劇場版『名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』は1998年4月18日に公開された劇場版〈名探偵コナン〉シリーズの2作目で、キャッチコピーは「次に狙われるのはだれだ!?」です。毛利小五郎とその知人が、名前に含まれる数字になぞらえて次々と標的になるという設定が特徴です。また、毛利小五郎が刑事を辞めた背景や、妃英理との別居理由が初めて明かされたりもします。この記事では、あらすじや登場人物、ネタバレなどをまとめています。
あらすじ
毛利蘭は、母・妃英理が銃で撃たれる夢をみる。その数日後、目暮十三警部がボウガンで狙撃される事件が発生する。現場には紙製の西洋短剣が残されていた。続いて、妃英理が毒入りチョコレートで倒れ、阿笠博士もボウガンで襲われてしまう。これらの事件現場には、被害者の名前に含まれる数字(目暮十三=13、妃英理=12、阿笠博士=11)と、トランプの絵札を模した証拠品が残されており、どうやら犯人は小五郎の関係者を狙っているようだった。
警察は、10年前に小五郎に逮捕され、最近仮出所した元トランプ賭博のディーラー・村上丈を最重要容疑者と断定。
蘭は、小五郎が村上を逮捕する際、人質となっていた英理の足を撃ったことで警察を辞職した過去を知り、父への不信感を抱くことになる。しかし、新一(コナン)は「それは事実だが、真実とは限らない」と蘭を諭す。
次に狙われる可能性のある「10」の人物として、プロゴルファーの辻弘樹が浮上。彼の自家用ヘリに同乗した小五郎と目暮、そして密かに乗り込んだコナンは、目薬のすり替えにより操縦不能に陥ったヘリの墜落危機に直面するが、コナンの活躍で不時着に成功する。
その後、「8」の人物であるソムリエの沢木公平の元を訪れた一行は、彼がオーナー旭勝義(名前に「9」が含まれる)の招待で海洋娯楽施設「アクアクリスタル」へ向かうことを知ります。アクアクリスタルには、小山内奈々(7)、宍戸永明(6)、ピーター・フォード(4)、白鳥任三郎(3)、仁科稔(2)といった、名前に数字を持つ人物たちが集まっていた。しかし、旭勝義の姿はなく、ワインセラーで沢木がブービートラップに狙われる事件が発生。建物は封鎖され、旭の遺体が水槽内で発見される。さらに、停電直後に小山内奈々が刺殺されてしまう。
コナンは犯人が右利きであること、そして犯人がこの中にいることを確信する。
結末(ネタバレ注意)
突如、アクアクリスタルが爆発し水没。蘭は展示車に足を挟まれ、水の中で動けなくなってしまう。蘭の非常事態に気付いたコナンはペットボトルの空気で蘭を救うが、自身も息が続かなくなってしまう。意識を取り戻した蘭は、コナンに口移しで空気を送り、コナンは一命を取り留める。そこに小五郎たちが救助に現れ、ふたりとも助け出される。
全員が脱出したあと、コナンは眠りの小五郎の推理ショーで真犯人がソムリエの沢木公平であることを暴く。沢木の動機はバイク事故による味覚障害と、ソムリエとしての誇りを傷つけられたことへの復讐だった。彼は村上丈を殺害し、その犯行に罪をなすりつけようとしていた。
追い詰められた沢木は、蘭を人質に取り逃走を図る。白鳥が銃を構えるも手が震え、小五郎が銃を要求。コナンは小五郎が英理を撃った真意――怪我をした人質は犯人の足手まといになる――を悟り、蘭の足を撃つ。蘭が倒れた隙に小五郎が沢木を取り押さえ、事件は収束する。
エピローグで英理と小五郎の別居の理由が明らかになる。
小五郎が英理を撃ったことが原因かと思いきや、英理は自分が撃たれた理由を知っていた。本当の理由は、英理が怪我をしているにもかかわらず頑張って作った料理を小五郎が「まずい」と酷評したことだった(英理さんの料理はあまりおいしくない)。
真犯人と動機
真犯人はソムリエの沢木公平です。犯行動機は、バイク事故による頭部外傷とストレスで味覚障害を患い、ソムリエとしての誇りを失ったことへの復讐でした。
- 小山内奈々:交通事故で味覚障害の直接的な原因を作った
- 辻弘樹:パーティーでソムリエの品格を侮辱した
