推理ゲーム

パラノマサイト|あらすじ・ネタバレ解説・考察・感想

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パラノマサイト FILE23 本所七不思議』はスクウェア・エニックスより2023年3月9日に発売されたホラーミステリーアドベンチャーゲームで、昭和後期の東京都墨田区を舞台に、実際に伝わる「本所七不思議」を題材とした呪いと秘術を巡る群像劇が展開されます。この記事では、あらすじ、登場人物、ネタバレ、考察と感想などをまとめています。

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あらすじ

オカルトがまだ信じられていた昭和後期の東京都墨田区に古くから伝わる怪談・本所七不思議…。死者を生き返らせるという「蘇りの秘術」を求め、呪いの力を宿した9人の男女「呪主( かしりぬし)」は、互いを呪い殺し、魂の残滓である「滓魂(さいこん)」を集めようとする。

会社員の興家彰吾は、恋人の福永葉子と共に本所七不思議の調査に乗り出し、「置いてけ堀」の呪詛珠に取り憑かれる。興家は呪主として人々を呪い殺し、蘇りの秘術を目指すが、他の呪主によって命を落とすことになる。プレイヤーは「案内人」と呼ばれる存在の導きのもと、様々な登場人物に憑依しながら、事件の裏に隠された真実を解き明かしていくことになる。

登場人物

  • 興家 彰吾(おきいえ しょうご)
    本所の石鹸会社に勤める24歳の会社員。「置いてけ堀」の呪主。物語の冒頭で主人公として登場するが、途中で死亡する
  • 福永 葉子(ふくなが よーこ)
    興家と共に本所七不思議を追うオカルト好きの女性で、興家の恋人。可愛らしい見た目
  • 志岐間 春恵(しぎま はるえ)
    1年前に息子を誘拐され殺された過去を持つ裕福な主婦。「送り拍子木」の呪主。息子を生き返らせることを切に願っている。利飛太との大人なコンビが魅力的で、プレイヤーに呪詛行使をためらわせるほどの情を抱かせる
  • 櫂 利飛太(かい りひた)
    志岐間春恵に雇われた元警察官の私立探偵。怪しい外見とは裏腹に紳士的で、鳥をこよなく愛している。最も常識的ながら優秀なキャラクター
  • 津詰 徹生(つつみ てつお)
    警視庁捜査一課のベテラン警部。「落葉なき椎」の呪主。強面ながら、甘いものが好きで、コミカルな一面をみせる愛すべきキャラクター。襟尾との漫才のような掛け合いが評判
  • 襟尾 純(えりお じゅん)
    津詰の部下である若手刑事。鋼のメンタルとポジティブな思考を持つムードメーカー。津詰を尊敬しつつも、時にからかうような言動をみせる
  • 坂崎 約子(さかざき やっこ)
    実家が駄菓子屋の高校2年生。「馬鹿囃子」の呪主。物語の序盤で霊に取り憑かれる。ちゃきちゃきした江戸娘らしい性格とされる
  • 黒鈴 ミヲ(くろすず みを)
    約子の友人で、強い霊感を持つ女子高生。その霊能力から警察の心霊対策室にも協力している。優しく可愛らしい笑顔が特徴。洞察力の深さが印象的
  • 並垣 祐太郎(なみがき ゆうたろう)
    典型的なお坊ちゃま。「足洗い屋敷」の呪主。見た目からし て小者感が強く、物語の早い段階で呪詛珠を回収されてしまう
  • 灯野 あやめ(とうの あやめ)
    美大生。「津軽の太鼓」の呪主。サイコパス的な言動が特徴で、葛飾北斎を現代に蘇らせるという常軌を逸した目的のために、躊躇なく呪詛を行使する。呪詛バトルが特に熱い
  • 新石 英樹(あらいし ひでき)
    高校の非常勤講師兼郷土史研究家。「消えずの行灯」の呪主。並垣同様、物語の早い段階で呪詛珠を失う
  • 葦宮 誠(あしみや まこと)
    高校の公務員。「片葉の葦」の呪主。本名は根島史周(ねじま ふみちか)で、過去に虐殺事件を起こした経歴を持つサイコパス
  • 蝶澤 麻由(ちょうざわ まゆ)
    元レディース総長で現在は美容師。「送り提灯」の呪主。婚約者を失った悲しい過去を持つものの、蘇りの秘術に頼らず呪詛珠を放棄する強い女性
  • 白石 美智代(しらいし みちよ)
    ひき逃げ事故に遭い、悲惨な運命を辿る女性。物語における最も痛ましい被害者のひとり

