『ゲームの館殺人事件』は金田一一と七瀬美雪が、謎の人物〈ゲームマスター〉に仕掛けられた命がけのデスゲームに強制参加させられるというエピソードです。原作漫画「新ファイルシリーズ」の最終章として描かれ、アニメ『金田一少年の事件簿R』や、山田涼介主演のドラマ『金田一少年の事件簿N(neo)』などで映像化されています。この記事では、あらすじ、ネタバレ、登場人物、感想などをまとめています。
あらすじ
遊園地で一日を過ごしたはじめと美雪は、なんとか帰りのバスに乗り込むのだが……、車内で突如噴出した催眠ガスによって眠らされてしまう。目を覚ますと、見知らぬ廃病院の一室に閉じ込められ、顔には不気味な仮面がつけられていた。はじめと美雪は、同じように拉致されてきた他の乗客たちと共に、ゲームマスターと名乗る人物による殺人ゲームへの参加を強いられる。
ゲームは複数のステージに分かれており、各ステージには時間制限付きの謎解きや課題が用意されていた。制限時間内にクリアできない、あるいは、ゲームマスターのルールに違反した参加者には、仮面の爆発や部屋への閉じ込めといった過酷な罰が与えられ、命を落とすことになってしまう。
最初のゲームで早々に犠牲者が出てしまい、極限状態に置かれた参加者たちの間に疑心暗鬼が生じる。
殺人ゲーム
ゲームマスターによって用意されたゲームは以下の通りです。
- 第1のゲーム(海賊危険一杯ゲーム)
部屋のモニターに表示されるクイズに答え、正解の4桁の数字をテンキーに入力してドアを開ける。ドアは一人ずつしか通過できず、複数人で出ようとしたり、ゲーム中に言葉を発したりすると、参加者全員の仮面が爆発するというルール。このゲームで霜村志保が死亡する - 第2のゲーム(知恵の輪)
壁に吊るされた仮面の下に付けられた知恵の輪を解き、そこにある鍵で扉を開けて脱出する。時間内に解けない、または扉を開け放したままにすると、部屋に可燃性の薬が撒かれ、仮面が発火して部屋ごと焼き尽くされる。このゲームの死亡者はなし - 第3のゲーム(カップ麺をちゃんと食べろ)
キッチンに用意されたカップ麺を食べなければならないというゲーム。実は毒が仕掛けられており、参加者は毒見のため、部屋にある熱帯魚の水槽が利用されることに。食べ終えたカップの底には、次の部屋への鍵が隠されている。このゲームも死亡者はなし - 第4のゲーム(宝探し)
最後の部屋に隠された脱出用の鍵を見つけるゲーム。「エチケットに注意して探して下さい」というヒントが与えられる。このゲームで霜村生馬が死亡する。原作には第5の部屋があり、ここでガスが噴出する
登場人物
- 金田一一(きんだいち はじめ) (17)
主人公。普段はだらしない高校生だが、事件に遭遇すると明晰な推理力を発揮する - 七瀬美雪(ななせ みゆき) (17)
ヒロイン。はじめの幼馴染で、生徒会長 - 宝樹滋(たからぎ しげる) (45)
有名なゲームプログラマー。ヒット作を手がけたらしい - 霜村生馬(しもむら いくま) (22)
大学生。霜村志保の息子。自己中心的な性格。ワインコレクターらしい - 霜村志保(しもむら しほ) (40代後半~50代前半推定)
女性服会社の社長。生馬の母親。お金持ち - 菊川梢(きくかわ こずえ) (28)
スナックのホステス。多額の借金を抱えている - 真津本潤(まつもと じゅん) / 杉本潤(すぎもと じゅん) (27/29)
スナックのボーイ。梢の同僚で、ギャンブルによる借金がある。アニメ版では杉本潤、ドラマ版では町田和也という名前 - 麦林美佳(むぎばやし みか) (46)
スナックのオーナー - ゲームマスター
覆面姿で参加者をゲームに巻き込む謎の人物 - 剣持勇(けんもち いさむ) (48)
警視庁捜査一課の警部。事件発覚後に登場し、関係者の事情聴取などを担当 - 明智健悟(あけち けんご) (28)
警視庁警視。事件後に登場 - 4銃士 / ミステリー研究部
はじめの友人たち。原作で序盤と終盤に登場。ドラマ版ではミステリー研究部員が代わりに登場し、事件に巻き込まれる。アニメには登場せず
ネタバレ
ゲームマスターの正体は、スナックオーナーの麦林美佳でした。本名は菊川さなえで、かつては、テレビ放送制作会社の代表を務めていました。しかし、自身が制作した番組での事故や、その後の詐欺により多額の借金を抱え、破産寸前に追い込まれます。絶望して樹海で自殺を図ろうとした際、偶然にも麦林美佳の白骨死体と身分証を発見します。そして整形手術で顔を変え、自分と年齢が近い美佳になりすまして人生をもう一度やり直すことを思いつきます。
