探偵学園Q『殺人コレクター』は殺人ビデオの収集家・コレクターが登場するエピソードです。単行本では7巻・8巻に収録されており、全9話の構成です。テレビドラマは第4話・第5話として2007年7月24日と31日に、テレビアニメでは第29話~第31話として2003年11月22日~12月6日にかけて放送されました。
あらすじ
インターネット上で、殺人ビデオの収集家・コレクターの存在がささやかれ始める。ある学校の寮生が本物の殺人ビデオを所有しており、それを目撃してしまった生徒が姿を消したという…。噂のおおもととして名指しされた名門・渋澤学院高校では実際に女生徒が失踪していた。
関係者からの依頼を受けDDSのリュウとメグが潜入して内情を探ることになる。ようやく協力者を得て捜査を開始するが、そのさなかメグがコレクターに拉致され、さらに目の前で生徒が惨殺されてしまう。
登場人物
- 小椋絵美菜
CV:なし 演:高梨臨
一ヶ月前に突如行方不明になった少女。クラスでも特に成績優秀で、性格も明るく同級生から慕われていた。その上、母親は有名な女優で家も大金持ち。行方不明になったあと、学籍は両親の希望で長期休学扱いになっている。渋澤第一中学では映画研究部 - 遠矢邦子
CV:金田朋子 演:田島ゆみか
15歳。メガネをかけた地味な外見の少女。暗い性格で友人もおらず、内気でオドオドしており、委員長や女子寮の寮長など人のやりたがらない仕事を押しつけられている。渋澤第一中学では映画研究部 - 木暮純也
CV:飛田展男 演:小野賢章
15歳。典型的なガリ勉メガネ。神経質で目立たないが、リュウの優秀さをやっかんでパソコンに残虐な映像を送りつけるなど陰険な性格をしている。実は家庭環境は完全崩壊している。渋澤第一中学では映画研究部 - 富永雅士
CV:阪口大助 演:落合扶樹
15歳。遠矢と同じくクラス委員長(クジ引きで当たってしまったため)。フレンドリーな性格で、朝吹・遠矢と共に事件の捜査に協力する。渋澤第一中学では映画研究部 - 大林一樹
CV:小西克幸
16歳。名門高校の特Aクラスになぜか入れた不良。素行、品性ともに最悪だが実は臆病。転校初日にリュウにちょっかいかけて脅しをかけようとしたが、逆にリュウに返り討ちにされてしまう。朝吹の殺人の際に、誰かに呼び出されていたと主張。そのためアリバイがなく、木暮の殺人を含めて江上に真っ先に疑われる。だが、朝吹は大林をコレクターだと疑っていたので、ビデオの中の犯人が大林としたら部屋に快く出迎えるはずがないとリュウが指摘した事で大林の疑いは晴れている。その後はリュウに感謝して、初日のことを謝っていた。渋澤第一中学では映画研究部 - 朝吹麻耶
CV:浅野まゆみ 演:鈴木かすみ
15歳。裏表のなさそうな明るい少女。第二の被害者。事件解決に積極的で、メグに誘われた探偵団の活動も嬉々として取り組む。かつて、絵美菜が失踪する3日前に泣いている場面を目撃したことがあるという。小暮の殺人後、中学時代の映画研究部で撮った映像を見て何かに気付いている。そして、その映像を見てもらおうとリュウに電話した際に、今回の事件は中等部時代からの知り合いによる犯行ではないかと話している。だが、電話中に犯人が訪ねて来てしまい、刺殺される。一見、今回の事件も大林以外アリバイがあるように思われたが、リュウにアリバイを崩されている。渋澤第一中学では映画研究部 - 佐久間響
CV:羽多野渉 演:若葉竜也
17歳。3年生で男子寮の寮長(特Aクラスではない)。成績自体はイマイチで、それが原因で高校では雑用をやらされているらしい。渋澤第一中学では映画研究部 - 村崎美里
CV:湯屋敦子 演:西村理沙
渋沢学園の教師。原作では担当科目は英語。かつて映画研究部では顧問だった。生徒思いの優しい先生 - 江上刑事
CV:楠見尚己
警視庁捜査一課刑事。これまでに登場した刑事達と同様に、素性を明かさないリュウ達を素人探偵扱いするが、リュウの推理力を目の当たりにすると素直に評価して協力的になる - 天草流
