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瞳の中の暗殺者|あらすじ・ネタバレ解説【名探偵コナン映画】

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2000年4月22日に公開された劇場版名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』は、警察官を狙った連続殺人事件が起きる中で、毛利蘭が記憶喪失になってしまうエピソードです。劇場版第4作目にして、20世紀最後の劇場版コナン作品となっています。この記事ではあらすじ、登場人物、ネタバレ、小ネタ、感想などをまとめています。

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あらすじ

土砂降りの雨が降る米花公園交差点で、少年探偵団が信号待ちをしていると、公衆電話から出てきた米花警察署の警部補・奈良沢治が、突如何者かにサイレンサー付きの拳銃で射殺されてしまう。コナンが駆け寄ると奈良沢は左胸を掴むようなダイイングメッセージを残して息絶える…。
警察は奈良沢が警察手帳を示したとし、左利きの人物が犯人と断定して捜査を開始する。その夜、城南警察署の巡査部長・芝陽一郎も自宅マンションの駐車場で射殺される。芝の右手にも警察手帳が握られていた。二件もの刑事殺しに警察内部は騒然とする。
毛利小五郎が事件の概要を聞き出そうとしても、目暮警部や白鳥警部は「Need not to know(知る必要のないこと)」という警察の隠語を突きつけ小五郎を遠ざける。どうやら事件には警察上層部が関与しているようだった。

数日後、白鳥警部の妹・沙羅の結婚を祝うパーティーが米花サンプラザホテルで開催され、コナンたちも出席することに。会場には多数の警察関係者のほか、小田切敏郎刑事部長とその息子・敏也、そして白鳥の主治医でもある心療科医・風戸京介の姿もあった。和やかな雰囲気の中、突然ホテルで停電が起き、トイレにいた佐藤刑事が何者かに銃撃され、重体となってしまう。そして、佐藤刑事の隣にいた毛利蘭は、間近で銃撃されたことによるショックで気を失う。蘭は病院で意識を取り戻すが、事件に関する記憶だけでなく、コナンや両親、友人たちの記憶までをも失っていた。蘭は犯人の顔を目撃したかもしれず、口封じのために命を狙われる可能性があった。実際、退院した蘭は駅のホームで何者かに線路へ突き落とされてしまう。

登場人物

レギュラーキャラクター

  • 江戸川コナン(工藤新一) (声: 高山みなみ/山口勝平):
    主人公。大人顔負けの推理力と洞察力を発揮するだけではなく、ハワイで優作に教わったというボート操縦術や、超人的なスケートボード技術も披露する。なお、新一としての登場は、回想シーンと蘭との電話越しでの会話のみ
  • 毛利蘭 (声: 山崎和佳奈):
    ヒロイン。佐藤刑事が銃撃された現場に居合わせ、そのショックと自責の念から記憶喪失に陥る。日常生活に必要な記憶は残るものの、コナンや両親のことは忘れてしまう。記憶を失う前に犯人の顔を見た可能性が高く、命を狙われる
  • 毛利小五郎 (声: 神谷明):
    蘭の父親。「眠りの小五郎」として有名な私立探偵。娘の記憶喪失と命の危機に、父親としてこれまでにないほど真剣な態度をみせる。妃英理へのプロポーズの言葉も明かされる
  • 目暮十三 (声: 茶風林):
    警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係の警部。当初は警察内部の事情から事件の情報を伏せようとするが、蘭が記憶喪失になるという事態に直面し、職を辞する覚悟で小五郎に事件の全容を打ち明ける
  • 阿笠博士 (声: 緒方賢一):
    コナンの正体を知る数少ない人物の一人。トロピカルランドで蘭が犯人に狙われた際、身を挺して蘭を庇い、肩を負傷する
  • 妃英理 (声: 高島雅羅):
    蘭の母親で、法曹界のクイーンと呼ばれる敏腕弁護士。小五郎とは別居中だが、記憶喪失になった蘭の世話をするため、一時的に探偵事務所で同居する
  • 吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦 (声: 岩居由希子/高木渉/大谷育江):
    少年探偵団のメンバー。蘭の危機を察し、「蘭ねえちゃんを守り隊」を結成。それぞれが用意した個性的なおもちゃの武器が、意外な形で役に立ったりする
  • 灰原哀 (声: 林原めぐみ):
    コナンの正体を知る人物。蘭の記憶喪失をみて「できるなら私も記憶を無くしたい」と、自身の過去にまつわる複雑な胸の内を垣間みせる(すぐに冗談だとおどけて本心を隠す)
  • 鈴木園子 (声: 松井菜桜子):
    蘭の親友で鈴木財閥の令嬢。記憶喪失になった蘭の傍らで「たとえ記憶が戻らなくても、あたしは一生友達だからね…」と号泣するなど、蘭との深い友情が描かれる
  • 白鳥任三郎 (声: 塩沢兼人):
    警視庁捜査一課のキャリア組警部。当初は「Need not to know」と事件の情報を遮断するが、佐藤刑事が銃撃され、蘭が記憶喪失になったことで、事態の深刻さを認識し、目暮警部と共に小五郎へ情報を提供する
  • 高木渉 (声: 高木渉):
    警視庁捜査一課の刑事。佐藤刑事への淡い想いを抱いている。蘭の護衛を務めるが、佐藤が撃たれたトラウマから気を取られたり、友成真の誤認逮捕に繋がるなど、いくつかの失態をさらす
  • 千葉和伸 (声: 千葉一伸):
    警視庁捜査一課の刑事。劇場版初登場。高木刑事と交代で蘭の護衛を務める。監視対象を見逃したりもする
  • 佐藤美和子 (声: 湯屋敦子):
    警視庁捜査一課の刑事。劇場版初登場。格闘技と射撃に長けた実力者。1年前の仁野保変死事件の再捜査に関わっていたため犯人に狙われ、米花サンプラザホテルの化粧室で銃撃され瀕死の重傷を負う
  • 栗山緑 (声: 百々麻子):
    妃英理の秘書。本作で初めて名前が設定された。コナンに蘭がトロピカルランドに行ったことを教えるなど、重要な連絡役を担う