なお、原作で麦林は、整形外科医も口封じのために殺害しています。
動機は娘である菊川梢に遺産を相続させることでした。
梢の父親は、霜村志保の夫(生馬の父親)でした。つまり、梢と生馬は異母姉弟の関係にあります。日本の法律では、霜村志保が先に死亡し、次にその息子である生馬が死亡した場合、父を同じくする兄弟姉妹が相続権を得ます。菊川さなえは、この相続順位を利用し、霜村志保そして生馬の順にゲームで死亡させることで、娘の梢に巨額の遺産(100億円)を相続させようと企んでいました。
金田一と美雪は全く関係のない人物ですが、バスを運転していた犯人が顔を見られたと思ったため、バスに乗せています(当初は始末するつもりだったようですが、デスゲームの最中に運転手だと見破られなかったので生かしたと思われます)。
菊川さなえ(麦林美佳)は謎解き時に、余命僅かであることが判明します。莫大な遺産を相続することなった梢ですが、全額を寄付します。
トリック
ゲームマスターが仕掛けた主なトリックは以下の通りです。遺産相続のために殺す順番が重要になるため、最初に霜村志保を殺害し、そのあとはずっと霜村生馬をねらっています。結果的に、生馬は第4のゲームで死亡することになります。
- 第1のゲームのトリック
参加者が装着させられた仮面には、3Dメガネが仕込まれていました。部屋のモニターは3D対応になっており、二つの画面が表示されるようになっていました。通常は3Dメガネによって二つの画面が組み合わさり立体的な映像となりますが、メガネの片目をふさぐと、画面は一つだけしかみえなくなります。このことを利用して犯人は、他の参加者が見ていたクイズ画面とは別に、霜村志保にだけは難易度の高い別のクイズ画面が見えるようにしていました。これにより、志保は時間内に問題を解くことができず、最後は「回答を譲れ」という指示を真に受けてしまい、爆死させられました - 第2のゲームのトリック
生馬は知恵の輪が苦手なので、生馬だけが解けずに死亡するはずでした - 第3のゲームのトリック
生馬のカップ麺に毒が仕込まれていました。毒は3分後に効果が現れるような細工がされていたため、熱帯魚で試した時点ではまだ毒は溶けだしていませんでした。ところが、生馬が梢とカップ麺を交換したため、犯人の麦林は咄嗟に「箸に毒が仕込まれている」と言い出しています - 第4のゲーム(宝探し)のトリック
「エチケットに注意して探して下さい」というヒントの『エチケット』はワインのラベルを指す言葉でもあります。ワイン通である生馬はこれに気づき、ワインラベルが飾られた額縁を調べましたが、その裏には毒が塗られた複数の毒針が仕掛けられており、触れた生馬は死亡しました。このトリックは、未成年や酒を飲まない人物など、ワインの知識がない他の参加者には無関係であり、生馬だけを狙ったものでした - ゲーム終了時のミス
最後の部屋で参加者を眠らせるために催眠ガスを使用しましたが、このとき犯人の麦林が思わず「催眠ガス」と口にしています。毒ガスだと信じ込んでいた他の参加者(特に金田一)に不審を抱かせ、正体を見破られるきっかけとなりました
原作とアニメ・ドラマの違い
- ドラマ版では、杉本潤の代わりに町田和也というキャラクターが登場し、借金の理由が事業失敗に変更されています。また、仮面の形状やゲームの制限時間、ステージ数などが原作とは異なります。犯人や動機については大きな変更がありません
- アニメ版では、登場人物の一部の細かな設定(杉本の職業、宝樹のゲーム名など)や、犯人の過去(制作会社がうまくいかなくなったときの殺人、整形外科医殺害など)が変更されています
感想
金田一少年の事件簿シリーズにデスゲームが登場する作品です。3Dメガネを利用したクイズのトリックや、「エチケット」という言葉の多義性を利用したトリックなど、トリックミステリーらしい内容です。
犯人が一人でこれほど大規模で複雑な仕掛けを準備できたのか、ターゲット以外の参加者が死亡するリスクをどのように考えていたのか、といった疑問は残り、トリックの完成度や設定のリアリティについては議論の余地があるかもしれません。ただ、デスゲームというサスペンスフルな内容や、犯人の抱える過去の悲劇的な経験などはみどころだと思います。
コメント