劇場版名探偵コナンシリーズの28作目隻眼の残像(フラッシュバック)は、長野県警を舞台に、過去と現在が交錯する複雑な事件を描いたコナン映画です。緻密でサスペンスな脚本と重厚なテーマが特徴で、シリーズファンを中心に注目を集めています。この記事では、あらすじや感想をご紹介しています。
あらすじ
長野県警の大和敢助警部が八ヶ岳の雪山で逃亡犯を追跡中に銃撃を受けて左目を失明。雪崩に巻き込まれるが、10ヶ月後、大和警部は復帰する。同じ頃、国立天文台野辺山で施設研究員の円井まどかが襲撃される事件が発生。この事件を捜査する中で、過去の事件との繋がりが見え隠れする。
毛利小五郎は、旧知の仲である刑事から雪崩事故に関する情報を得るが……その刑事が何者かに殺害されてしまう。コナンは長野県警と協力し、事件の解決に奔走する―。
特徴
過去の事件と現在の事件が複雑に絡み合い、パズルがハマる楽しさがあります。複雑なストーリーに伏線が張り巡らされており、最後まで楽しめる映画です。長野県警のキャラクターがフューチャーされているのも特徴です。
物語の構成としては、コナン、長野県警、公安、少年探偵団など複数のグループに分かれて進行します。
舞台設定
長野県警、特に八ヶ岳の雪山や天文台が舞台となり、自然の脅威や美しい景観が事件の背景として描かれています。長野の美しい雪景色などの映像もひとつのみどころです。
テーマ
「記憶」と「過去」が重要なテーマとなっており、登場人物たちの過去の出来事が、現在の事件に深く関わってきます。また、「 正義とは何か」という問いが、警察や政府といった組織の中で交錯し、重厚な人間ドラマが展開されます。
作風
アクションが激しいコナン映画が多い中、今作はサスペンス性が高めです。ギャグや恋愛要素もありますが、重厚な雰囲気がひとつの特徴になっています。
主人公
コナン君が主人公ですが、今作では毛利小五郎がキーパーソンです。小五郎の人間味あふれる一面や、大人としての格好良さが光っています。また、長野県警のメンバーもフィーチャーされており、それぞれの個性や立場を活かした活躍をみせています。
感想
全体的にとても面白かったです。去年の映画(『100万ドルの五稜星』)も面白かったですが、今回の映画の方が個人的には好きです。キャラ推しの人もストーリーが好きな人も、どちらも楽しめる内容ではないかと思います。『ゼロの執行人』に近い印象で、公安が活躍します。長野県警組の話を知っていると、より楽しめます!
高評価なポイント
- 重厚なミステリー
サスペンス・ミステリーとしての完成度が高い!過去と現在が交錯する複雑なストーリー展開に見応えがあり、最後まで飽きさせない!事件の真相が徐々に明らかになっていく過程は、まるでパズルのピースがはまっていくような感覚 - キャラクターの魅力
長野県警のメンバーや毛利小五郎など、各キャラクターが深く掘り下げられ、感情移入しやすい。特に、大和敢助と上原由衣のロマンスや、諸伏高明の過去など、キャラクターの背景が丁寧に描かれている - 映像美
雪山の美しい風景や、電波観測所の独特な雰囲気が、映像を通して見事に表現されている。特に、雪崩が発生するシーンや、電波観測所が破壊されるシーンは、迫力満点 - 社会派なテーマ
司法取引という制度の問題点や、警察組織の内部抗争など、社会的なテーマが深く掘り下げられている。単なる推理劇に留まらず、社会に対するメッセージ性も込められている
低評価のポイント
- 複雑すぎるストーリー
複数の事件が絡み合い、物語が複雑すぎるため、理解するのが難しいと感じる人もいるかもしれない。特に、公安という特殊な組織の存在や、司法取引という制度について詳しくない人にとっては、ストーリーを追うのが困難かもしれない - アクションシーンの少なさ
今作は、アクションよりも推理や人間ドラマに重点が置かれている。過去の作品に比べると、アクションシーンが控えめであるため、派手なアクションを期待している人には物足りないかもしれない
ネタバレ
毛利小五郎の元同僚・鮫谷刑事(通称ワニ)が射殺され、激怒した小五郎は、警視庁の高木刑事、佐藤刑事と共に長野県警へ向かいます。コナンは小五郎に同行を許されなかったため、阿笠博士、灰原哀、少年探偵団と共に、天文台へ向かうことに。何者かが仕掛けた盗聴器に気づきながら、コナンは泳がせることにします。
捜査が進むにつれて、8年前に発生した銃砲店強盗傷害事件と、その犯人の一人である鷲頭隆が司法取引によって刑を免れ、被害者の娘が自殺した過去が明らかになります。また、敢助が襲撃された雪山で再び銃撃事件が発生し、諸伏高明が負傷するなど、事件は複雑化していきます。
