2001年4月21日に公開された劇場版名探偵コナン『天国へのカウントダウン』は劇場版名探偵コナンシリーズ第5作目で、黒の組織が劇場版初登場し、灰原哀と少年探偵団にスポットが当たる作品となっています。この記事ではあらすじ、登場人物、ネタバレ、小ネタ、感想などをまとめています。
あらすじ
コナン、阿笠博士、少年探偵団はキャンプからの帰り道、西多摩市に完成したばかりのツインタワービルを訪れる。そこで毛利小五郎、蘭、園子と遭遇し、ビルオーナーの常盤美緒の招待で内部を見学することに。そこでコナンはビルの前にジンの愛車である黒のポルシェ356Aが停まっているのを目撃してしまう。
数日後、そのツインタワービルで市議会議員の大木岩松が殺害される事件が発生。現場には割れた猪口が残されていた。さらにTOKIWA専務の原佳明も殺害されてしまう。現場には割れた猪口が残されており、警察は連続殺人事件として捜査を進めることになる。そしてツインタワービルのオープンパーティー当日、オーナーの常盤美緒が舞台上で殺害される。コナンが事件の真相に迫る中、ビル内で爆弾が爆発する……。
登場人物
主要キャラクター
- 江戸川コナン / 工藤新一
主人公。黒の組織の動向と事件の謎を追う - 毛利蘭
ヒロイン。ツインタワービルからの決死のダイブでコナンを救う - 灰原哀
キーパーソン。黒の組織の元メンバー。夜な夜な、亡き姉・宮野明美が生前借りていた部屋の留守番電話に電話をかけ、孤独を紛らわせていた。この行動がジンに知られ、灰原がツインタワービルのオープンパーティーに出席するという情報が組織に渡ってしまう - 毛利小五郎
蘭の父。パーティーのゲームで高級車を獲得するが… - 阿笠博士
コナンの協力者。犯人追跡メガネに赤外線望遠機能を追加 - 吉田歩美
少年探偵団の一員。コナンの隣にいると体内時計が正確になる特技を持つ - 小嶋元太
少年探偵団の一員。灰原を救うために男気を見せる - 円谷光彦
少年探偵団の一員。灰原への想いから彼女を救うために奮闘する - 鈴木園子
蘭の親友。髪型を灰原に似せたことで誤認され、ジンに狙撃される - 目暮十三、白鳥任三郎、高木渉、千葉和伸
警視庁の刑事たち。事件の捜査を担当 - トメさん
警視庁鑑識課の鑑識官
黒の組織
- ジン
組織の実行部隊リーダー。シェリー(灰原)抹殺のためツインタワービルに爆弾を仕掛け、狙撃を試みる - ウォッカ
ジンの腹心。爆弾の作動を担当し、コナンたちを追い詰める - 宮野明美
灰原の姉(故人)。留守電の声とコナンのイメージで登場
事件関係者
- 大木岩松(CV:渡部猛)
西多摩市市議会議員。ツインタワー建設を後押ししていた人物。第1の被害者 - 原佳明(CV:橋本晃一)
TOKIWA専務、プログラマー。実は黒の組織の一員。第2の被害者 - 常盤美緒(CV:藤田淑子)
TOKIWA社長、ツインタワービルのオーナー。小五郎の大学の後輩。第3の被害者 - 沢口ちなみ(CV:久川綾)
美緒の秘書 - 風間英彦(CV:小杉十郎太)
ツインタワービル設計者。『時計じかけの摩天楼』の森谷帝二の弟子 - 如月峰水(CV:永井一郎)
日本画家。富士山の絵で有名
ネタバレ
真犯人は日本画家・如月峰水です。 如月の動機は、長年愛し、3年前にアトリエ兼自宅まで建てた丘からの富士山の眺めが、ツインタワービルによって「真っ二つに割られた」ことへの激しい恨みでした。 割れた猪口は「ビルで分断された富士山」を意味しており、美緒殺害現場で猪口が割れていなかったのは、美緒の遺体が如月の描いた富士山の絵を割るように吊るされていたためでした。
原佳明は如月に殺されたのではなく、黒の組織のコンピューターにアクセスして機密データを盗んだため、ジンに粛清されていました。原が握っていた「銀のナイフ」は、ローマ字でGIN、つまり「ジン」を意味していました。割れた猪口が原殺害の現場に置いてあったのは、如月が遺体を発見し現場に残したからです。お猪口に血痕がついていなかったのは、血が乾いた後に置かれたからであり、如月の偽装工作を示唆していたわけです。
