『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』は東野圭吾先生の推理小説で、〈ブラックショーマン〉シリーズの1作目です。2025年には映画化が予定されています!コロナ禍の日本を舞台に、被害者の娘と元マジシャンの叔父が事件を捜査していきます。
項目 | 説明 |
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タイトル | ブラック・ショーマンと 名もなき町の殺人 |
著者 | 東野圭吾 |
シリーズ | ブラック・ショーマンシリーズ 1作目 |
発行日 | 2020年11月 |
Audible版 | なし (2025年1月時点) |
出版社 | 光文社 |
評価 |
あらすじ
結婚を控えた神尾真世が、父・神尾英一が殺されたという連絡を受け、故郷に戻ります。ふるさとでは、かつての同級生である柏木が、人気漫画『幻脳ラビリンス』を使った町おこし計画を進めていましたが、コロナウイルスの蔓延により計画は頓挫していました。
真世は、犯行現場となった英一の自宅で叔父・神尾武史と再会し、武史と共に、父の死の真相を探ることになります。警察の協力はもちろん得られませんが……、元マジシャンの武史があらゆるテクニックを駆使して情報を手に入れ、鋭い推理を展開していきます。
登場人物
主人公である神尾真世の同級生であり、なおかつ、被害者・英一の教え子でもある人物がたくさん登場します。
- 神尾真世(かみお・まよ)
結婚を控えた若い女性。父の死をきっかけに帰郷する - 神尾武史(かみお・たけし)
真世の叔父。恵比寿でバーを経営中。かつて「サムライ・ゼン」と呼ばれた元マジシャン - 神尾英一(かみお・えいいち)
被害者。真世の父。元教師。自宅の裏庭で絞殺されてしまう - 真世の同級生
- 池永桃子(いけなが・ももこ)
真世の幼馴染。2歳の貢(みつぐ)の母親 - 釘宮克樹(くぎみや・かつき)
「幻脳ラビリンス」略して「幻ラビ」の作者。津久見と仲がよかった - 津久見直也(つくみ・なおや)
故人。白血病のため14歳で早世した。クラスのリーダー格だった - 九重梨々香(ここのえ・りりか)
ココリカ。広告代理店「報通ほおつう」の社員。釘宮の実質的なマネージャー。中学時代は女子のリーダー格 - 柏木広大(かしわぎ・こうだい)
柏木建設の副社長。「幻ラビ・ハウス」という施設の建築工事を予定していたが、コロナのために中止になる - 牧原悟(まきはら・さとる)
地方銀行「三つ葉銀行」の行員。 - 沼川伸介(ぬまかわ・しんすけ)
居酒屋の経営者 - 原口浩平(はらぐち・こうへい)
英一の死体を発見した人物。「原口商店」という酒屋の店主 - 杉下快斗(すぎした・かいと)
エリート杉下。IT企業の社長
- 池永桃子(いけなが・ももこ)
- 中條健太(なかじょう・けんた)
真世の婚約者 - 池永良輔(いけなが・りょうすけ)
桃子の夫。英一の元教え子でもある - 警察
- 柿谷(かきたに)
警部補。所轄の刑事。刑事課の係長。英一の元教え子 - 小暮 大介(こぐれ・だいすけ)
警部。県警本部から応援。キツネのように細い目
- 柿谷(かきたに)
読む順番及びシリーズについて
ブラック・ショーマンシリーズの1作目です。2作目は『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』で、こちらは短編集になっています。2作目から読んでも問題ないと思いますが、オススメは刊行順です。
感想
犯人当てのミステリーで、なかなか登場人物が多く、怪しい人物がいろいろと登場します。映画で探偵役の神尾武史を演じるのは福山雅治さんらしく、その情報を入手してからというもの、武史が登場すると福山さんが思い浮かぶようになりましたね。
- 王道の犯人当てミステリー
東野圭吾さんの作品らしく、安定したクオリティのミステリー小説です。読みやすいというのは間違いないですね - 探偵役の魅力!
探偵役の武史はダーティーな感じですね!人格はさておき、調査能力と推理力は抜群です。こういう人物に魅力を感じてしまいます
ネタバレ
英一が殺害されたあと、特に殺人は起きません。ただ、真世の同級生がいろいろと秘密を抱えており、真犯人を告発する過程やその前の段階で、その秘密も暴かれていきます。それぞれの秘密を簡単にまとめると次のようになります。
- 池永桃子は夫の良輔と不仲で別居状態だった
- 柏木と牧原は森脇の消えた預金に関わっていた(森脇が昔稼いだ出所の汚い金を家族に内緒で幻ラビのプロジェクトに寄付していたが、森脇がコロナで死亡し、プロジェクトも中止になってしまった。柏木と牧原は金を返さなければならなかったが、家族には内緒の状態だったため、そのままになっていた)
- 九重梨々香と杉下快斗は不倫の仲
真犯人
真犯人は「幻ラビ」の作者・釘宮克樹です。釘宮が描いた幻ラビのアイデアは、実は白血病で亡くなった同級生・津久見直也のものでした。被害者の神尾英一は幻ラビを考案したのが津久見であることに気付き、このことを英一は美談として津久見の追悼会で披露しようとしていました。英一は釘宮が親友だった津久見の夢を成し遂げたと考えており、一切脅迫などは考えてしませんでした…。しかし、事前に相談を受けた釘宮は重大な問題だと捉え、盗作を暴露されると思い込んでしまいます。
釘宮は証拠隠滅のため、英一が気付くきっかけとなった作文を英一の自宅ごと燃やそうとします。ところが、犯行の最中に英一にみつかってしまい、殺人を犯すことになります。
なお、最後の謎解きに、葬式で遺影を直視できたかどうかという心理的な状況証拠が登場します。釘宮は目をつむっていましたが、実はこれは加工された映像でした。牧原が視線を逸らしたというのも加工です(笑)。
結末
最後、真世に届いた不審なメールについて語られます。メールには婚約者である中條健太の誹謗中傷(付き合っていた女性を妊娠させたが堕胎させた、など)が書かれていました。健太は真世の誹謗中傷を同じように受け取っていた様子で、武史が華麗に二人の相談の場を設け、物語は幕を閉じます。
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