『爆弾』は呉勝浩(ご・かつひろ)先生の推理小説です。爆弾シリーズの1作目で、2024年版〈このミステリーがすごい!〉で1位に輝いており、映画化も予定されています!取調室での緊迫した心理戦などが魅力です。
項目 | 説明 |
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タイトル | 爆弾 |
評価 | |
著者 | 呉勝浩 |
出版社 | 講談社 |
シリーズ | 1作目 |
発行日 | 2022年4月 |
文庫版 | あり |
Audible版 | あり |
あらすじ
京、炎上。正義は、守れるのか。
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。
講談社BOOK倶楽部
主な舞台は警察署の取調室です。刑事ドラマ(相棒とか)でたまに登場しますが、それがメインシーンです。刑事さんが怒鳴ったり、御涙頂戴な話を展開しない限り退屈そうなんですが、事務的な手続きが淡々と続くということはなく、閉ざされた空間での警察とスズキタゴサクによる心理戦が繰り広げられます!
中心人物のスズキタゴサクは50歳くらいの中年で、酔っ払って店員を殴り逮捕されるという、ミステリー小説には絶対登場しなさそうな人物として描かれています。そんなスズキタゴサクが霊感による予言を主張し、実際に東京で爆破事件が次々に起きます。
容疑者のスズキタゴサクはもちろん変人ですが、刑事の方も普通ではありません(刑事とか警察官の知り合いがいないので、そもそも現実的にどういう人格や性格を形成しているのかわかりませんが)。そんな登場人物達の頭脳戦はもちろん、巧妙に散りばめられた伏線も魅力です。
登場人物
登場人物は結構多めです。
- スズキタゴサク
中年男。爆弾騒動の容疑者 - 警察関係者
- 清宮輝次(きよみや・てるつぐ)
警視庁捜査一課の刑事。スズキタゴサクの取り調べにあたる - 類家(るいけ)
清宮の部下 - 等々力功(とどろき・いさお)
野方署の刑事 - 伊勢勇気(いせ・ゆうき)
野方署の刑事 - 鶴久(つるく)
野方署の刑事。等々力の上司 - 倖田沙良(こうだ・さら)
交番勤務の警察官。スズキタゴサクを連行した。猿橋と組むことになる - 矢吹泰斗(やぶき・たいと)
交番勤務の警察官。伊勢の同期で、倖田の先輩 - 長谷部有孔(はせべ・ゆうこう)
故人。ベテラン刑事だった - 石川明日香(いしかわ・あすか)
長谷部有孔の元妻 - 石川美海(いしかわみう)
長谷部有孔と石川明日香の娘 - 石川辰馬(いしかわ・たつま)
長谷部有孔と石川明日香の息子 - 細野ゆかり(ほその・ゆかり)
女子大生。蓮見の大学の先輩
爆弾2
2024年7月末に『法廷占拠 爆弾2』という続編が発売されています!
感想
簡単にネタバレすると、爆破事件を企てたのはスズキタゴサクではなく、別の人物でした。その計画を知り、自分が犯人ように振舞っていたというわけです。ある人物をかばっていたようにもみえるけど…『最後の爆弾』と呼ばれる爆弾がみつからず、真相は神のみぞ知る状態になったのかな?物語の中心人物であるスズキタゴサクは非常に独特。掴みどころがなく、それでも強く印象に残りました。
物語は主に、スズキタゴサクと類家刑事との対決を軸に展開されます。類家刑事は鋭い頭脳と洞察力を持ち、スズキタゴサクとの心理戦を繰り広げます。スピーディーな展開と緻密な伏線回収も特長です。物語が進むにつれて、スズキタゴサクの予言が現実の事件と結びつき、その背後にある真実が少しずつ明らかになっていきます。
ただ、スズキタゴサクの長広舌にうんざりする瞬間もあるかもしれません。まさにのらりくらりという感じで、キャラ設定だと捉えることもできそうです。終盤に向けて焦点がぼやけたり、読者にゆだねるような結末は、ちょっと微妙です。
物語全体としての完成度は非常に高く、続編『法廷占拠 爆弾2』が発売された理由もわかります。続編を期待していた読者も多かったのかもしれません。スリリングな展開、深い心理描写、スズキタゴサクという一筋縄ではいかないキャラクターと類家刑事の対決などなど、魅力が盛り沢山です。
- スリリングな展開!
取調室での容疑者と刑事の心理戦は読みごたえがあり、なおかつ、スリリングでもあります - 謎解き!
爆弾のヒントが言葉遊びや謎解きとして提示される点が面白いです
みんなの感想
ネタバレ
爆弾犯は石川辰馬、梶、山脇で、シェアハウスの住民でした。ところが、石川明日香が息子の辰馬を殺害し、他二名は自殺します。つまり、爆弾を仕掛けた犯人は全員死亡していました。スズキタゴサクは明日香への恩を返すため、自分が仕掛けたように振舞っていました。ラストは爆弾が一つみつからないという状況のまま、リドル・ストーリーという感じで、物語は幕を閉じます。
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