全てを見破られた如月は最終的に服毒自殺を図りますが、コナンの麻酔銃で阻止されます。
ジンとウォッカはツインタワービルを舞台に、原が盗んだ組織の機密データを爆破して物理的に消去することと、シェリー(灰原)を抹殺しようとしていました。爆破後、ジンはエレベーターで脱出しようとする灰原を狙撃しますが、撃ったのは灰原ではなく、灰原と同じ髪型の園子でした。灰原の殺害には失敗することになりますが、当初の目的であるデータの破壊は達成したため、深追いはせずに撤退します。原殺害事件の真相は迷宮入りです。
結末
オーナーの常盤美緒が殺されたあとに、黒の組織が仕掛けた爆弾が爆発します。コナンたちはエレベーターで逃げようとしますが……、コナンと蘭はビルのA塔に取り残されてしまいます。しかし、蘭が消火ホースを体に巻き付け、コナンを抱きかかえてA塔45階からダイブしたことで、ふたりはB塔への退避に成功します。ところが、A塔60階に少年探偵団が取り残されたままでした。このことを知ったコナンは、ターボエンジン付きスケートボードで再びA塔へ向かいます。合流後、屋上でヘリ救助を待つことになりますが、ヘリポートも爆弾で炎上してしまいます。
絶体絶命の状況でコナンは、パーティー会場に展示されていたフォード・マスタング・コンバーチブルに乗り、爆風の勢いでB塔屋上のプールへ飛び移るという脱出計画を立てます。 爆発と同時に発車するため、自分だけB塔に残ろうとする灰原を元太が連れ戻し、光彦は落下しそうになった灰原の手を掴み、歩美はコナンと一緒にいるときの鼓動を感じ、正確に30秒を計測します。うまく発車したマスタングでしたが、目の前にツララが…!そのツララも、コナンがキック力増強シューズを利用して破壊し、車は無事にプールに着水。全員が奇跡的な生還を果たします。その後、コナンが車の運転の腕前について尋ねられ、「ハワイでオヤジに…」と答えるお約束のシーンで締めくくられます。
小ネタ・トリビア
- 「天国へのカウントダウン」のサブタイトル
劇場版コナンで唯一「○○の××」という形式ではない - 舞台のモデル
ツインタワービルはマレーシアのペトロナスツインタワーがモデル - 少年探偵団の活躍
従来の作品では脇役的な立ち位置だった少年探偵団が、終盤で大活躍を見せる初の作品 - オープニングの語り
阿笠博士が担当。コナン以外のキャラクターがオープニングの語りを担当したのは珍しい - 灰原の計算式
ビルからの脱出に必要な計算式は、監督の弟と科学者に協力してもらい、理論上は正しいが 実際に成功させるのは奇跡が必要なものとして設定されている - 白鳥警部の声優交代
塩沢兼人さんの逝去に伴い、本作から井上和彦さんが担当 - 10年後の姿
作中の機械で予測される各キャラの10年後の姿はOVA『10年後の異邦人』でも活用された。歩美の未来の姿は青山剛昌氏が原画を担当
感想と考察
黒の組織が劇場版に初登場した作品です。ジンの存在に緊張感があります。爆破によるパニックや蘭のダイブ、少年探偵団全員が力を合わせた軌跡の脱出など、みどころがたくさんです。この劇場版からアクションがより派手になり、エンタメ性が高まったとも言われているみたいでして、非現実的に思える部分もあるかもしれないですが、「あれれーそんあことあるの!?」みたいな感じがイイです。
灰原哀の姉・明美への想いが物語の展開に大きく関わっている点も原作ファンにとっては嬉しい要素です。原作漫画と映画は別の世界線の話というイメージがあった中で、両者のつながりがみえると、「原作だけではなく映画も」といった具合に楽しみが増えていきます。
如月峰水の動機は「富士山が見えなくなったから」でした。如月は人生をかけて富士山を描き続けた画家でしたので、殺人に値するほどの絶望だったといえます。