呪詛珠の能力

  • 置いてけ堀
    自身の目の前から立ち去るものを溺死させる
  • 馬鹿囃子
    自身の姿を見られずに呪影の発するお囃子の音を30秒間聞き続けた相手を転落死させる
  • 送り提灯
    呪主となった者を当人の持つ呪いの死に方によって死亡させる
  • 送り拍子木
    火、もしくは発火器具を持っているものを焼死させる
  • 落葉なき椎
    自身に対し虚偽の発言で欺いた者を縊死させる(刑事である津詰がこの呪詛を持つことで、フェアな推理が可能となっている)
  • 津軽の太鼓
    自身に対する隠し事が発覚した者を殴打死させる
  • 足洗い屋敷
    呪影の発する「足を洗え!」という声を聞いた者を踏みつぶし圧死させる(ゲーム設定で音量を下げることで呪いを回避できるという、ユニークなメタ要素を持つ呪い)
  • 片葉の葦
    その時点の顔・住所・氏名・年齢・職業・所在地のすべてを知る相手の手足を切断して失血死させる
  • 消えずの行灯
    呪影の発する暗闇の中に閉じ込めた相手を割腹死させる
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ネタバレ

真の黒幕といえるのは、興家の恋人・福永葉子です。葉子は蘆乃(あしの)の末裔として、先祖である蘆乃を蘇らせるために、今回の霊夜祭を仕組んでいました。霊夜祭の目的は、強力な滓魂を集め、「蘇りの秘術」を発動させることです。真エンディングでは、プレイヤー(晴曼)が葉子(蘆乃)を打ち倒し、すべてを起こらなかったことにすることで、デスゲームに終止符が打たれます。
蘆乃というは女陰陽師で、異なる家系の陰陽師である土御門晴曼(つちみかど せいまん)と因縁があります。前述の通り、福永葉子は蘆乃の末裔です。そして、プレイヤー自身が古の陰陽師・晴曼の精神そのものです。
『パラノマサイト』はプレイヤー自身が物語の登場人物の一人という設定になっています(興家彰吾は憑依体)。作中でプレイヤーに語りかける「案内人」は、記憶を失った晴曼(プレイヤー)を導き、本所七不思議事件を解決へ向かわせる役割を担っていました。

バッドエンドもいくつか存在します。根島が復讐のために大量殺戮を行うエンディングや、あやめが葛飾北斎を蘇らせるためだけに無関係な人々を次々と呪い殺していくエンディングなどがあります。印象に残りやすいのは、あやめの「ボコボコタイムですよ~」というセリフではないでしょうか。

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考察

タイトルの「FILE23」という数字は、単なるファイル番号以上の意味を持つかもしれません。開発者インタビューからは、シリーズ化を見越して、あえて中途半端な数字が選ばれたということをうかがい知れます。ゲーム本編には直接的な関係がないようですが、本作が「シンタイ」という組織が管理する心霊事件簿の23番目のファイルである、あるいは無数に存在する超常現象の記録の中の1つであるといった考察もできます。いずれにしても、今後のシリーズ展開への期待は高まります。