オリジナルキャラクター

  • 仁野環(じんの たまき) (声: 深見梨加):
    ルポライター。自殺したとされる兄・仁野保の妹。兄のことは嫌っていたが、その死が自殺ではないと疑い、真相を探るためにコナンに協力する。左利きを右利きに矯正した過去があり、無意識に左手を使う癖がある
  • 友成真(ともなり まこと) (声: 森川智之):
    フリーター。友成信勝警部の息子。父が仁野保事件の捜査中に心臓発作で亡くなったのは警察の責任だと思い込み、警察に深い不信感と恨みを抱いている。連続殺人事件の最重要容疑者として指名手配される
  • 小田切敏也(おだぎり としや) (声: 江川央生):
    ロック歌手。小田切敏郎刑事部長の息子。連続殺人事件の容疑者の一人。父親との確執が深く、その反動からか、仁野保が薬の横流しをしていた事実を突き止め、恐喝していた。
  • 風戸京介(かざと きょうすけ) (声: 井上和彦):
    米花薬師野病院心療科医。白鳥警部を始め多くの警察官のカウンセリングを担当する名医。記憶喪失になった蘭の診察も担当し、親身に接する姿をみせる
  • 小田切敏郎(おだぎり としろう) (声: 中田浩二):
    警視庁刑事部部長(警視長)。小五郎の元上司で、居合の達人。息子・敏也との関係は険悪ですが、「真実を明らかにすることこそ警察の仕事」という強い信念を持ち、独自に事件の再捜査を進めていた。左利き
  • 仁野保(じんの たもつ) (声: 内田直哉):
    東都大学付属病院外科医師。今回の事件の発端となった、1年前の夏の変死事件の被害者。腕も性格も悪く、裏で薬の横流しを行うなど素行に問題があり、周囲からは嫌われていた。自宅で右の頸動脈を切断して失血死した状態で発見され、当初は自殺と断定されている
  • 奈良沢治(ならさわ おさむ) (声: 島香裕):
    米花警察署警部補。連続射殺事件の第一の被害者。死の間際に左胸を掴むようなダイイング・メッセージを残す。小田切敏郎から仁野保事件の再捜査を命じられていた
  • 芝陽一郎(しば よういちろう) (声: 山野井仁):
    城南警察署巡査部長。連続射殺事件の第二の被害者。マンションの地下駐車場で射殺体が発見され、右手には警察手帳が握られていた
  • 友成信勝(ともなり のぶかつ) (声: 大山高男):
    警視庁捜査一課警部。友成真の父親で、目暮警部の先輩。1年前、仁野保事件の張り込み中に持病の心臓発作で倒れ 、病院に運ばれるも手術中に息を引き取る。息子・真が警察を恨むきっかけ
  • 白鳥沙羅(しらとり さら) (声: 大原さやか):
    白鳥警部の妹で弁護士。婚約パーティーの最中に佐藤刑事が銃撃されるという事件に遭遇する
  • 晴月光太郎(はれつき こうたろう) (声: 山野井仁):
    画家。白鳥沙羅の婚約者。プロポーズは苦手な様子
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ネタバレ