- 旭勝義:希少なワインを買い占め、管理が不十分だった
- 仁科稔:ワインに関する誤った知識を広めた
沢木は、自身の犯行をカモフラージュするため、偶然出会った村上丈を利用し、彼を殺害した上で、トランプの数字になぞらえて小五郎の関係者を次々と襲っています。
登場人物
- 江戸川コナン(工藤新一)声 – 高山みなみ(コナン)、山口勝平(新一)
ヘリの模擬操縦やハワイでの射撃訓 練の経験が活かされる。蘭の危機を救うため、小五郎と同じ行動を取る - 毛利蘭声 – 山崎和佳奈
両親の別居の真相に苦悩する。コナンの危機を救うため、口移しで空気を送る - 毛利小五郎声 – 神谷明
元刑事で、実は射撃の名手。10年前の事件で英理を撃ち、警察を辞職した過去が明かされる。高所恐怖症 - 妃英理声 – 高島雅羅
蘭の母で敏腕弁護士。10年前の事件で小五郎に足を撃たれた過去を持つ。料理が苦手 - 目暮十三声 – 茶風林
警部。本作で下の名前「十三」が明かされる。事件の最初の被害者となる - 阿笠博士声 – 緒方賢一
コナンの正体を知る発明家。犯人の標的「十一」として襲われる - 少年探偵団(吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦)声 – 岩居由希子、高木渉、大谷育江
コナンのサポートをする。 歩美の「Aの予感」が伏線となる - 鈴木園子声 – 松井菜桜子
蘭の親友。序盤のみ登場 - 白鳥任三郎声 – 塩沢兼人
警部補。本作で下の名前「任三郎」が明かされる。ワインに詳しい
オリジナルキャラクター
- 村上丈声 – 鈴木英一郎
元トランプ賭博のディーラー。「ジョーカー」の異名を持つ。小五郎に逮捕された過去 があり、仮出所後に行方不明となる - 仁科稔声 – 鈴置洋孝
料理エッセイスト。味音痴でカナヅチ - ピーター・フォード声 – アンディ・ホリフィールド
ニュースキャスター。外国人だが日本語は流ちょう - 宍戸永明声 – 内海賢二
カメラマン。豪快な性格 - 小山内奈々声 – 岡本麻弥
ファッションモデル。車の運転が荒い - 沢木公平声 – 中尾隆聖
フランス料理店「ラ・フルール」のソムリエ。温厚な性格だが、味覚障害を患い復讐を企てる - 旭勝義声 – なし。実業家
アクアクリスタルのオーナー。高級ワイン収集家。死体で登場 - 辻弘樹声 – 谷口節
プロゴルファー。自家用ヘリを操縦する - 岡野十和子声 – 一城みゆ希
銀座の高級クラブ「十和子」のママ
余談
前作『時計仕掛けの摩天楼(あらすじ・ネタバレ解説)』が「火の恐怖」だったのに対し、本作のテーマは「水の恐怖」となっています。
興行収入は18億5000万円、配給収入は10億5000万円を記録。妃英理が劇場版に初登場した作品であり、コナンの代名詞ともいえる「ハワイで親父に…」というセリフが使われ始めたのも本作からだったりします。
タイトルの意味
タイトルの「14番目の標的」が誰を指すのかは、作中で明確には語られませんが、主に以下の2つの説が有力です。
- 毛利蘭説
クライマックスで沢木公平に人質に取られた蘭が、犯人にとっての新たな標的(14番目)になったという説。また、コナンが蘭を救うためにあえて蘭を撃ったことから、コナンにとっての「標的」でもあったというダブルミーニングも含まれます - 工藤新一説
沢木公平が村上丈を含めて14人をターゲットにしており、「一」の数字を持つ工藤新一が実は14番目の標的だったという説です
コナンと蘭のキスシーン
海中レストランが水没し、蘭が車に足を挟まれて動けなくなった際、コナンはペットボトルで空気を送ろうとしますが、自身も息が続かなくなります。その時、蘭は意識を失いながらも、コナンに口移しで空気を送ります。このキスシーンは、恋愛感情からではなく、人命救助のための行動として描かれています。作品冒頭で歩美が占った「Aの予感(キス)」が、このシーンの伏線となっていました。
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