『BLACK ROOM』は2001年1月1日に放送されたエピソードで、日常に潜む不可思議な現象や、人間の心理の奥深さを描く「世にも奇妙な物語」の真骨頂とも言える、ミステリアスでシュールな世界観が特徴です。2025年5月31日に「35周年SP~伝説の名作 一夜限りの復活編~」で再放送されます。
あらすじ
アメリカに留学していた大学生のナオキ(木村拓哉)は3年ぶりに日本に帰国した。両親を驚かせるため、何も伝えずに帰国したナオキは、タクシーで実家の住所に到着し、目の前の光景に驚愕する。かつて家があったはずの場所には、なぜか漆黒の闇が広がる「真っ暗な空間」が広がっていた…。
ナオキは手探りで家の入り口を探し、まるで潜水艦のハッチのような、分厚い円形の床ドアを発見。そのドアを開けて中に入ると、そこはやはり暗闇に包まれた空間で、中央にはキッチンテーブルがぽつんと浮かんでいるようだった。そしてそのテーブルには両親の姿が――。
ナオキは実家について当然ながら両親に説明を求めるのだが…両親は核心を避けるような曖昧な返答を繰り返すばかりで、会話が全くかみ合わなかった。
そんな会話が都築、父親が「今は父さんと母さんとマサコの家だ!」と口を滑らせる。ナオキには知らされていなかった〈妹・マサコ 〉の存在が明らかになる。しかし、ナオキがマサコについて問い詰めても、両親は「10歳」という年齢以外は何も教えてくれない。
父親に関しては「1日にビールを50本飲む」と平然と語るなど、両親の言動は常軌を逸していた。ナオキは彼らが人間失格なのではないかと心配し、まだ見ぬ妹のマサコを引き取ろうと決意する。
そして、ナオキが両親の奇妙な状態に困惑している最中、突如としてけたたましい警報音が鳴り響く――。
登場人物
役名 | 俳優 | 人物紹介 |
---|---|---|
ナオキ (湯之本 直樹) |
木村拓哉 | 主人公。アメリカ留学中の大学生 3年ぶりに実家に帰省する |
父 (湯之本 和夫) |
志賀廣太郎 | ナオキの父親 |
母 (湯之本 和子) |
樹木希林 | ナオキの母親 |
マサコ (湯之元 マサ子) |
? | ナオキの妹 |
結末(ネタバレ注意)
警報音と同時にナオキの背後にモニターが現れる。そのモニターには南極に現れた巨大な一つ目の生物「ガストン」の姿が映し出されていた!
両親の態度は一変。
母親は冷静沈着な〈司令官〉として、驚異的な速さでキーボードを操作し、避難指示を出す。
父親は戦闘服に身を包み、叫びながら出撃準備を整える。
そして、ついに妹のマサコが登場!その姿はなんと!!眉毛がつながった中年男性(我修院達也)だった!!!
マサコもまた、戦闘員として父親と共に出撃する――。
家の中にわずかな明かりが灯る。
ナオキは実家がトンネルのように広大な秘密基地に改造されていたことを知る。両親は地球の平和を守る「国際国務機関湯之元」のメンバーであり、ガストンという奇妙な生物と戦っていた。両親は、突然帰国したナオキにこの秘密を打ち明けられずにいたのだった。
出撃を見送った後、母親はナオキに「時期が来れば、あなたも忙しくなるわよ」と告げる。ナオキは、この奇妙な状況を理解し、帽子を脱いで敬礼。これは、彼もまた、いずれこの国際国務機関の一員として戦う運命にあることを示唆していた。
ドラマ情報
「世にも奇妙な物語」の「SMAP特別編」で初公開されたエピソードです。「SMAP特別編」は、SMAPのメンバーそれぞれが主演を務めるという豪華な企画で、木村拓哉さんが主演を務めたのが本作『BLACK ROOM』です。
- タイトル:BLACK ROOM (ブラックルーム)
- 放送回:世にも奇妙な物語 SMAP特別編
- 放送日:2001年1月1日
- 主演:木村拓哉
- 脚本・演出:石井克人
- プロデュース:谷口宏幸(東北新社)
原作(元ネタ)
「BLACK ROOM」は、脚本と演出を手掛けた石井克人氏による完全オリジナル作品です。特定の小説や漫画、あるいは実話を原作にしているわけではありません。
石井克人監督の作品は、アニメーションやアートの分野でも活躍されており、その独自性がこの作品にも色濃く反映されています。
独特な世界観や、日常が非日常へと変貌するテーマは、他の作品との共通点を見出すことができます。例えば、心理的な不安やミステリアスな展開という点では、人間の内面や社会の歪みを描く「ブラックミラー」シリーズや、現実と非現実の境界が曖昧になるような「ミッドナイトバス」「死後の世界」といった作品に似ているといえそうです。
感想と考察
物語の序盤は、ナオキと両親の間のシュールでかみ合わない会話劇が続き、「一体何が起きているのか?」という気分になります。この日常の違和感が徐々に積み重なり、最後に突如としてSFアクションへとジャンルが転換する展開は予測不能な面白さです。
作品のテーマとして、「懐かしい場所に帰ると、そこが全く別のものに様変わりしていることもある。人間も環境も、常に変化し、同じ未来は存在しない」というメッセージを感じとれます。両親が地球防衛の任務に就き、家が秘密基地になっているという設定は、一見すると荒唐無稽ですが、視聴者自身の「日常の変容」や「家族の知られざる一面」といった普遍的なテーマにつながると思います。
石井克人監督の独特なテンポ感と、現実離れした設定をリアルな演技で表現する俳優陣(木村拓哉、志賀廣太郎、樹木希林、我修院達也)の組み合わせが、この作品の魅力です。意味不明な展開に戸惑いつつも、その奇妙さに引き込まれ、何度も見返したくなるような中毒性を持つ作品です。
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