プレイヤーを導く謎の存在「案内人」の正体ですが、以下のようなことが考えられます。

  • 正体
    案内人の見た目(紫色の和服の上に黒いコート、中山帽、顎が切り取られた能の翁面)から、その背景を探ることもできそうですが、明確な答えは示されていません。「ナカゴシ」が案内人であるという説が有力で、クリア後に資料に追加される「FILE23」にナカゴシからのメッセージがあることが主な根拠です
  • 目的
    案内人の主な目的は、記憶を失った晴曼(プレイヤー)を導き、本所七不思議事件を解決へ導くことだと考えられます。しかし、なぜ案内人が直接的な助言を行わず、婉曲的な誘導に留めるのかについては、いくつかの理由が考えられます
    • 【介入の制約】案内人はこの世界の住人ではない、あるいは時間や空間的に離れた場所にいるため、物理的な干渉ができない説
    • 【記憶の回復と自主性】晴曼に記憶を取り戻させ、自主的に事件を解決してもらうためのプロセスとして誘導している説
    • 【情報の欠如】案内人自身も、ゲーム開始時に「陰の書」の内容を完全に把握していなかったため、晴曼を誘導して物語を進める必要があったという説
    • 【未来からの視点】案内人が事件についての情報をある程度事前に所持していることから、案内人が物語の時間軸から見て未来の人物であるという説
  • ストーリーチャートの機能
    案内人が司るストーリーチャートの機能は、単なるシミュレーションではなく、実際に時間を巻き戻しているかもしれません。これは、「意識体は時間と空間を超越できる」というこの世界のルールに基づいていると、開発者が明言しています

感想

緻密に練られたストーリー、魅力的なキャラクター、そしてプレイヤーを巻き込む巧みなシステムが融合した、非常に質の高いアドベンチャーゲームです。その完成度の高さから、多くのプレイヤーが続編を期待しています。

良かった点

  • 練りこまれたシナリオと緻密なプロット
    実在の都市伝説「本所七不思議」を題材にしつつ、そこに オリジナルの要素を巧みに融合させたストーリーは非常に新鮮!複数の視点をザッピングしながら物語が進む群像劇形式でありながら、中だるみが一切なく、最初から最後まで内容が濃密です。広げた風呂敷をしっかりと畳み、すべての伏線が回収されるみごとな構成
  • 魅力的なキャラクター
    登場人物たちは皆個性的で、会話中心のテキストによってそれぞれの個性が 生き生きと描かれています。刑事コンビ(津詰&襟尾)の漫才のような掛け合いや、女子高生コンビ(約子&ミヲ)の可愛らしいやり取りなど、キャラクター間の化学反応も魅力的です。キャラクターデザインもゲームのほの暗く昭和レトロな雰囲気に非常にマッチしています
  • 独特のシステムと演出
    360度見渡せる探索パートは臨場感があり、怪しい場所を調べるのが楽しいです。謎解き要素は多すぎず、バッドエンドになってもすぐにやり直せる親切設計のため、アドベンチャーゲーム初心者でも安心して楽しめます。メタ要素が巧みに物語に組み込まれており、プレイヤー自身の行動が物語に影響を与える感覚は、他のゲームでは味わえない体験です。BGMも各シーンに合っており、特に刑事パートの昭和の刑事ドラマ風の曲は、作品の雰囲気を盛り上げるのに一役買っています
  • 「ホラー」と「ミステリー」の絶妙なバランス
    ジャンルはホラーアドベンチャーですが、過度な怖さはありません。ジャンプスケア(驚かせる演出)が中心で、ホラー耐性が低いプレイヤーでも十分にクリア可能であると評価されています。本格的な推理ミステリーとしての要素を邪魔しない、絶妙なホラー演出のバランスが取れています
  • 価格以上の満足度
    2000円を切る価格でありながら、その内容の濃さと完成度は、プレイヤーに「採算が取れているのか心配になるレベル」と言わしめるほどです。プレイ時間も8~10時間程度とサクッとクリアできるため、気軽に手を出せる点も魅力です

悪かった点・惜しい点

  • 本格的なホラーゲームではない
    ホラー要素は存在するものの、あくまでミステリーアドベンチャーが主体のため、純粋なホラーゲームを求めているプレイヤーには物足りなく感じる可能性があります
  • 考察の余地が少ない
    物語の真相や伏線がゲーム内でほぼ完全に回収されるため、プレイヤーがクリア後に深く考察する余地が少ないと感じるかもしれません。メタ要素のあるゲームとしては、あえて捻くれないストレートな展開が好まれる一方で、もっと謎を残してほしかったという意見もあるようです
  • 一部設定のあっさりとした回収
    物語を深く掘り下げるとボリュームが増大するためか、一部の背景設定(例えば、ヒハク関連や白石美智代の事故など)があっさりとした形で回収される場面もあり、もう少し詳細に描いてほしかったと思ってしまう

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