東野圭吾さんの『マスカレード・ゲーム』は累計発行部数495万部突破の大人気ミステリー・〈マスカレード〉シリーズの第4弾です。高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」を舞台に、警視庁の刑事・新田浩介と、ホテルのコンシェルジュ・山岸尚美が異色のコンビを組み、難事件に挑みます。前作『マスカレード・ナイト』から約5年ぶりとなる本作は、「シリーズ総決算」とも銘打たれ、多くのファンが待ち望んだ一冊となりました。この記事では、あらすじや感想、ネタバレなどをまとめています。
項目 | 評価 |
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【読みやすさ】 スラスラ読める!? |
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【万人受け】 誰が読んでも面白い!? |
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【キャラの魅力】 登場人物にひかれる!? |
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【テーマ】 社会問題などのテーマは? |
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【飽きさせない工夫】 一気読みできる!? |
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【ミステリーの面白さ】 トリックとか意外性は!? |
あらすじ
都内で3件の殺人事件が相次いで発生する。被害者はいずれも過去に人を死なせた経験がありながらも、軽い刑罰で済んでいた。捜査を担当する警視庁捜査一課の新田浩介警部は、それぞれの事件の被害者遺族に疑いの目を向けるが、彼らには完璧なアリバイがあった。
捜査を進める中で、遺族たちがクリスマスイブにホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。警察は、遺族たちによる交換殺人、あるいは、ローテーション殺人がホテル内で計画されている可能性を疑い、再びホテルへの潜入捜査を決定する。
みたびホテルマンに扮することになった新田だが…、今回の捜査には、犯人逮捕のためなら手段を選ばない切れ者の女性警部・梓真尋が加わり、ホテル側のルールを尊重したい新田と対立する。
前作でコルテシア・ロサンゼルスへ異動したはずの山岸尚美は、事件解決のために急遽呼び戻され、新田との名コンビが復活。華やかなクリスマスイブのホテルを舞台に、様々な思惑が交錯する中、新田と山岸は第四の殺人を未然に防ぎ、事件の真相にたどり着くことができるのか。
小説の特徴
本作でも、ホテルという華やかな仮面(マスカレード)の下で繰り広げられる人間ドラマと、二転三転するスリリングなミステリーが特徴です。
構成
- 複数の殺人事件が複雑に絡み合い、徐々にその関連性が明らかになっていく
- ホテルという限られた空間と時間(クリスマスイブ)の中で、潜入捜査が展開される
- 警察内部での捜査方針の違いによる対立や、ホテル側との協力と緊張関係が描かれる
舞台設定
- 舞台はシリーズ共通の高級ホテル「ホテル・コルテシア東京」。ホテルという仮面をつけた人々が集う場所
- クリスマスイブという特別な日が舞台
テーマ
- 罪と罰のバランス、日本の司法制度に対する問題提起
- 犯罪被害者遺族の癒えない苦しみ、怒り、そして「許し」とは何かという問いかけ
- 加害者の贖罪のあり方、真の反省とは何か
- 正義とは何か、目的のためなら手段を選ばない捜査の是非
作風
- 東野圭吾作品ならではのリーダビリティの高さと、エンターテイメント性の融合
- 読者の予想を裏切るどんでん返しや、巧みに張り巡らされた伏線とその回収
- ミステリーとしての面白さに加え、登場人物たちの心情を深く描く人間ドラマ
- ホテルマンと刑事という異なる職業観のぶつかり合いと相互理解
主人公
新田と山岸が主人公ですね。過去の事件を経て築かれた強い信頼関係が描かれ、安定したバディといえそうです。恋愛要素は控えめで、互いをリスペクトし合う姿が印象的です。
- 新田浩介
警部へと昇進し、中間管理職としての苦悩や成長を見せる。潜入捜査を重ねる中で、ホテルマンとしての矜持も身につけていく - 山岸尚美
コルテシア・ロサンゼルスでの経験を経て、さらにプロフェッショナルとして磨きがかかる。変わらぬホテルマンとしての信念と、新田への深い信頼を示す - 梓真尋
本作で新たに登場。優秀だが強引な女性警部。新田とは対立するが、彼女なりの正義感と信念を持つ。物語に新たな緊張感をもたらす
感想