事実上、今回の事件における主人公。東大理系の入試問題を2分で解くという天才っぷりを発揮した他、不良を腕力で制圧し“人殺しの目”で脅しをかけるなど後々の伏線を醸し出す。例に漏れず女生徒にモテまくるが、その中に…。 - 美南恵
前エピソードで絶体絶命の危機を味わったばかりなのに、またしても危機一髪な状況に。潜入捜査用の制服で子どもっぽいと自覚していたが、本当にロリ扱いされてしまった。恐らくは顔より胸の… - キュウ
事件終盤、事件現場でリュウ達と合流する - 遠山金太郎
メンバーの中で唯一の高校生なのだが、頭のいい名門高校ということで潜入の人員から除外される。事件終盤、リュウに頼まれて事件の鍵となる物を取りに行く - 鳴沢数馬
事件終盤、渋澤学院のサーバーを見せてもらい、木暮が20人近いハンドルネームを使って一人の人間をネットで袋叩きにしていたことを突き止める
ネタバレ
犯人は富永雅士で、富永がコレクターです。
小暮が死んだ時、映像の中の時計塔は5時15分を指していました。これが犯行時刻の根拠となり、この時間帯はリュウ達と行動をしていたためアリバイが成立しているようにみえました。しかし、映像の小暮は実は前日に撮られたものでした。このとき、小暮は本当に殴られていますが、このときのビール瓶は飴細工でできていました。
その後、メグを誘拐して目の前で小暮を殺害。メグが恐怖する姿を撮って、映像の撮影日時が当日5時15分であるかのうようにみせていました。
トリックに使われた飴細工のビール瓶は仕事で映画の小道具を作成していた富永の父親が作ったものでした。朝吹は、この飴細工のビール瓶が、中等部時代に映画研究部のメンバーによるドラマの撮影で使われたことを思い出していました。そして、そのドラマを見せれば事件のヒントになると考え、富永に相談したところ、殺されてしまいました。
富永は朝吹を殺害したときの映像に、時間をズラした時計を映してアリバイ工作をしましたが、失敗しています。さらに、アリバイトリックで「時計の針をズラした」としか言われていないのに、ズラした時刻が「30分」だと言ってしまい、リュウに犯人だと気づかれます。
動機
動機は復讐です。富永は中学時代から絵美菜に好意を寄せていました。
富永はスピルバーグというハンドルネームで学園の運営サイトを利用していました。このときアニメと名乗る人物と親密になりました。そして、このアニメというハンドルネームが絵美菜のアナグラムだと気付きます(ANIMEがEMINA)。舞い上がった富永は、いつか告白しようと考えることになります。
ところが、掲示板でアニメに対する誹謗中傷が相次ぎ、アニメは自殺を宣言してしまいます。そして現実でも、絵美菜が姿を消してしまいます。
富永は誹謗中傷の主犯を調べ上げ、木暮純也に辿り着きます。その後、飴細工のトリックとメグの拉致、朝吹殺害、リュウへの罪のなすりつけと毒殺など、犯行を繰り返していきます。
結末
スピルバーグこと富永と交流を深めていたアニメの正体は、失踪した小椋絵美菜ではなく、遠矢邦子でした。
遠矢邦子がアニメを名乗っていたのは、遠矢が絵美菜に中学時代から憧れていたためです。つまり、EMINAのアナグラムでANIMEというハンドルネームの由来自体は間違っていませんでしたが、そもそも、名乗っている人物が、いわばなりすましでした。
遠矢は誹謗中傷に耐えきれなり、アニメの存在を抹消しようとしました。このとき「自殺」という言葉を使ったところ、これが偶然にも、絵美菜の失踪とタイミングが重なってしまいます。この偶然を富永は一大事だと勘違いし犯行に至っています。
遠矢はアニメが誹謗中傷に遭ったあと、スピルバーグに正体を伝えようとしていましたが、嫌われることを恐れて結局、何も伝えることができませんでした。
行方不明になった小椋絵美菜は生きています。安否のみが確認されることになります。失踪した理由は駆け落ちです。相手は高校を中退した売れない役者でした。母親に反対されると思い、誰にも告げずに恋人と逃亡しています。
