『犯人は二人』は、恐喝王ミルバートンと探偵シャーロック・ホームズの対決を描いたエピソードです。原作は1904年に発表されました。原作のタイトルは“The Adventure of Charles Augustus Milverton”となっており、「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」や「恐喝王ミルヴァートン」と訳されます。日本では「犯人は二人」というタイトルが定着しているようです。
項目 | 内容 |
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作者 | コナン・ドイル |
発表 | 1904年4月発表 (ストランド) |
発表順 | 34作品目(60作中) |
発生時期 | 1899年1月5日~ 1月14日 |
発生順 | 46件目 (60作中) |
あらすじ
ホームズは、結婚が近づいたエヴァ・ブラックウェルから依頼を受ける。エヴァは、かつての恋文をネタに、恐喝王チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンから強請られていた……。
ホームズはミルバートンに、令嬢が支払い可能な金額で恋文を売るよう直接交渉する。しかし、ミルバートンはホームズの申し出を完全に拒否する。そして、力ずくで奪い取ろうとするホームズに対してミルバートンは、拳銃を向けてホームズを制し、余裕の表情で、その場を去っていくのだった。交渉に破れたホームズはかつてないほどの屈辱を味わうことになる。
ホームズは、なんとしても恋文を奪還するため、変装してミルバートンの女中に近づき、情報を収集する。さらに、家に忍び込む計画を立て、これにワトスン博士も同行することになる。夜遅く、ホームズとワトスンは、ミルバートンの邸宅に忍び込み、書斎に隠された金庫を開けることにも成功する。しかし、いつもなら就寝中であるはずのミルバートンが、なぜか起きており、書斎に入ってきてしまう。
ネタバレ
ホームズとワトスンは急いでカーテンの陰に隠れた。よくみると、先程開けた金庫の扉が、わずかに開いたままになっていた。そのことに気付いたワトスンは、ミルバートンが異変に気付くのではないかと、冷や汗をかくことになる。
すると書斎に、一人の女性が現れる。どうやら、ミルバートンはこの女性と会うために、起きていたらしい。ミルバートンはその女性が恐喝のネタを売りにきたと思っていた。しかし、女性がベールを取った瞬間に、ミルバートンは驚きの声を上げることになる。その女性は、かつてミルバートンの恐喝によって破滅した被害者の一人だった。
結末解説
最終的に、書斎に現れた女性がミルバートンを撃ち殺します。なお、この女性の名前などは明かされません。ただミルバートンの恐喝が原因で、夫が死んでいるのは確かで、ラストには、夫は貴族の政治家だったことが判明します。
一部始終を目撃したホームズとワトスン博士は、その後、急いで、金庫にあった強請りのネタを暖炉で燃やします。異変に気付いた使用人が書斎へとやって来ますが、ホームズもワトスンも、なんとか屋敷から逃げ出します。
タイトルの意味
「犯人は二人」というタイトルは、ミルバートン殺害の犯人がホームズとワトスンであることを意味しています。ミルバートンが殺された後、ホームズとワトスンは使用人に追われることとなり、足の不自由なワトスンが足を掴まれてしまいます。このとき、使用人にワトスンの人相なりを憶えられてしまいます。つまり、使用人には、屋敷から逃げ出した二人組、すなわち、ホームズとワトスンが犯人にみえます。
次の日の朝、レストレード警部が221Bへとやってきて、ミルバートン殺害事件について話すわけですが、使用人の証言に基づいているため、犯人の外見や特徴がワトスンにそっくりだったりします。このことに対してホームズは「その犯人はまるでワトスンみたいだね」と、とぼけます。そして、レストレード警部の協力依頼も、断ります。
ドラマ
グラナダ版ドラマは1992年1月2日に放送されました。テレビ映画第3弾(102分)となります。英語タイトルは“The Master Blackmailer”で恐喝王という意味ですが、日本語のタイトルは「犯人は二人」になっています。
項目 | 内容 |
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シーズン | – |
話数 | – |
放送順 | 33 |
長さ | 1時間42分 |
放送日(英) | 1992年1月2日(木) |
キャスト | キャスト一覧 |
原作とドラマの違い
原作とドラマのストーリーや結末は同じです。ただ、原作小説は短編作品となっており、非常に短い作品です。一方ドラマは2時間のテレビ映画となっており、原作では簡単に紹介されていた事件などの詳細が語られていたりします。
ドラマにはシャーロットと自殺したドーキングの恐喝事件についても詳しく描かれていましたが、原作では、名前だけ登場する程度の事件になっています。ドラマではホームズとアギーの恋模様も描かれていましたが、これもドラマオリジナルです。原作には、キスシーンなどは一切登場しません。
感想
本格ミステリというよりは、恐喝王をどのようにして追い詰めるか、というサスペンスだったと思います。恐喝王ミルバートンはモリアーティ教授に次ぐ凶悪犯罪者という印象です。ホームズとワトソンが金庫の手紙を焼いて終わり、かと思いましたが、そこに女性(ドラマではダイアナ)が現れます。ダイアナはドラマ冒頭で、ミルバートンに強請られている女性でした。
ドラマにはホームズのキスシーンが登場します。この原作にはないシーンに対して、怒りを覚えた人や、逆に感動した人もいるようです。その昔、探偵の恋は描いてはならない、という推理小説の掟みたいなものを何かで読んだような気もしますが、そういった掟みたいなものは破られていくのだなと思ったりもします。(ミステリーの掟といえば、ノックスの十戒ですが、守っているミステリーはないように思えます)
突破ファイル
恐喝王をどのようにして追い詰めるか、という内容の物語だったと思います。wikipediaには、このエピソードがテレビ番組「THE 突破ファイル」で紹介されたと書かれています。調べてみると、番組内の「世界名作突破劇場」というコーナーで、「犯人は二人」が登場していたことがわかりました。ちなみに、情報収集のために屋敷のメイドと婚約するというのが正解だったようです。
まとめ
シャーロック・ホームズの「犯人は二人」について、原作とドラマのあらすじとネタバレ、感想などをご紹介しました。
- 発端(恐喝王による事件が発生)
ホームズがミルバートンの捜査を始める - 展開調査のためホームズがミルバートンの屋敷に潜入
強請りのネタを破棄するため、ホームズとワトスンがミルバートンの屋敷に忍び込む - 結末ホームズとワトスンが物色中に…
登場人物
登場人物をネタバレありで簡単にまとめます。シャーロック・ホームズとワトソン博士は除いています。
名前 | 説明 |
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ミルバートン Charles Augustus Milverton |
恐喝王。貴族などをゆすり金を得ている 破滅させた女性に撃たれ死亡する |
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