連続殺人事件の真犯人は、白鳥警部の主治医であり、記憶喪失になった蘭の診察も担当していた米花薬師野病院の心療科医・風戸京介(かざと・きょうすけ)です。
風戸は元々、東都大学附属病院で「黄金の左腕」と称されるほどの天才外科医でした。そんな風戸の人生が狂い始めたのは約7年前に外科医・仁野保と行った共同手術中でした。この時、仁野はわざと風戸の左手首をメスで切りつけていました。風戸は利き腕を失い、外科医としての道を絶たれてしまいます。

外科医を続けることができなくなり、心療科へ転向した風戸は、事件から約6年後、偶然仁野と再会。二人で酒を飲んで、風戸が手術中の事故について問い詰めると、仁野はそれが故意によるものだったと白状します。この告白に激しい怒りと復讐心を抱いた風戸は、その場で仁野を自殺に見せかけて殺害することになります。

その後、風戸はカウンセリングに訪れていた奈良沢刑事の口から仁野の事件が警察内部で再捜査されることを知ります。自身の罪が露呈することを恐れた風戸は、自己保身のために、仁野事件の再捜査に関わる奈良沢刑事や芝刑事を次々と襲撃し、口封じを図りました。さらに、佐藤刑事を銃撃した現場に居合わせた蘭が自身の顔を目撃したため、記憶を失った蘭が真実を思い出す前に殺害しようと執拗に狙うようになります。

  • 奈良沢刑事のダイイングメッセージ
    奈良沢刑事が左胸を掴んだのは「警察手帳」を示したのではなく、心療科医の「心(こころ)」を指していました
  • 芝刑事の警察手帳はトリック:
    第二の被害者である芝刑事が警察手帳を握っていたのは、風戸が仕掛けたトリックでした。風戸は警察が奈良沢のダイイングメッセージを「警察手帳」だと誤解したことを知り、このトリックを仕掛けることになります
  • 硝煙反応隠蔽トリック:
    佐藤刑事は米花ホテルの女性用トイレで銃撃され、重傷を負います。このとき風戸は硝煙反応を残さないようにするため、まず、手術用のゴム手袋を着用し、直接火薬に触れないようにしました。さらに、傘の先端に小さな穴を開け、そこから銃口を突き出して発砲しています。これにより、銃撃時に発生する火薬の燃えかすや煙が傘の内部に留まり、風戸の手に直接硝煙が付着するのを防げます。発砲後、傘を閉じて傘立てに戻すことで、証拠を隠蔽し、あたかも誰かの忘れ物であるかのようにみせています
  • 毛利蘭の殺害
    風戸は記憶が不完全な蘭を銀座の駅で線路へ突き落とそうとしたり、トロピカルランドで銃を乱射して蘭を含む目撃者を一掃しようとしたりします。これらの犯行は、警察を恨むフリーターの友成真に罪をなすり着けようとしています

結末

風戸に追い詰められ、トロピカルランドの「水の広場」へと逃げ込んだコナンと蘭。ここでコナンは新一と蘭の思い出がつまった「2時間に一度しか見られない噴水」を利用しようとします。風戸に自身の推理を披露しながら時間稼ぎをし、噴水が吹き上がるタイミングを待ちます。この時、コナンがかつて蘭の頬に押し当てたコーラの缶が、犯人に撃たれてリュックから噴出し、それが蘭の記憶のピースを繋ぎ合わせるきっかけとなります。
噴水が勢いよく吹き上がり、水が壁のように二人を囲むと、蘭の瞳に佐藤刑事が撃たれたときに見た「傘から突き出た銃口」と、新一との思い出の噴水の光景が重なります。
蘭が「どうしてこんなに守ってくれるの?」とコナンに問い掛けると、コナンは新一の声で「オメエのことが、好きだからだよ…この地球上の、誰よりも…」と告白します。その瞬間、蘭は全ての記憶を取り戻すことに――記憶を取り戻した蘭は、弱々しい女の子から一転、空手都大会優勝の実力を遺憾なく発揮します。逆上してナイフで襲いかかる風戸に対し、蘭はキックでナイフをへし折り、圧倒的な正拳突きと浴びせ蹴りで風戸を完全に制圧。その直後、駆けつけた警察によって風戸は逮捕され、病院からは重体だった佐藤刑事が意識を取り戻したという吉報が届きます。

