Youtube ミステリーチャンネル【りさま屋】
推理マンガ

異人館村殺人事件|あらすじ・ネタバレ解説【金田一少年の事件簿】

この記事は約7分で読めます。
記事内に広告が表示されます

異人館村殺人事件』は怪人〈七人目のミイラ〉が登場するエピソードで、残酷さや猟奇さ、そしてホラー要素の強さで知られています。単行本では第2巻から第3巻に収録され、全11話の構成です。テレビドラマでは1995年7月15日に第1シーズン第1話として放送されましたが、アニメ化はされていません。

スポンサーリンク

あらすじ

金田一のクラスメートである時田若葉が、教師の小田切進との密会写真を何者かに公開されてしまう。これがきっかけで、若葉は故郷である青森県六角村(通称:異人館村)に連れ戻され、許婚との結婚を強いられることになる。金田一は、美雪、そして小田切と共に結婚式に出席するため、異人館村へと向かう。異人館村はダビデの星の形をしており、教会を中心に六つの洋館が立ち並ぶ風変わりな村だった。
金田一たちは若葉の家の地下室で、首のないミイラを発見。その夜、若葉は村のしきたりに従い教会で一夜を過ごすが、数時間後、教会の鐘が鳴り響き、金田一たちが駆けつけると、そこには若葉の首なし死体が横たわっていた…。

スポンサーリンク

登場人物

  • 金田一一(きんだいち はじめ)
    主人公。序盤では若葉の退学危機を機転で救う。事件中、ライフルで腹部を撃たれ重傷を負うなど、美雪とは対照的に満身創痍となる
  • 七瀬美雪(ななせ みゆき)
    ヒロイン。五塔蘭に拉致されて服を破られるだけではなく、火災に巻き込まれ、犯人に人質にもされるなど、散々な目に遭うが、身体的には無傷で生還する強運の持ち主
  • 剣持勇(けんもち いさむ)
    警視庁の警部。今回は管轄外のため本庁で待機していたが、金田一の推理力を信頼し、青森県警の俵田刑事に電話で協力を促す。ドラマ版では現地で捜査を担当
  • 時田若葉(ときた わかば)
    金田一のクラスメート。時田十三の娘。密会写真により故郷へ連れ戻され、許婚と結婚させられることになる。最初の死亡者として発見される
  • 連城久彦(れんじょう ひさひひこ)
    若葉の婚約者。顔を頭巾で覆った謎の人物。青森県内で有数の資産家の子息
  • 小田切進(おだぎり すすむ)
    不動高校教師。若葉との密会写真が公開され、六角村へ同行する
  • 兜霧子(かぶと きりこ)
    「兜の館」の主人・兜礼二の娘。若葉の幼馴染。劇中で台詞がない。若葉の付き人として教会の番をするが、後に死体で発見される
  • 時田十三(ときた じゅうぞう)
    「時計の館」の主人。若葉の父親。27年前の事件について金田一たちに語った後、心臓発作で死亡。ドラマ版では「袋男」として登場
  • 一色寅男(いっしき とらお)
    「ステンドグラスの館」の主人。猫の丸焼きを好む悪食家。若葉の死を祝うなど、時田家を嫌っている。心臓を一突きにされ、右足を切り取られて死亡。ドラマでは未登場
  • 草薙三子(くさなぎ みつこ)/冬木三子(ふゆき みつこ)
    「ツタの館」の主人。数年前に息子を亡くし、廃人同然となっている。猫好き。絞殺され、左足を切り取られて死亡。ドラマではヘロイン中毒者として登場し、殺害方法も変更されている
  • 風祭淳也(かざまつり じゅんや)
    「風見鶏の館」の主人で村長。穏やかな性格で、金田一に協力的。狩猟が趣味
  • 五塔蘭(ごとう らん)
    「塔の館」の主人。推定40代後半だが若く見える。美雪を拉致し、生き血を浴びようとする危険な性格。刺殺され、右肩から左腕を切り取られる。ドラマでは未登場
  • 兜礼二(かぶと れいじ)
    「鎧の館」の主人。霧子の父親。地味で根暗な性格
  • 俵田孝太郎(たわらだ こうたろう)
    青森県警捜査一課の刑事。金田一には厳しい態度だったが、剣持の指示で協力する
  • 牧師夫婦
    六角村で大麻を栽培し密売していたが、罪の意識から栽培中止を主張し、異人館の当主たちに殺害された
  • ユキさん
    「時計の館」の使用人
  • 校長先生、PTA会長
    金田一の通う不動高校の校長とPTA会長。不倫関係にあり、金田一に弱みを握られる。事件のトリックのヒントとなる
  • 白骨死体の男性
    事件の冒頭で発見された白骨死体

用語

  • エデンのリンゴ
    100年前の宣教師たちが追い求めた謎のアイテム。その正体は野生の大麻であり、これを栽培・密売することで六角村の六家族は巨万の富を築きました。ドラマ版ではヘロイン精製工場に変更されています
  • ダビデの星
    六角村の地形がこの形をしており、教会を中心に六つの洋館が立ち並んでいます
スポンサーリンク

