意科目は古文。重度のそばアレルギー。事件の三番目の犠牲者で、「竹取物語」に見立てて竹やぶで遺体で発見される。いじめグループのメンバーであり、藍野修治へのいじめに関与していた。他のメンバーに比べると社交的な描写もあるが、藍野の死を悔いる様子はない - 鯨木大介
極問塾塾生。文系Aクラス。得意科目は国語。大柄でヤンキー風の見た目。短気で当たり構わず怒鳴る。成績は良かったが、カンニングをするようになった。事件の五番目の犠牲者で、ドストエフスキーの「悪霊」に見立てて吊された遺体で発見される。いじめグループのメンバーであり、藍野修治へのいじめに関与していた - 海堂瞳
極問塾塾生。理数系Aクラス。得意科目は生物。事件の四番目の犠牲者で、生物の「二重螺旋構造」に見立てて赤と青のビニール紐で巻かれた遺体で発見される。いじめグループのリーダー格の一人であり、藍野修治の死に関与していた。藍野の死を「ゲーム」と称し、凶悪な表情で「私たち六人は同じ穴のムジナ」と発言する - 霧沢透
極問塾塾生。理数系Aクラス。得意科目は数学。痩せ形で細目の少年。気弱な性格。親は医者だが、藍野修治への劣等感から成績が落ち、勘当寸前で自習室に入れられる。事件の最後の犠牲者とされ、自習室で死んでいるのがみつかる。自習室に見立て殺人の道具があったことから犯人だと断定される。しかし実際は真犯人「スパロウ」に罪をなすりつけられたスケープゴートだった。いじめグループのメンバー - 川上友花
極問塾塾生。理数系Aクラス。特に事件には関与していない(アニメ版では川上優子に改名)
極問塾講師
- 氏家貴之
極問塾主任講師。物理・生物・化学担当。48歳。白髪のオールバック。もとは建築家志望だったらしく、合宿所の改築を自ら行ったらしい。事件の真犯人「スパロウ」の一人で、月光荘側の実行犯。藍野修治の実の父親(隠し子)。息子の死の真相を知り、精神的に追い詰められる。高遠遙一に操られる形で、濱秋子と共にいじめグループへの復讐殺人を実行する。最後は高遠の毒矢で殺されそうになった濱を庇って死亡する(ドラマ版では怪我のみで死亡しない) - 厳島蘭子
極問塾副主任講師。国語・古文・漢文担当。30歳。クールな性格で授業は厳しいが、根は優しく面倒見が良い。藍野修治の持病と境遇を知り、気にかけていた。薬を服用する場面がある(ドラマ版では堂島耕平が彼女の立ち位置を担う) - 赤尾一葉
極問塾講師。英語担当。28歳。顔にゴムマスクのようなものを被った謎の男。その正体は地獄の傀儡師、高遠遙一
その他の人物
- 藍野修治
故人。元極問塾塾生。氏家貴之の実の息子(隠し子)。アルバイトをしながら塾に通う苦学生で、重い持病を抱えていたが、成績は全科目トップだった。いじめグループに妬まれ、いじめの標的となる。いじめグループに騙された濱秋子によって薬をすり替えられ、持病により死亡する - 溝岸刑事
不動山署捜査一課の刑事。ヅラらしい。茂呂井殺害事件の初動捜査を担当。金田一一や明智警視の正体を知らないまま高慢な態度をとるが、正体を知ると態度を急変させる(ドラマ・アニメ版ではヅラネタなしで、良識的な人物として描かれる)
ドラマ版オリジナルキャラクター
- 佐木竜二
村上草太と式部清子の立ち位置を兼ねる。濱秋子に仄かな思いを寄せていた。藍野修治(ドラマ版ではマー・タイチ)へのいじめを知りながら止められなかったことを悔いているが、終盤で勇気ある行動を見せる - リー・バイロン (李白龍)
香港九龍財宝殺人事件にも登場した刑事で、ICPOの捜査官。原作の明智健悟の立ち位置を担う。高遠遙一を追っており、金田一一に協力を依頼する - マー・タイチ (馬 大和)
韓国からの留学生。原作の藍野修治に相当する人物。氏家貴之の息子。いじめグループにいじめられ、薬をすり替えられて死亡する - リン・ジーション (林 智雄)
台湾からの留学生。原作の近衛元彦に近い立ち位置だが、性格は霧沢透に近い。いじめグループのメンバー - メイ・スーイン (梅 素鶯)
台湾からの留学生。原作の絵波ゆりかに近い立ち位置。いじめグループのメンバー - チェン・ジェンロン (陳 剣隆)
台湾からの留学生。原作の鯨木大介の立ち位置。いじめグループのメンバー - 堂島耕平
極問塾副主任教師。原作の厳島蘭子の立ち位置。頑固で偏屈だが、根は優しい
感想
金田一一と明智健悟の二人がそれぞれ別の場所で捜査を進めます。探偵役が二人いて、それぞれ二手にわかれてストーリーが進んでいく構成も特徴のひとつだと思います。地獄の傀儡師・高遠遙一の登場や、マザーグースの詩に見立てた殺人など、見どころも多いです。
被害者であるいじめグループのメンバーは非常に身勝手で救いようのないクズでしたね…。特に海堂の態度が悪いです。
犯人である濱秋子と氏家貴之に対しては、被害者としての側面や藍野への思いに同情してしまいます。特に氏家が濱を庇うシーンは感動的でもありました。
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