小田切敏郎刑事部長は、真相に辿り着いたコナンに敬意を表し、「君は一体…」と問いますが、コナンは「Need not to know…僕はただの小学生だよ」と笑顔で返し、小田切は敬礼をして去っていきます。

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小ネタ・トリビア

  • 新一と蘭のデートの詳細
    アバンタイトルの回想シーンで、「ジェットコースター殺人事件」では描かれなかった新一と蘭のトロピカルランドでのデートの詳細が新たに描かれています。単行本4巻の回想シーンと同じ構図で、新一が蘭の頬にコーラの缶をくっつける描写も登場します。このシーンは、後に『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』でも描かれました
  • 初の米花町殺人事件
    劇場版において、コナンたちが住む米花町で殺人事件が起こったのは本作が初めてです
  • ポスターデザインの変遷
    本作のポスターには、前作まで恒例だった少年探偵団の3人が登場していません。原作者の青山剛昌先生が「ちょっと寂しい」と感じたため、次作『天国へのカウントダウン』では少年探偵団がメインの作品となりました
  • 声優の交代
    白鳥任三郎を演じていた塩沢兼人さんが本作の公開約1ヶ月後に急逝したため、本作が彼の劇場版コナン最後の出演となりました。次作以降は、本作で風戸京介を演じた井上和彦さんが二代目白鳥任三郎役を引き継いでいます
  • 楽曲の汎用性
    本作の楽曲は全体的にサスペンス色が強く、メインテーマや「キミがいれば」も 原曲に近いアレンジで登場します。特に「暗殺者のテーマ-忍び寄る魔手-」は、事件に関わる様々なシーンで使われるほどの高い汎用性を持っており、2007年のリニューアル後も頻度は落ちたものの使用され続けています。
  • 高い人気
    2016年に開催された歴代映画人気投票で第3位、2020年1月に『金曜ロードSHOW!』で実施された人気投票(過去3年以内に放送された作品を除く)では堂々の第1位を獲得しました
  • TVアニメとの連動
    テレビアニメ版からは、警視庁捜査一課の佐藤美和子刑事と千葉和伸刑事が劇場版に初登場しました。また、妃英理の秘書は、前々作『14番目の標的』にも登場していましたが、本作で初めて「栗山緑」という名前が設定されています
  • アフレコ体験
    劇場版シリーズの恒例である小学生を対象としたアフレコ体験が、本作で初めて実施されました。コナン役の高山みなみさんが直接指導を行ったとのことです
  • タイトルの日本語読み
    本作のタイトルは「瞳の中の暗殺者(あんさつしゃ)」と、英語読みや カタカナ表記を含まない日本語読みです
  • トロピカルランドの描写
    本作制作当時、TVアニメ版では詳細に描かれていなかったトロピカルランドが、美術監督の渋谷幸弘らが志摩スペイン村や富士急ハイランドなど、日本各地の遊園地を取材し、コナン版の東京ディズニーランドを完成させたと言われています

感想と考察

『瞳の中の暗殺者』は公開から20年以上経った今でも高い評価を受けているようです。確かに面白い作品だと思います。物語の前半は、刑事連続殺人の謎を追うミステリーで、ダイイングメッセージのミスリードや複数の容疑者の登場などで盛り上がります。警察内部の「Need not to know」という隠語が醸し出す緊迫感などは、まさにサスペンスです。蘭の命を狙われると、終盤にかけてアクションシーンが増えてきます。このミステリー/サスペンスとアクションのバランスの良さが、飽きずに見ることができる要因だと思います。伏線回収も見事で、新一と蘭のトロピカルランドでのデート、噴水、コーラの缶、そして蘭の記憶の奥底に残る「傘から突き出た銃口」のイメージなど、これら全ての要素が、蘭が記憶を取り戻す瞬間に収束していきます。
記憶喪失になった蘭を支える園子の「たとえ記憶が戻らなくても、あたしは一生友達だからね…」という言葉や、コナン(新一)と蘭の「愛」の物語など、人間ドラマもいろいろと盛り込まれています。

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