真犯人
事件の真犯人は、山梨県警に潜入していた〈隠れ公安〉の林篤信(はやし あつのぶ)です。林は、強盗事件で負傷し選手生命を絶たれ、そののちに自殺した舟久保真希の恋人でした。強盗事件の犯人は二人組(御厨貞邦と鷲頭隆)で、鷲頭が司法取引に応じて御厨の居場所を供述した結果、鷲頭は執行猶予付きの判決を受け、服役を免れていました。
林は、恋人を死に追いやった鷲頭の罰が軽かったことに対して強い憎しみを抱いていました。彼は天文台の情報収集衛星から国家間の機密情報を傍受し、それをネタに政府を脅迫することで、司法取引を推進する法改正(「改正刑事訴訟法」)を阻止しようとしていました。
10ヶ月前、林は雪山で衛星情報を傍受している最中に敢助に目撃されたため、彼を撃って雪崩を引き起こし、殺害しようとしました。その後、敢助の事件を捜査していた鮫谷が隠れ公安である林の動きに気づいたため、林は鮫谷を殺害。敢助は死を偽装していましたが、左眼を負傷した際の記憶を取り戻し、犯人が林であることを思い出していました。
結末
クライマックスでは、林が天文台の巨大車両を奪って逃走を図りますが、コナン、小五郎、長野県警、公安、内調の連携によって 阻止されます。小五郎は風見の銃を借りて車両の動力部を撃ち、林は逮捕されます。逮捕後、安室は公安による警官殺しを隠蔽するため、林に司法取引を持ちかけ、裁判で公安の名前を出さない代わりに死刑を回避させると脅迫します。
諸伏高明は滝壺に落ちた際に死んだ弟・景光の幻影を見ますが、それが現実ではないと気づき、生きるために銃を発砲して 自身の位置を知らせました。このシーンは、高明の「生への執着」と、景光の死を改めて突きつける苦しい描写として描かれています。
炭焼き小屋を営んでいた大友隆は、実は司法取引で刑を免れた鷲頭隆であり、真希の死への罪悪感から御厨に殺されるのを待って いました。真希の父・英三は、隆の贖罪の行動を知り、復讐を諦めます。
補足
- 隠れ公安とは?
- 各県警に潜入し、公安警察の活動を支援する秘密組織
- 表向きは一般の警察官として活動しているため、その存在は秘匿されている
- 司法取引とは?
- 被疑者が捜査に協力する代わりに、検察が起訴を見送ったり、刑を軽くしたりする制度
- 日本では2018年から導入
- 内閣情報調査室(内調)とは?
- 内閣総理大臣直轄の情報機関
- 国内外の情報を収集・分析し政府に提供する
主要キャラクターの活躍について
- 江戸川コナン
持ち前の推理力と行動力で事件の核心に迫ります。公安の盗聴を逆手に取り、風見を翻弄するなど、まさに見た目は子供……です - 毛利小五郎
警察時代の友人の死に動揺しつつも、刑事としての信念を貫き、捜査に尽力します。クライマックスでは眠らずに推理し、射撃の名手としての腕前も披露するなど、見せ場が多いです - 毛利蘭
新一との関係性が進展している様子が描かれ、探偵団の面倒を見たり、得意の空手で犯人と戦ったりします - 長野県警キャラ
大和敢助、諸伏高明、上原由衣は本作のメインキャラクターとして、過去の事件の真相や人間関係が深く掘り下げられます。敢助と由衣のロマンス、高明の弟・景光に関するエピソードなども登場します - 公安キャラ
安室透、風見裕也は事件の裏で暗躍し、コナンの捜査に影響を与えます。風見はコナンにこき使われるコミカルな一面も見せつつ、重要な役割を果たします。安室はポストクレジットシーンで冷徹な一面をみせます - 少年探偵団
事件に巻き込まれつつも、元太が犯人の証拠を残すなど、それぞれの方法で捜査に貢献します - その他
佐藤美和子と高木渉は長野での捜査に加わるというかたちで登場。また内閣情報調査室の長谷部陸夫が初登場します
今後の展開について
本作のラストに、内閣情報調査室の長谷部陸夫が警視庁に登場し、今後のレギュラー化が期待されます!公安と内調の絡みは、今後の『名探偵コナン』のストーリーに新たな展開をもたらす可能性がありますね。また、諸伏高明と景光に関するエピソードは、安室透や赤井秀一といったキャラクターの物語にも影響を与える伏線となり得ます。
エンドロール後の予告では、2026年の劇場版が神奈川県警の横溝重悟と萩原千速をメインに据えた作品になることが示唆されてお り、白バイ隊員や萩原研二、松田陣平といったキャラクターの登場が予想されます!早くも来年が楽しみな感じです。
コメント