後日談
DDS・Aクラスの編入試験で遠矢邦子が編入してきます。心機一転し、見た目は変わりましたが、内面はそこまで変化していないようでした。ちなみに編入の理由はリュウへの恋心です。
遠矢邦子はその後もメインキャラクターとして作品に加わり、三郎丸を押しのけてAクラスの上位陣に入ります。殺人事件のきっかけとなってしまったことを後悔しているようですが、後のエピソードでこのことが言及されることはありません。
漫画とアニメの違い
- 村崎の担当科目が英語ではなく数学
- リュウに対し東大入試の問題を突きつけるのが教師ではなく小暮
- 佐久間のパソコンに届いた殺人コレクターのビデオで殺害される人物が、男性から女性に変更されている
- 欠席した小暮の部屋をリュウが調べるとき、ドアノブの指紋を検出をしない
- 朝吹のビデオに撮られていた番組をバラエティ番組からクイズ番組に変更
- コーヒーのカップに「渋澤学院」の文字は入っていない
- 原作漫画ではメグが花壇のトリカブトが抜かれていることに気付くが、アニメ版ではリュウ
- 飴細工のトリックを説明する際、飴の瓶を舐めさせる相手が村崎から大林になっている
- 原作漫画では朝吹は刺殺だったが、アニメ版では頭を殴られただけで、死亡しない
漫画とドラマの違い
- 原作では富永の単独犯だったが、冥王星が暗躍している(ドラマ版は全ての事件に冥王星が関わっている)。ラストに出てくるトリカブトも、ケルベロスが用意している
- 原作で潜入捜査を行ったのはリュウとメグだけだが、ドラマ版ではキュウも生徒役に加わっている他、キンタが警備員に扮して潜り込んでいる。捜査を主導するのもキュウになっており、ラストで犯人に命を狙われる(ように仕向けさせる)のもキュウ
- 小暮純也の名字が「亀田」に変更され、関西弁で話す
- 村崎がアニメ版同様数学担当になっている他、人物像が原作での数学教師同様に陰険になっている。中等部での映画研究会の顧問という設定もなくなっており、容疑者にも含まれていない
- 佐久間の人物像がホラー映画好きの危険なキャラになっており、寮内でも他の生徒から警戒されている
- 犯人は亀田を拉致する際にダンベルで殴っている
- メグの監禁場所が用具室らしきところになっており、猿轡がガムテープになっている
- リュウは朝吹が殺された際、原作よりも怒りに満ちている
- 朝吹が9時に放送されるホラー映画の番組表にチェックを入れていたシーンが追加
- 大林一樹が登場しない。警察に殺人容疑をかけられるのは佐久間になっている。また、警察の事情聴取ではホラー映画のファンサイトで知り合った人物から呼び出されたことを黙っていたが、キンタに聞かれた際に答えている
- 飴細工のトリックに気づくきっかけが、原作では瓶の破片に蟻が集っていたからなのに対し、ドラマ版では溶けてベトついた破片をキュウが見つけたからになっている
- 推理を披露する際に関係者たちに配る飲み物がコーヒーからオレンジジュースになっている。また、富永以外の関係者はジュースを全部飲み干している
- 富永がキュウのオレンジジュースに毒を入れるところを、カズマが盗撮し富永の携帯に送信するシーンが追加
- キンタが飴細工で作った瓶で富永を殴るタイミングを、富永が自供し遠矢が「ANIME」だと発覚した後に変更
- 小椋絵美菜の所在は原作では絵美菜自身の連絡で判明するのに対し、ドラマ版では「アニメ」のハンドルネームに違和感を覚えた*3カズマの伝言をもとに、七海が調査を行って判明する
- 原作のラストで富永は発狂して壁に頭を打ち付け自殺を図るが、ドラマ版ではこれが警察での取調べ中に冥王星の後催眠により誘発されて行った行動になっている
- 富永の家庭事情についてはカット
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