他の小説にはないユニークな設定で、青春の光と影、笑いと涙、感動と切なさ、友情の尊さなどが描かれたメフィスト賞受賞作!ごりごりのミステリー小説かといわれると微妙なところですが…様々な感情を味わえる忘れられない友情の物語です。
あらすじ
2年E組のクラスで人気者の山田が、夏休み明け直前に交通事故で突然亡くなってしまう。新学期が始まり、どうにも信じられないことが――なんと!教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきます。山田はスピーカーに憑依し、声だけの存在としてクラスメートと再び交流を始めます。
最初こそ喜んでいたクラスメートたちですが、進級、卒業と時間が経つにつれて、それぞれの人生を歩み始めます。山田だけが高校2年生のまま、教室に取り残され、忘れられていく…。彼を忘れられない親友・和久津の視点を通じて、青春、友情、喪失、そして「生きる」とは何かを深く問いかける。
感想
斬新な設定と、予想を裏切る展開が魅力的な作品です。メフィスト賞らしい異色作でありながら、青春小説としての普遍的なテーマも持ち合わせている点が高評価ポイントです。
- 男子高校生のノリ
男子高校生特有のバカバカしくもリアルな会話劇が面白いです。下ネタや内輪ネタが満載でありながら、どこか共感を呼ぶ内容ですね - 青春と喪失
物語が進むにつれて、青春の輝きと喪失感が鮮明に描かれています。過ぎ去った日々への郷愁や、忘れられていく存在の悲しみに共感し、胸を締め付けられるような思いを抱きます - 友情の形
山田と和久津の友情は、本作の重要なテーマの一つです。和久津の山田への一途な思いは感動を呼ぶ一方で、やや執着が強く、狂気的にも思えます - ラストの解釈
賛否の別れどころです。感動的で美しい結末だと評価する人もいれば、唐突で消化不良だと感じる人もいそうです - 好みが分かれるかも…
男子高校生のノリや、物語の展開が合わない可能性があります - 読後感は重い…
ハッピーエンドを期待する読者には、後味が重く感じられるかもしれません
ネタバレ注意
物語が進むにつれて、山田の死には交通事故という表向きの理由だけでなく、彼自身の心の闇が深く関わっていたことが明らかになります。山田は過去にいじめを受けていた経験があり、自己肯定感が低い一面を持っていました。
親友の和久津は、山田の死後も彼を忘れられず、山田の声がする教室に通い続けます。やがて和久津は、弁護士になるという夢を捨て、母校の教師になることを決意します。それは、山田のそばにいるためでした。物語の終盤で、山田はスピーカーそのものではなく、2年E組の教室そのものに憑依していたことも明かされます。
結末
物語のクライマックスで、和久津は山田を解放するため、教室を破壊します。それは、山田を過去から解き放ち、成仏させるための行為でした――。
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