シリーズ総決算!…といえるのかどうかはわかりませんが、面白かったです。謎解きだけではなく、司法制度の問題や犯罪被害者と加害者の複雑な心理なども描かれていたような気がします。
難しい話はさておき、新田と山岸の関係性や、新キャラの登場などがいいですね。衝撃的でありながらも、次回作を予感させるラストに期待を抱かずにはいられません(これが総決算の意味?)。このシリーズはまだ続きそうですし、ぜひ続いてほしいです。映画化も楽しみにしています。
高評価のポイント
- ストーリー展開と構成の巧みさ
ストーリーが非常に面白く、ページをめくる手が止まらない、一気読みしてしまう!展開が予想外で、どんでん返しや伏線回収が見事。最後まで犯人が分からない - 魅力的なキャラクターと人間ドラマ
新田と山岸のコンビが魅力的で、彼らの成長や信頼関係に感動。登場人物(特に新田、山岸、能勢)が生き生きと描かれている! - 深いテーマ性
罪と罰、被害者遺族の感情、贖罪といった重いテーマを扱いながらも考えさせられ、感動する場面もある - 衝撃的かつ希望の持てるラスト
ラストの展開が衝撃的で、爽快感がある、続編への期待が高まる。 - 東野圭吾作品ならではの読みやすさ
文章が読みやすく、それでいて情景が目に浮かぶようです。複雑な事件やテーマを扱いながらも、読者を飽きさせずに最後まで引き込む筆力はさすが東野圭吾さんという感じです
低評価のポイント
- 設定のマンネリ感とリアリティへの疑問
同じホテルが何度も事件の舞台になる設定には無理がないだろうか…それとマンネリ感を感じるかもしれない… - 新キャラクター・梓警部への賛否
梓警部の性格や強引な捜査方法が好きになれなかったりイライラしたりするかもしれない… - 山岸尚美の活躍不足
山岸尚美の活躍が以前の作品に比べて少ないと感じるかもしれません - 映画化
映画化を意識しすぎているように感じられ、展開がやや都合よく進む - ミステリー要素の評価
トリックや謎解きは、過去作に比べるとやや弱いと感じるかも…
ネタバレ
連続殺人事件の真犯人は、ホテルに宿泊していた沢崎弓江(さわざき ゆみえ)です。沢崎というのは偽名で、その正体は過去に事件を起こした長谷部奈央(はせべ なお)でした。彼女は恋人・大畑との別れ話のもつれから、精神安定剤の過剰摂取による意識障害の中で大畑を刺殺してしまいましたが、責任能力なしとして不起訴処分となっていました。
奈央は罪悪感に苛まれ続け、インターネット上の犯罪被害者遺族のコミュニティ「ファントムの会」に参加します。そこで、他の遺族たちの癒えない苦しみや、加害者へのやり場のない怒りに触れます。そして自身の罪滅ぼしのため、遺族たちの無念を晴らすために、代理で復讐を行うことを決意し、過去に軽い刑罰で済んだ加害者たちを次々と殺害してきます。殺害後、自身のSNSで情報を流し、関係者(被害者遺族たち)をホテル・コルテシア東京に集め、そこで自身の罪を告白し自殺することで、すべてを終わらせようと計画していました。すなわち、最後のターゲットは自分自身でした。
結末
奈央がスイートルームで自殺を図ろうとしたまさにその時、山岸尚美が身を挺して阻止しようとし、ナイフで負傷してしまいます。駆けつけた新田 は、奈央に「生きて罪を償うべきだ」と説得し、自殺を食い止めます。
事件は解決しましたが、新田は梓が行った違法な盗聴捜査を黙認したこと、そして潜入捜査中に民間人である山岸に怪我を負わせ てしまったことの責任を取り、警視庁に辞表を提出します。
しかし、その潔さとホテルへの深い理解を示した新田に対し、ホテル・コルテシア東京の総支配人・藤木は、ホテルに新設される警備部門のマネージャーとして彼をスカウトします。
トリック
- ローテーション殺人の偽装
奈央の行動と被害者遺族たちのホテルへの集結が重なり、結果的に、警察はローテーション殺人を疑うことになった。これは奈央が意図したものではない - 捜査のミスリード
警察は当初からローテーション殺人という仮説に囚われ、被害者遺族たち(神谷、森元、前島、大畑夫妻)を容疑者としてマークしており、彼らのアリバイや接触の有無に捜査が集中した - 偽名
奈央(沢崎弓江)、葉月(緒方道代)、大畑夫妻(小林夫妻)が偽名を使っている - 違法捜査について
梓真尋は、確たる証拠がない段階で容疑者の部屋に盗聴器を仕掛けるなど、違法すれすれの捜査を強行しますが犯人特定には繋がっていない - 【捜査の主な経緯】
- 新田が宿泊客リストと過去の事件資料を照合し、偽名を使っている人物(大畑夫妻)を特定
- 大畑夫妻への聞き込みから「ファントムの会」の存在と奈央(沢崎弓江)がターゲットである可能性が浮上
- 新田の大学時代の同期である三輪葉月(緒方道代)が奈央と同じ施設にいた過去や、彼女を心配してホテルに来ていたことが判明
- (以上の情報が繋がり真相が明らかになっていく)
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