ネタバレ

この事件の真犯人は不動高校教師の小田切進です。本名は六星竜一(ろくせいりゅういち)でした(ドラマ版では神崎竜一)。小田切は27年前に六角村で起きた牧師夫婦と七人の養女殺害事件・六星一家殺害事件の唯一の生き残りである六星詩織の一人息子でした。極貧の中で復讐のために育てられ、様々な格闘術や殺人術を仕込まれ、最終的に、実の母を殺害することで冷酷な殺人マシーンと化しました。

六星は、本物の小田切進を殺害して彼になりすまし、不動高校に赴任。若葉を利用して復讐計画を実行に移します。若葉の退学のきっかけとなった密会写真は、彼が隠しカメラで撮影したものです。若葉はカメラに気づいていないようでしたが、小田切自身はしっかりとカメラ目線だったため、金田一に気付かれています。

  • 時田若葉
    六星の共犯者であり、同時に被害者でもありました。六星に唆され、アリバイ作りのために兜霧子を殺害。しかし、その直後に六星の手によって絞殺され、死体は霧子のものとすり替えられました。彼女は六星が自分を殺すことを薄々感づいていたようで、抵抗の痕跡はありませんでした。六星は若葉の首だけは丁重に埋葬しており、彼女への本心からの愛情が伺えます
  • 兜霧子
    この事件の最初の被害者であり、最も不憫な人物です。親の罪とは無関係にもかかわらず、若葉のアリバイトリックのために殺害され、死体を切り刻まれました。警察には犯人と誤認され、散々な扱いを受けました
  • 本物の小田切進
    冒頭で発見された白骨死体は彼のものでした。不動高校に赴任予定だったというだけで六星に殺害され、その身分を乗っ取られた、事件に全く無関係な犠牲者です
  • 時田十三、一色寅男、兜礼二、草薙三子、五塔蘭
    今回の事件の被害者たち。大麻密売と六星一家惨殺という悪事を働いていました。犯行の証拠隠蔽のため、牧師の娘たちのミイラを分け持つことで共犯者意識を保っていました
  • 風祭淳也
    27年前の六星一家殺害事件の加担者の一人でしたが、六星詩織とは恋人関係にあり 彼女と(お腹の中にいた)竜一を救い出しました。事件後、罪悪感に苦しみ、狩猟と剥製づくりをやめていました。最終的に息子・竜一を射殺し、自らも頭を撃ち抜いて命を絶ちました
  • 六星詩織
    六星竜一の母親。家族を殺された後、戸籍を失いながらも竜一を出産し、彼を復讐のための殺人マシーンとして育て上げました。最終的には自らも息子に殺されることを選びました
  • 連城久彦
    若葉の婚約者。六星が若葉を殺害したと誤解し、復讐のために六星に刃向かいますが、返り討ちに遭い射殺されます。若葉を心から愛していましたが、その想いは報われませんでした

結末

正体が暴かれた後、六星は恐るべき本性を現し、警官2人を格闘技で倒し、猟銃を手に美雪を人質にとります。そして、最後の標的である兜礼二を射殺。大麻畑を焼き払おうとしますが、実の父親である風祭淳也に撃たれ、母が「風祭だけは殺すな」と言った理由に気づきながらも、その真実の重さに涙を流して絶命しました。

六星は、被害者たちが過去に犯した悪行(大麻密売と六星一家惨殺)への復讐を完遂しました。若葉の死を侮辱した一色寅男を最初に殺害し、その死に様を嬉々として語り、その残虐性を際立たせます。

原作漫画とドラマの違い

  • 六角村が「十文字村」に変更され、村の形も十字架に、洋館とミイラの数も4つに変更されたため、一色寅男と五塔 蘭は登場しません
  • 事件の舞台が青森から東京の奥多摩に変更され、俵田刑事の代わりに剣持警部が捜査を担当します
  • 六星親子の名字が「神崎」に変更され、本物の小田切進は登場せず、単なる偽名設定となります
  • 大麻畑がヘロイン精製工場に変更されています
  • 草薙三子が「冬木三子」に変更され、ヘロイン中毒者という設定が追加されます
  • 連城久彦は名前のみの登場となり、若葉の父親である時田十三が「袋男」として登場し、教会放火の際に負った火傷を隠している設定が追加されます
  • 金田一が撃たれる部位が腹部から右足に変更されます
  • ドラマ版では兜礼二が唯一の生存者となります

感想

「異人館村殺人事件」は、金田一少年の事件簿シリーズの中でも、特に後味の悪い事件でした…。事件の関係者(俵田刑事と一部の使用人を除く)がほぼ全員死亡するという、シリーズでも稀に見る悲惨な結末です。復讐を成し遂げた犯人は実の母親を殺し、しかも、最後は父親に殺されるという…。

余談(パクリ騒動)

この事件は、そのトリックの一部が島田荘司の推理小説『占星術殺人事件』のメイントリックを無断で流用していたことで大きな問題となりました。このため、テレビドラマ版はDVD未収録の欠番作品となり、アニメ化もされていません。文庫版では中表紙にその旨が明記されるなど、異例の対応がとられています。

また、この事件は「犯人たちの事件簿」シリーズで唯一扱われなかった作品でもあります。その残虐性や犯人のキャラクター性から、ギャグ漫画として扱うのが困難だったのかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました