『誰が勇者を殺したか 勇者の章』は、駄犬氏による人気ライトノベルシリーズの3作目です。シリーズ第1作目『誰が勇者を殺したか』に登場した勇者たちの過去の物語が描かれています。シリーズの第1作目を読んでから読むことで、より深く楽しむことができます。この記事では、あらすじと登場人物、ネタバレ、感想などをまとめています。
あらすじ
魔王が倒されて数年後、王国では慰霊祭が開催され、勇者たちは亡くなった者たちに祈りを捧げていた。祭りの喧騒に包まれる王都で、勇者はかつて旅の始まりで出会ったリュドニア国の姫と再会する。姫は緊張した面持ちの勇者に対し、冷たく重い声で「リュドニアの勇者を殺したのはあなたですか」と尋ねる。勇者は、王子を殺したのは魔物シェイプシフターであり、姫もそのことを知っているはずだと伝える。
魔王が倒される前――国王陛下から正式に勇者として認められたアレスは、仲間である騎士のレオン、僧侶のマリア、そして賢者のソロンと共に旅を始める。しかし、道中、賢者ソロンの提案により、勇者一行はリュドニア国で魔物討伐の経験を積むことになる。そこでアレスは、仲間たちに協調性がないことに気づく。
登場人物
- 勇者アレス
国王陛下から正式に勇者として認められた人物。旅の途中でリュドニア国に立ち寄り、経験を積む - 剣聖レオン
アレスの仲間。騎士 - 聖人マリア
アレスの仲間。僧侶 - 賢者ソロン
アレスの仲間。賢者。旅の経験不足を指摘し、リュドニア国での実戦経験を提案 - エレナ
リュドニア国の姫。慰霊祭で勇者に「リュドニアの勇者を殺したのはあなたですか」と問い詰める - カルロス
リュドニア国の王子。リュドニアの勇者と呼ばれ、国民からの信頼を集めている。勇者という言葉に葛藤を抱える
前作
シリーズ第一弾『誰が勇者を殺したか』と第二弾『誰が勇者を殺したか 預言の章』があります。どちらも読んでおくと、第三弾の『勇者の章』をより楽しめます。
ネタバレ
勇者一行がリュドニア国で魔物討伐の経験を積もうとすると、リュドニアの領内に魔王軍の魔物たちが現れる。統率の取れた魔王軍に弱点をつかれ、アレスたちは窮地に陥ってしまう。そこへ〈リュドニアの勇者〉と呼ばれる王子カルロスと彼に従う騎士団が現れ、アレス一行は助け出される。安堵する一同だったが、賢者ソロンはなぜ領内に魔王軍がいるのかという疑問を口にする。カルロス王子によれば、人間側にシェイプシフターというどんな姿にでもなれる魔物の内通者がいるとのことだった。魔王軍が喧伝していたその魔物の存在が不明なまま、アレスたちは城内を調査。カルロス王子が語るシェイプシフターは、どんな姿にでも変われる魔物でありながら、実は聖なるものとして、呼び出した者の願いに応え、最後の願いを受け継いでいた。
感想
二転三転する展開や冒険の途中で繰り広げられる犯人探しのような事件は、ミステリー小説として楽しめます。印象的なのは、勇者という概念の多角的な描写です。預言によって選ばれた者、自らの力で称号を勝ち取った者、そして誰かの願いを背負う存在としての勇者など。それぞれの勇者が抱える思い、重責、葛藤、そして破滅していく姿が記憶に残りそうです。
結末は後味が悪いかもしれませんが、それは物語のテーマを深く追求した結果であり、登場人物たちの心情を理解すればするほど、その結末に納得できるような気がします。
すでにシリーズを読んでいる方は、ぜひ本作を手に取り、新たな視点から物語を再解釈してほしいです。未読の方も、この機会に〈ダレユウ〉シリーズの世界に触れてみることを強くお勧めします!
- 手堅いミステリー要素
勇者一行が犯人探しのような事件に巻き込まれ、話が二転三転する展開は、冒険譚の中でミステリーを読んでいるような感覚で非常に楽しめます - 「勇者」の多角的な描写
シリーズを通して勇者と呼ばれる人物が複数登場し、それぞれの勇者にまつわる考え、葛藤、そして破滅していく姿が描かれます。特に本作では、その中に美しさを見出す描写があり、この言葉の意味を深く考えさせられる奥深い作品となっています
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